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157 ブラッド、なぜ言わなかった!

 ブラッドの両親にはブラッドの仕事ぶりについて話し、いつも助けられていることそして感謝していることを伝えた。


「ブラッドが忙しく仕事をしているなんて、この子は幼少のころからいつも面白くなさそうに過ごすことが多く、やっと学園でイーサン様やショーン君と仲良くさせていただいて楽しく過ごしていると言っていたのです。寄親のガーネイル侯爵様のご厚意で事務官になりましたが、合わずにすぐ仕事を辞めて帰ってきた時には嘆き悲しみました。ここで仕事の手伝いをしていましたがやはりやる気がなくどうしたものかと思っていたのです。そんなときにイーサン様とランドルフ様からの手紙を見て飛び出していき、まったく便りがなく心配しておりました」


 ブラッドの母親の心情を聞き、ブラッドを睨みつけてしまった。まったく手紙の一つぐらい出しなさい!あっ、報連相のできない僕、人のことは言えないか?


「父上、母上、私は楽しく仕事をしておりますので心配しないでください。ケビン様の無茶ぶりは多々あります。仕事が多いです。でも本当に楽しいです。ケビン様の下で働いている自分が誇らしく感じているのです。だから安心してください」


 何気に愚痴を混ぜ込んだのか、でも楽しく仕事をしていると両親に言っているのなら良いか。


「ところで父上、兄上、明日の朝、漁をしているところにケビン様をお連れしたいのですがよろしいでしょうか?ケビン様が魚を見てみたいとおっしゃっているので大丈夫でしょうか?」


「大丈夫だが、漁と言っても大したものは獲れていないので楽しくないと思われます。大丈夫なのか?」


「大丈夫だと思います。では、父上、明日、漁を見させてもらいますね。あと外の敷地を貸していただけないでしょうか?そちらで寝ます。ちょうど海が見えるので景色がいいです」


「待て待て、アルバート様方を屋外なんてダメだ。失礼ではないか」


「大丈夫だよ、兄上。家を持ってきているから」


「「「「は?家を持ってきている?」」」」


 絶対うちの人たちみんなポンコツだよ。これに慣れてしまっているから常識がないんだよ。


「ブラッド、だめだよ。ケビンの常識がない、が我々に影響を及ぼしているのかもしれない」


「そうですね、これが普通と考えてはいけないのに体と神経が慣れてしまっている」


 イーサン兄様とアルバート様、まただよ、何気に僕をディスっているんだよ。


「ブラッド、見せたほうがいいね。その方が早いよ。あと紹介していいかな。出てきたくてしょうがないみたいなんだ、あの子たち」


 誰もがため息をついた。


 それからあの子たちは部屋で舞っていた。


「こ、これは?」


「父上、母上、兄上、義姉上、びっくりするかもしれませんが精霊様達です。こちらがうちの東地域にいる海精霊様達、森精霊様達です。その他に土精霊様、火精霊様、風精霊様、水精霊様がいます」


「「「「は?せいれい?」」」」


「父上、あの大丈夫ですか?まだあるのですが」


 ブラッドの家族は思考停止している。それからすぐ平伏してしまっている。そこまでしないで、お願い。義姉様、赤ちゃん産まれないよね?臨月じゃないよね?


「父上、落ち着いてください」


「し、しかし精霊様なんて、精霊様がいらっしゃるなんて」


 デジョブ!オルコット侯爵様を思い出す。そしてここでも奥様強し!


「兄上、義姉上、大丈夫ですか?」


「あぁ、だ、大丈夫だ。それにしてもまさか精霊様がいらっしゃるなんて」


「ブラッドの兄さま?お菓子ちょうだい?」


 だめだ、この子たちは。なんでもお菓子ちょうだいはだめー!


「ウオマル様、すみません。まだ兄達はそのような用意はしていないので我々に言ってください」


 ブラッドとルーアンが精霊たちにお菓子配りを始めた。


「ブラッド、一応お菓子というかお前の好きな食べ物を用意してあるが、精霊様や皆さんのお口に合うかどうかわからないが」


「兄上、私も好きなものを用意していてくれたのですか?」


「あたりまえだ。久しぶりに帰ってくるので用意していたのだ」


 団子?みたらし団子?マジ。


「ブラッド、だんご?団子があるの?なんでまた言わないんだよ。もう!」


「ケビン様?これを知っているのですか。粘りのない粒でパラパラとしてしまうのでこのように粉にして固めて食していたのです」


 うるち米だよね、上新粉だよね。米があるではないか。見せてもらわなければ。


「もー、なんで言わないんだよ。やったー、米だよ、団子も来るよ。団子食べたい」


「ケビン様、だんご?ではなくウルーチといいます」


 まんまうるち米やーん。やっぱり米あるよ。ブラッド、なぜ言わないんだよ。本当に食に関しては全く関連付かないなんて!


「イーサン兄様、米作りのための機械を貸し出しましょう。うちで麦のために使っている農耕機を提供しましょう。米を作ってもらうのです!」


 またも暴走ケビン君。興奮気味に言ってしまった感がある。


「ケビン、落ち着け。まだイグリシアート子爵家の皆さんが状況を把握していない。それにケビン、先ほど漁の方を見せてほしいと言っていたのに、米作りの方に思いが先走ってしまっているではないか?お前は次から次へと考えが出てくるがみんなが追いつかないよ」


「ロナウド兄様、すみませんでした。状況を整理すると、まず外に滞在する家を建てること。それから漁を見せてもらうこと。そしてウルーチを見せてもらうことです。あっ、その前にウルーチを食べます。これでいいですか」


 イグリシアート子爵家の方々はまだ思考が追いついていないが、兄様方、アルバート様、ブラッド、従者達は呆れと共に大笑いしている。またか、と思っているのはルーアンとブラッド。


 外に滞在用家を取り出し、見晴らしの良いところに設営。おお、気もち良い風と眼前に広がる海。俺たちは設営を楽しんでいた。


 後ろの方でブラッドは兄弟の会話をしているようだ。よかった、僕にかかわる人たちの家族仲が悪いのは嫌だ。本当はみんな仲良くしてほしんだ。


 ♢♢♢ブラッド兄弟の会話♢♢♢


「ブラッド、これは、マジックバッグに家が入っているのか?すごいな。これなら気を遣わずに各々のんびり過ごすことが出来るな。本当にすごい。それに、お前が言っていたケビン様。見た目に騙されてはいけない、あれは実感した。まだ出会って短時間だが目まぐるしく状況が変わっていく。お前はこれをいつも対応しているのだな。大変だな」


「そうなんだよ、兄上。もしかしたら、いや絶対、この東地域も状況が変わっていくかもしれませんよ。ケビン様はそういう方です。兄様も覚悟してくださいね」


「えっ、覚悟って?」


「明日、漁を見に行くのですが、そこでもケビン様が何か発見してしまったら、そしてウルーチをどうするかによってです。まだまだ色々何か考えていらっしゃるようですので、はっきり言って分かりません。なので、ケビン様がやらかっしたら、あー、やっぱりと思ってあきらめて大変さをこれから味わってください。弟も呼んだ方がいい可能性があります。あいつは魔道具好きなので、うちの商会が好きになると思います」


「そ、そうなのか。もう今日でいっぱいいっぱいなのだが、精霊様だぞ、精霊様がいらっしゃるのだぞ。ブラッド、お前はなぜ落ち着いていられるんだ?」


「えー、信頼を得られれば、これからもっとあります。俺は父上、兄上は信頼がおける人だと思っているので、たぶん、普通に接してくると思います。その時はよろしくお願いします」


「ブラッド、なんだ、その含みのある言い方。何があるのだ?」


「これからです」


 その夜、イグリシアート子爵家全員寝不足になったとかならなかったとか。

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