175 国王陛下の後悔(王太子ケンドリック視点3)
その後国王陛下である、父上に報告したところ、案の定ボロレスがフェンリル様とカーバンクル様を王家に献上すべきだと言ってきた。契約しているのはレオンハルトとケビン君だ。ボロレス、お前の功績ではない!それに従魔契約をしているのだ。お互い意思疎通しなければ従魔契約はできない。それなのに献上しろとはどういうことだ。だから精霊様達に見捨てられた地域となってしまったのだ。父上は母上と結婚の際ボロレスに恩があるのは分かるが、もうボロレスに肩入れしなくてもいいのではないか。
「国王陛下、カーバンクル様を従魔にしているのはメルシー様のお子と聞きます。フォーゲリア伯爵家を呼びだしましょう。カーバンクル様を王家に献上していただければ、フェンリル様とカーバンクル様を所有する王家は盤石なものになるでしょう。フォーゲリア伯爵家を呼び出しましょう」
私は怒りを抑えることに神経を集中した。何を言っている、ボロレス。フェンリル様とカーバンクル様を所有するだと!神獣様、幻獣様をだ。
「父上、おやめください。フェンリル様はレオンハルト、カーバンクル様はメルシーの子、ケビン君と契約しているのです。それを王家に献上する命令などおやめください。逆鱗に触れたらどうするおつもりで?ボロレス公爵殿、安易な戯言はやめていただこう」
「王太子殿下、まぁ、献上とまでは言いませんが、フォーゲリア伯爵家を登城していただき、カーバンクル様を紹介していただくのは理にかなっていると思われます。王家に報告をしない臣下はもしや王家転覆を謀っているやもしれませんので忠誠を確認いたしたく進言したまでよ」
フォーゲリア家を敵対勢力にしようとしているのか?そうはさせない。
「父上、母上、今までメルシーの子供達にお会いしてませんでしたね。カーバンクル様の紹介を兼ねて王宮に招待いたしましょう。召集ではなく、王宮へ招待です。メルシーも里帰りをしたことがなかったので、この機にお祖母様やお祖父様にお会いする場を設けましょう」
母上が涙を浮かべている。母上も会いたかったであろう。
「家族で会いましょう、その後フェンリル様とカーバンクル様の意向を聞き、上位貴族の前で紹介していいかお伺いを立てましょう、父上」
「そうだな、あぁそうだな、メルシーの子達に会おうではないか。私、王妃も母上もメルシーに会いたがっている」
父上、やっと本音を漏らしたな。ずっと我慢していたのだ。
「国王陛下!メルシー様は魔法属性がない者です。魔法属性のない者は王家の恥です。王宮ではなく臣下として広間に登城させれば良いのです」
私は怒りを吐き出そうとしたその時だった。
「ボロレス!メルシーを侮辱することは許さん!これ以上メルシーを冷遇することは許さん!」
国王陛下、いや父上が身を震わせて激怒していた。メルシーのことで激怒する父上を見たのは初めてだ。
「ボロレス公爵殿、家族のことで今後口出しすること許さない。身の程を弁えるように!」
私も追随するように言った。悔しそうな顔をするボロレス公爵。
その後、王宮にメルシー達を招待し話を聞き、リル様とクル様の意向を聞き、高位貴族に紹介することで話が終わった。
「父上、メルシーのことでありがとうございます」
「今までメルシーに寄り添えなかった不甲斐ない父だ。許されるとは思わない。しかし、できることならこれから寄り添える関係を構築したい。はぁ、許してはもらえないだろうなぁ」
父上の後悔の念。我々も同じだ。今更なのはわかっている。ただ、レオンハルトとケビン君の縁がこれからの私達の関係を良い方向に導いてくれることを期待している自分がいる。
フェンリル様とカーバンクル様、そして精霊様か。
「父上、ボロレス公爵殿がいたので言えませんでしたが、精霊様がこの国にいらっしゃいます。今まで見えなかったのだと思います。それは精霊様が意図的に見えないようにしたようです。それだけ我々人間に不信感を持っているということでしょう。我々は精霊様が見えますかね?アルバート、レオンハルトは見えるそうです。一緒に戯れて遊んでいるそうです」
「は?せ、精霊様がいらっしゃるのか?この国に精霊様が存在しているのか?まさか!アルバートとレオンハルトは見えるのか。そうなのか」
「ええ、この件は寄親のボールドウエッジ公爵殿に聞いた方がいいですね。だいぶ動き回っていたようですので。極秘裏に会うよう何かしら考えます」
「ライアン殿はフォーゲリア家の寄親で、常にフォーゲリア家を支援してくれていた。感謝しかない」
「父上、そこまで把握されていたのですね」
「当たり前だ!しかし自らが支援できないもどかしさ、悔しさ、くそっ、初動が間違ってしまったのだ。後悔しかない」
「父上、そうですね、過去にしたことは謝っても許されることではありません。しかしこれから家族として接することができるかはこれからです。これから築いていきましょう」
「そうだな、まずはライアンに話を聞こう」
「私の方で秘密裏にやりとりします」
「頼んだぞ、ケンドリック」
「はい。父上」
さて、これから忙しくなるな。メルシーや子供達に会うのが楽しみだ。父上も母上もメルシーに会いたいのだな。まずはライアン殿だ。極秘裏に会わなければなるまいな。私が出向こうか、それがいい。レオンハルトと街散策しようではないか。リル様と散歩だ。




