158 朝から騒がしい
なんだか、ぎゃーという声が聞こえた。外が騒がしいのか?奇襲!レオンは隣で寝ているよ。あいつらがいない。犬と猫と精霊。犬と猫どこに行った?散歩か?耳元でなんか言っていたけど無視して寝ていたんだ。まずかったかな。
「ケビン!」
ドアがバンと開いた。
「イーサン兄様おはようございます。朝からどうしましたか?」
「今、俺たちは子爵家で朝食を一緒にとっていたんだ。そこにリルとクルが朝食に現れた。そしてそこであの子達、腹減ったって喋ってしまった。そこからまぁ、あの騒ぎになってしまった。とりあえずケビン達おいで」
「あれ?料理長達は子爵家の厨房に行っちゃったのですか?」
「ああ、アルがいるから料理を子爵家料理人に教えに行っていたし、ウオマルやウルル達も食堂にいたので、そのままリルとクルも来たみたいだ。紹介していなかったからな。自分たちで出てきたということは子爵家の人達を信頼できると思ってきたのかもしれないな。ケビン、レオンを起こし支度して、あちらに行こう」
「はーい。レオン、起きて。ご飯食べに行くよ」
暢気な僕達2人。
「ケビン、おはよう。ご飯?今日は何かなぁ」
「ケビン、レオン、早く!はい、顔洗う、洋服はこれでいい。髪の毛は水をチャチャっとつけておけばいい。はい出来上がり。行くぞ」
だいぶイーサン兄様、体力がついたね。僕はエアロバイクしかしないけど、イーサン兄様達、魔道具士も筋トレしているんだよ。魔道具士も体力が必要不可欠だー、なんて言っていた。だからイーサン兄様は僕たちを小脇に抱え走れる。
「ケビン、どうしたの?」
「犬猫がやらかしたみたい」
イーサン兄様の両脇に抱えながら話す僕たち。お前たちはホントに暢気でいいな、とボソッと頭の上の方から聞こえる。兄様、ごめんなさい。
そして子爵家の食堂にやってきた。君達、ちゃっかり食べているよね。
「遅いぞ、レオン、ケビン。我は腹が空いてこちらにやってきたのだ!」
「そうよ、全く起きないんだから、この2人は。私達はお腹が空いたのよ」
この2匹がすみませんでした。猫の飼い主として謝ります。
「レオン、ケビン、こちらに座って朝食にしよう。トーマスとランドルが子爵家の料理人に料理を教えたみたいだ。美味しいよ」
これは、まさか和食!ご飯と味噌汁がある。パンとパンケーキもあり選べる。僕は断然和食!
魚はこの前、海精霊の長老が持ってきてくれたカジキ?カジキの煮付け。アサリ汁?ふぁー、嬉しい。出汁が効いていて美味しい。わかめも入っている。わかめの酢の物もある。最高だ。
「あの、これらは海で見たことあるものですが、えっ?食べられるのですか?」
イグリシアート子爵様は小さいころから海の食材を見ていたが、ゴミとして放置されている物ばかりだったことに驚いた。トーマスとランドルの方を見たらドヤ顔して頷いていた。
「料理長、貝どうしたの?あと、このわかめ」
言いたくてウズウズしていたようだ。
「今朝、漁に行く人について行って自分で潜って獲ってきたのです。良い入江があって素晴らしい食材がいっぱいありました。私はケビン様や海精霊様に海の食材について聞いておりましたので、ケビン様、海の食材の宝庫です。素晴らしかったです」
「料理長!潜ったの?すごい。そんなに食材があったの?僕も潜りたい。シュノーケリングしたいなぁ」
「私が獲ってきた魚貝類をみてほしいです。私の鑑定では全て食べられるだったのですが、どのように食したらいいかわからないものもありましたのでよろしくお願いします」
「うん、朝食食べ終わったら見に行こう」
楽しみだなぁ。料理長達、もう海に潜ったなんてすごい。戦う料理人だけど海まで潜れるの?すごい人達だよ。
「こら、ケビン、海の食材は後にしよう。その前にリルとクルの紹介が先だよ」
そうでした、すみません。海の食材の方が気になってしまいました。アルバート様、説明よろしくお願いします。
「こちらはフェンリル様とカーバンクル様なのだ。訳あって一緒に過ごしている。小さくなっているのは仮のお姿ということだ。精霊様同様の対応をお願いしたい」
これがブラッドが言っていたことかとブラットのお兄様がしみじみと言っていた。僕達の従魔ということは言わない方いいということだ。まだ俺達来たばかりなのに、問題ごとばかりでごめんね。ブラッドの家族、受け止めてほしい。
「我もこの汁を所望する!」
こちらにもマイペースの輩がいる。
「リル、クル、貝殻は取ってあげるよ。ジャリジャリすると思うから」
アサリの殻を取ってあげた。二日酔いに効くよ!
「ケビン様、この、おみそしる?美味しいです。我が家の料理人にも教えていただきありがとうございます。うちの領にこれだけの海の食材があるなんて、お恥ずかしながら知りませんでした。改めて、食材の食し方を教えてください。領民にも広がれば飢えが凌げます」
ブラッドのお兄さんの言葉、飢えが凌げる?ってそこまでひっ迫していたの。僕はブラッドを見た。辛そうな顔をするブラッド。言ってよ、ブラッド。ブラッドの領地に来て、良かったよ。少しでも改善できれば領民に還元できればいいよね。
「ブラッド、この状況を見せたくなくて行かなくていいって言っていたの?」
「あっ、いえ、家を飛び出してきたので両親に会う恥ずかしさもありました。しかし困窮しているところを知られたくないことも事実です、すみません」
「じゃー、ブラッドの生まれ育った領地を案内してよ!隅から隅までね。だってウルーチがどんなものか見たいし、もっと違ったものも見つけられるかもしれないし、ブラッドのご両親とお兄さんも一緒にね」
「「「え?」」」
みんなで行けば楽しいじゃないか。それにブラッドの幼少期のことも聞けるし、兄様達にはブラッドとの学園生活のことを言って貰えば安心するのではないかなぁ。
ご飯が食べ終わり、厨房へ直行。なぜみんな付いてくる?
「海でどんなものが取れるのか楽しみなんだ。ケビンは色々知っているみたいだけど、本当に海は初めてだし今日朝食に出たものも初めてだったけどすごく美味しかった。まだまだ僕の知らないことが多いと思うとワクワクするんだ。早くケビン行こう」
レオンが率先して厨房に歩いて行く。僕だってどんな食材を料理長が獲ってきたのか楽しみなんだ。でも潜って獲ってきたなんて本当にすごいよね。
地引網漁ができないかな。やりたいなぁ。まずは海の中がどんなかんじだったか料理長に聞いてからだ。網か、天然繊維。麻や木綿など作れるはず。作ってみよう。
「料理長、見に来たよ」
「ケビン様、皆さんもいらっしゃったのですね。これを見てください。今日私が潜って獲れたものです。海藻や魚、貝類がありました。前に海精霊様が持ってきていただいたエビもいました。その他にも見慣れないものがいたのです。黒いものを吐き出します。毒かと思い逃げました。あれは怖かったです」
黒いものを吐き出す?だって!もしかしたらタコ焼きの材料になるものか。イカ焼きでもいい。ぜひ潜りたい。
「僕も潜りたい。海に入りたい」
「ケビン、危ないからだめだ。海の中でも戦えなければ入ってはだめだよ」
「イーサンにいさまぁ、ダメですか?」
「兄様達と一緒に浅瀬なら入っていいよ。でも潜るのはダメだよ」
「わかりました。潜るのは断念します。料理長や漁師の人達に頼みます」
「そうして欲しい」
残念だがしょうがない。まだ子供だから心配させてはいけない。子供の海の事故は多いからやめておこう。あっでも、船の上から海の中を覗く道具があったよね。あれも作ってみよう。
これから作るものは網、掴む棒がついている網と投網をまず作ろう。その後、覗きみ道具、命名がおかしい、なんだっけ箱メガネ?と地引網を作ろう。




