177 事の顛末は・・(王太子ケンドリック視点5)
話を聞いていくとケビンが発端だったらしい。本当に行動が面白い子だ。そして知識がある。アルバートの神眼で視ても読めなかった”〇生者”。私の究理眼でも視えなかった。珍しいスキルなのだろう。それが関係しているのであろう。
「では、この状況になった発端はケビン君ということなのか?」
「ん?違います、僕ではありません。ライアン様と父様の言い方が悪いのです。事の発端は、なんて言ってはダメですよ。僕はいるかもしれない精霊様にお菓子をお供えしただけです。それだけなのですよ。お菓子に釣られてしまったのはルガリオで、お酒に釣られたのはルービエンス様、長老様です。僕は何もしていないですよ」
あははは、本当に面白い子だな。頭の回転が速く、自分に面倒事が来ないように回避しようとする能力が発動するのか。そして突如現れた。
「何が酒に釣られただ、ケビン。酷いではないか、酒はないか貰いに来たぞい。良い魔力が集まっているから来てみたわい」
「長老様、酒をもらいに来たの?オルコット領のワインがおいしいみたいだよ。僕は飲めないけど」
長老様?えっ?精霊様の長老様がいらっしゃった?挨拶を・・。
「よいよい、分かっておる。王族の魔力が満ち溢れている。メルシーの兄で次期国王に定められし者だな。良い魔力だ」
それからは、ただただ流れるように集まった精霊様達の紹介を受けた。長老様達が集結している。この場が王城ではなくフォーゲリア商会王都支店。まあ、ライアン殿が言う、ことの発端は、ケビン君でありフォーゲリア家なのであろうからこれはこれでありなのだろう。
飲めや歌えやであった。酒も料理もうまい。楽しい。でも精霊様に会えるなんて奇跡だ。
そして帰りはカーバンクルのクル様に転移魔法で王城へ帰ってきた。
誰もがびっくりしていた。ケビン君まで、転移魔法できるの?早く言ってよぉ、と言っていた。クル様曰く、こき使われるから教えなかったと。ケビン君とクル様が口喧嘩をしていた。
「自分だって僕をこき使うくせに、なんで自分は嫌だと言うんだよ、転移魔法でピューって楽にいけるじゃないか!」
「うるさいわね、楽しようなんて思わないでよ!地道にやり遂げてこその達成感があるでしょ!」
「えー、別に楽な方がいいじゃないか」
「その考えが甘ちゃんなのよ。人生苦労した方がいい男になるわよ」
「別にいい男じゃなくていい、楽したい」
とまぁ喧嘩していたらルークにゲンコツされて怒られていた。
ケビン君、幻獣様と喧嘩できるのだね。レオンハルトがリル様を見たが我はできぬと即答されていた。リル様は大きくなって敵を倒し、君を守ってくれるのだからいいであろう、レオンハルトよ。
あっという間に我々の王宮だった。転移魔法、すごい。秘匿することばかりだ。
「あなた?どこからいらしたの?」
「アリステリア、これは、その」
言い訳を考えていたらケビン君?ん?あれ、いる!
「まぁ、あなたケビン君?その子がカーバンクル様?」
えっ?ケビン君一緒に連れて来たの?
「クルに連れてこられてきてしまいました」
「当たり前でしょ!ケビンの魔力も必要なのよ」
「えー、また僕の魔力使ったの?」
「いいじゃない、そんなに減ってないわよ」
また口喧嘩が始まった。この2人?まあいいか、2人は本当に仲がよろしいことで。
「ケビン、クル様落ち着いて。アリステリア、お茶を頼めるか?あとお菓子も頼む。ケビン、ここに座って落ち着こう。クル様、お菓子が来るので食べてください」
「フフフ、ありがとう。ケビン以外はみんないい男なのよね。ケビンがポンコツなのよ」
2人猫のようだな。
「ケビン、僕の部屋を案内するよ」
「待て、レオンハルト。今日は遅い。多分ケビンが一緒に来てしまっているから、ルークやメルシーが心配していると思う。今日はお茶とお菓子を食べて帰った方がいい」
「そうですね、お茶したら帰ります。クル、また転移できる?」
「出来るわよ。ケビンの魔力を使っているもの」
アリステリアが戻ってきて事の顛末を説明した。
「もう、これなら私も行けたじゃないの」
「いや、アリステリア、クル様がまさか転移魔法が出来るなんてわからなかったというか、みんな今日知ったんだ。びっくりしたよ。そして本当に転移出来て今ここにいるのだ」
「すごいわ、クルちゃん。可愛いわね。ピンクがお似合いよ。いつもの姿はどんなお姿なの?」
くるりと周りいつもの黒い子猫になった。
「まあ、可愛いわ」
頬ずりしたり、撫でまわしていた。アリステリア、動物好きだからリル様にもモフモフしていた。モフモフ最高だな。
ケビンが帰る前にレオンハルトとアルバートに魔道具の新作を紹介していた。
「あっ、そうだ、レオン、アルお兄ちゃん、これ新作魔道具。冷蔵庫だよ。ここに飲み物と食べ物を入れておけば冷たいままだよ。マジックバッグがあるからいらないかもしれないけど、とりあえず新作だから渡すね。シャワーも取り付けてしまおうか?僕でも取り付けられるシャワーが完成したんだ」
「ケビン、れいぞうこ?は執事、侍女、メイド達の休憩室においてもいいかい?シャワーはありがたい」
ケビン君や、れいぞうこ?とは何かな。シャワーはレオンハルトのマジックバッグに入っていた家でのお風呂についていたあれか!
「ケビン、父上達の分もあるかな?」
子供達が一斉に私を見た。物欲しそうに見ていたと思われたのか!
「いや、父様はべ、べつに」
「まぁ、あのお風呂の魔道具?あれはいいわ。欲しいわ」
アリステリアが催促している。良い魔道具だから欲しい。私は表立って言えなかったのでアリステリア、君のその物おじしない性格、最高だ。愛しているよ。おっとのろけている場合じゃないね。
ケビンはシャワーを取り付けていた。簡単に装備できるのか。本当に便利なものを作るよ。
「ケビン、今度は国王陛下、いやお祖父様とお祖母様に会えるよ。あと他の伯父伯母に会えるし、君たちの従兄弟たちにも会えるよ。楽しみにしていて。それではまた、今日は楽しかった。メルシーに安心して王城に来てほしいことを再度伝えてほしい」
「はい、楽しみです。それでは帰ります」
「ケビン、またね」
「うん、レオンまたね」
転移して帰っていった。本当にすごい力だ。今日は疲れた。怒涛の1日だった。




