192 世の常だ
なかなか豪華なメンバー。それはそうだ。王族だよ。場所は家族が住まう王宮に移った。
ボールドウエッジ公爵ライアン様は家族で過ごしてほしいと辞しようとしていたが、帰しません。精霊達とリルクルコンビの説明をお願いした。
食事前に母様のお兄様第二王子殿下家族と隣国アリステリア様の母国の公爵様に嫁がれたお姉様を紹介された。今回はお姉様とその子供達がいらっしゃった。
ケンおじちゃん、ではなくてケンドリック王太子の家族も全員参加だ。アルバート様やレオンハルト以外の従姉妹達。
「私だけがこのような場にご一緒させていた甚だ恐縮ではありますが、精霊様達のいきさつを説明させていただきます」
「ちょっとまってー、クラウディアおねえちゃんがいないよ?おじいちゃま、クラウディアにも会いたいよね?」
ルガリオ達、姉様は辺境だから遠いんだよ。ほら、お祖父様たちが困っているではないか。
「あら、私が連れてきてあげようかしら、いい?ケンパパ」
クルさん、また怒られるって。
「そうだな、こうして家族集まったんだ、クラウディアをクル、連れてきてくれるか?」
ケンおじちゃんいいの?この猫ちゃんは調子に乗っちゃうよ。
「ええ、いいわよ。ケビン、行くわよ。ケビンの魔力量なら余裕で行けるわよ。」
僕ですか、僕の魔力頼みですか、クルさん。
「私も一緒に行けるか?」
父様が説明するために一緒に来てくれる。僕1人だけでは説得力に欠けるのでその方がありがたいな。
「大丈夫よ。全員行けるのではないかしら?」
やめてー、その根拠のない希望的観測。
「私も行きたいな。先代当主はレオンだっただろう?元気か確認したい」
はい?国王陛下だよ。それはダメでしょ、ねっ、ケンおじちゃん。ダメといって。安全を考慮しよう。
「はぁ、父上、行きたいのですね。私はすでに転移を経験してますから、安全は大丈夫だと思います」
「ケンドリック、すでにお前は転移を経験しているのか。やはりズルいぞ」
とりあえずルガリオ達に頼み先ぶれを出したが、信じてもらえるかなあ。
「じゃあ、クル、行こうか。お祖父様準備はいいですか」
「僕も行く。リルと一緒に行く」
レオン、君もかい。結局、お祖父様、アルバート様、レオン、父様、僕とリルクルコンビで辺境伯領へ転移を決行。
あっという間に辺境伯家へ到着。懐かしい。
「お父様、ケビン、本当に来たの?え?」
「クラウディア」
父様、僕、姉様で抱擁を交わした。そこに辺境伯様が慌ててやってきた。
「こ、国王陛下、陛下がいらっしゃった?えっ?」
皆騒然。国王陛下が来てしまったからね。姉様もめちゃくちゃ驚いていた。まったく見ていなかったのね。
「よいよい、レオンに会いに来ただけだから」
「がはははは、お前なぜここに。元気だったか!」
旧知の仲なんだな。今は国王陛下という雰囲気じゃない。楽しそうだ。さっさと2人は外に行ってしまった。自由過ぎるよ。
「本当にこれはどういうことなんだ?ルガリオ達が持ってきた手紙には驚いた。本当にカーバンクル様の転移で来られるなんて。これからクラウディアを王宮に行くのですか!」
辺境伯様が国王陛下がいらっしゃるので忙しなく指示をしていた。僕は姉様にドレスを渡すんだ。気に入ってくれるかなぁ。
「姉様、姉様のドレス作ってきたから着替えてほしいな。絶対に合うと思うんだ」
それから慌ただしく準備をしていた。その間、僕とレオン、アルバート様はお祖父様とレオン様と一緒に辺境伯領を見て回った。途中、リルが大きくなりお祖父様たちを乗せていた。アルバート様も一緒になって楽しんでいた。王宮では自由がないから良いのではないか。ここだけ羽目を外して楽しめばいいと思う。
「ケビン、剣術は成長したか?スタンピードがあったところを捜索したところやはりダンジョンがあったのだ。ダンジョンの街が出来、あの時より活性化され明るくなったぞ。今度ダンジョンへ行こう。ダンジョン街の整備とポーションを作って卸してほしいとお願いしたかったのだ。引き受けてはもらえないだろうか?」
「え!ダンジョンはちょっと遠慮しますが、街の整備をしますよ。あっ、父様に相談してください。僕の一存ではちょっと無理です。そうだ、商会の支店をここに作れば卸せますよね。あー、これも父様とロナウド兄様に確認してほしいです。それに今たぶん父様が相談しているかもしれないのでそのときに一緒に考えます」
「ケビン、ダンジョンに連れていくぞ」
「いやだー、無理かも。その時体調が悪くなるかも」
がははは、笑うレオン様。目を輝かせるレオン、あれ?レオンハルトを略すとレオン、レオンになってしまった。まあいいか、レオン様とレオンハにするか。
「何真剣に考えているの?」
「ん?レオンハルトを略してレオンって言っているけどレオン様と同じになってしまったから、レオンハにしようかなと考えていたんだ」
「がははは、わしのことはレオじいでいいぞ、ケビン」
「ほんと、レオじい」
「僕もレオじいって呼んでいい?」
レオンまでレオじい呼び。孫がいっぱいでいいんじゃないか。結局2人を両腕に乗せて歩くレオじい。力が強いのか僕たちが軽いのか?
「そろそろ、クラウディアの支度が出来た頃かな。帰ろう」
屋敷に戻り姉様を見た。姉様のドレスはレイカルコーマで作ったドレスだ。水色にラメが掛かったような光沢のあるドレス。実写版灰かぶり姫のような青で刺繍をシルバーで施したドレスだ。
「姉様似合っているよ。すごくいい」
「ケビン、素晴らしいドレスだわ。この刺繍は素晴らしいわ。ケビンが刺繍をしたでしょう?あなたって子は。お父様、転移してくるなんてビックリだわ。精霊様の時もびっくりだったのに、今度ははカーバンクル様とフェンリル様なんて。ケビン、一体何をやったの?」
なぜ僕なんだ。俺は何もしていない。していないんだぁ。根源が全部僕になるのはなぜなんだ?疑惑の目がいつも向けられるんだ。今も姉様に何やらかしたの?って思われている。冤罪だ。
「何もしていないよ、たぶん。魔力を森に補填したら、犬と猫が森から来たんだよ。ただそれだけだよ」
犬猫はリルとクルだけど。
「姉様、このクルさんが転移してくれるから、王宮まですぐだよ。お祖母様、大お祖父様、大お祖母様みんないるんだ。これから紹介が始まるから姉様も早く行こう。みんな待っているよ」
「ねぇケビン、ゼーファン様を連れて行ってはダメかしら」
小声で聞かれた。
「連れて行ってしまえばいいのではないですか?皆、伴侶を連れてきています。母様のお姉様の旦那様は隣国でお留守番ですが、大丈夫だと思いますよ。ゼーファン兄様も行きましょう。家族ですから」
それからレオじいまで連れて王宮に戻ってきた。魔力量の減りは感じないので大丈夫だ。今度魔力量がどのくらい消費するか実験でもしようかなあ。帰れないと困るから近場で実験しよう。
お祖父様が楽しそうにお祖母様に感想を言っていた。お祖母様はかなり心配していたみたいだ。
「帰って来たぞ。楽しいな」
「もう、心配していたのですよ。精霊様が向こうで遊んでいるから時間が掛かるよ、なんて言ってましたけど。遊んでいたのですか!」
「い、いや、あ、あのクラウディアの、クラウディア支度を待っていたんだ。ゆっくりと時間をかけて支度してもらったのだよ。せかしてはいけないだろ?ほら、クラウディア、きれいではないか」
「えぇ。メルシーにそっくりだわ。きれいだわ」
僕はほっとした顔をしたお祖父様を見逃さなかったぞ。お祖父様と目が合い、お祖父様は苦笑いをしていた。ここにも奥様に太刀打ちできない夫の姿をかいま見た。
世の常だ。




