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184 真夜中の引っ越し作業

 今は深夜。僕は眠い。言い出しっぺの僕が責任者だって。


「ではこれから孤児院、教会移動作戦を開始いたします。と言ってもすでに荷物などはマジックバッグに詰めて子供達を西側に連れていくだけですが始めます。教会の方も準備はいいですか」


 神父様、司祭様達皆さんが頷いた。


「すでにガーゴイヤ商会へは立ち退くことを伝えています。ふん、ニコニコしながらお元気でお過ごしくださいと言っておった。こんなことを言うのは不謹慎ですが、神の天罰が下りますように、という思いです」


 司祭様が憤っていた。本当に教会を追い出すなんて、よほど自分の力を過信しているのだろう。自分の実力で全て行ってきた、という自負があるのだろう。信仰心は大事だよ。ガッツリと信仰にハマらないが先祖を敬う、初詣、お盆、お彼岸などは大事だと思う。生きているのは自分の力だけではないから。


 さてと、今回うちで作った真っ黒な馬車に乗り込み、月明かりにない暗闇を颯爽と王都西側地区に走ろうとしている。


「では出発します。忘れ物ないですか?戸締りは?要らないですかね。では行きます」


 子供達はガリガリで暗い雰囲気だった。小さい子達は寝ていたが皆痩せている。聖職者の方々も痩せている。こんなのでいいのかこの国。


 正教会の方は肥えた聖職者が多いそうだ。なんだそれ!自分達と自分達の派閥の教会はゴテゴテしい教会って。そんなのでは女神マルティナ様は喜ばれないではないか!みんながマルティナ様に感謝をし、信仰すルようになればいいのに。


 本当に全くなんなんだ、その教会は!こうして痩せ細った子供達を放置できる神経に憤りを感じる。


 程なくして西側孤児院へ到着した。


 孤児院は前もって改築をしたのだ。やはり表向きはボロ、奥行きを広げ、中は快適部屋。隣接した食堂にうちの食堂に修行に来ていたグリムが料理長として就いた。度々研修としてうちの厨房に足しげく通るグリム。食堂を作ってからは子供達や西側地区の住人達に腕を振るっていた。西側地区に住人たちは健康そのもの。仕事にも慣れ、消極的だった性格は今や元気いっぱいに活動している。皆、誇りをもって仕事をしているのが分かる。家々は見た目ボロだけど全体的に粗末な感じだけど、人々は活気に溢れている。この子達も慣れたら、生きる気力を見出してほしいと思っている。


 教会の方はやはり見た目ボロ、南側地区の教会と見た目同じに作り、中はロココ調にしようとしたが豪華すぎるので、厳かな感じの火災後のノートルダム大聖堂の中のようにした。奥の方へ行くほどステンドグラスの光がはいる構造にしたんだ。表立ってはステンドグラスは全く見えない。あくまでボロを前面に押し出した構造なのだ。


 明日の朝見たら、神父様、司祭様はがっかりすると思うんだ。しかーし、中に入ったらびっくりしてくれたまえ、わははは。


 今日は孤児院の方へみんなを案内して寝てもらう。年長さん達や大人達が部屋をうろうろしている。


「あ、あの、施設の中がきれいなのですが?なんとなく外はボロかったと思ったのですが?」


「うん、そこは気になるかもしれないけど気にしないで。見た目貧乏そうでいいの。周りには貧乏そうで大変と思わせればいいの。中が快適であれば問題なーし」


 皆キョトンとしている。


「ケビン様は策士ですね。これならガーゴイヤ商会は逆に手出ししないですね。たぶんかわいそうに、わははは、と笑って見過ごすと思います」


 策士ではないよ。でも観点はそんな感じだ。


「西側地区に関してはガーゴイヤ商会は手出しできないから安心して」


 涙ぐむ司祭様達が多数いた。


「僕達はここにいていいの?」


 年長者のクロンが心配そうに尋ねてきた。その後ろには孤児院では歳が上の子達が心配で起きていた。


「うん、ここにいていいんだよ。ただし」


 と言った時に心配そうな目で見つめられてしまった。僕はにこりと微笑み安心するように言った。


「ここでは、読み書き、計算を必ずみんなしてもらい、そして希望で剣術、裁縫、マナー、絵画、音楽などをしてもらう。その他に野菜、フルーツの収穫、薬草や木の採取などの仕事をしてもらうよ。みんなが将来どんな職業に就きたいかそれとも学校に行きたいか選択肢を増やしていきたいんだ。みんなに希望ある未来を進んでほしいのだ。勿論ここは嫌だ、出ていくと選択してもいい。挫折しても、ここの帰ってくればいい。そしてもう一度、今度は何をしたいのかをじっくり考えてほしいと思ってるんだ。帰れる場所があると思ってほしいのだ」


 皆が泣いてしまった。参ったな。


「あ、あのあたし、あたしもうすぐ孤児院を出なければならない年齢だったの。まだ間に合いますか?」


「もちろん、自分がやりたいことを探せばいいんだよ。それまでここにいればいいじゃないか。その間、子供達の面倒を見たっていい。ここにはいっぱい仕事があるんだよ。読み書きも計算も教えるし、興味があることはどんどんやっていこう。みんなもそうだよ」


 皆泣きながら頷いていた。未来はこれからなんだよ。


「さあ、みんな寝よう。僕は眠いよ。明日教会の方を案内するね。朝はみんなゆっくり起きて良いからね。食堂にご飯はいつも用意しているから大丈夫だからね。食堂に来れば、ここの料理長グリムが用意してくれるからね。グリムは王宮料理人だったからすごくおいしいんだよ」


「ケビン様がおいしい、新しい料理を教えていただけるので我々料理人は楽しくてしょうがないのです。もっともっとおいしい料理を作ろうと意欲がわくのです。料理人冥利に着きます。ケビン様ありがとうございます」


 グリムまで泣いてしまったよ。もう!


「グリム、みんなのご飯をよろしくね。そしてみんなも寝て!明日、教会と西側地区のことを紹介するね」


 皆をベッドまで案内し無理矢理寝かした。みんな寝ろ!


「ケビン様、お疲れ様です。抱っこしますので寝てください」


 エルビスが僕を抱きかかえてくれた。もう眠いよ。


 起きたら昼近かった。あれ、孤児院大丈夫かな?




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