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156 海だ!

 快適な野営をしながら、やっとやっと海に着いた!海だ!海は前世のものと変わらないよ。青い海。しかし、なんてことでしょう!浜辺がない。あのサスペンスに出てくる断崖絶壁があり、遠くの方に見えるのがリアス式海岸のようだ。断崖絶壁の箇所は下に降りられるかもしれないけど波がドバッとくるね。リアス式海岸風なら養殖に適しているか?


 火サスのあの音楽が聞こえてくるようだ!そしてララバイが聞こえてくるんだ。


 "こーい、ならばいつかは消える~"ってな。余談でした。



 きっとどこかに浜辺があるはずだ。夕暮れ時、オレンジ色と青のコントラストの空と雲と海、女性と犬と猫でキャッキャ、ウフフを、うーん、違うな。きっとあの2匹ならあっという間に走り去っていくのだろうなぁ。


 ビシッ、ビシッ、痛っ!


 みんな、またかという目で見る。本当にこの犬と猫、思念を読まないでよぉ。


「犬ではないと言っているではないか!全く。しかし、そういう海はあるぞ。安心しろ。ただ、キャッキャウフフはしないぞ」


「そうね、そのキャッキャウフフって何かしら?」


 恥ずかしいからやめて。


「なんでもないよ。ただ一緒に海辺を走りたいなぁと思っただけだよ。気にしないで」


 浜辺があるんだ。とりあえずブラッドの実家イグリシアート子爵家へあいさつへ行こう。親御さんにブラッドが元気なところを見せて安心してもらわないとね。


 海沿いを馬車で揺られ、海が見える丘の上にブラッドの実家がある。いいなあ、海が見える家ってうらやましい。


「毎日見ていると飽きますよ。大した特産もないですし、毎日生きるのに精一杯な領地ですよ」


 小舟で漁に行くのか?大きい船は見当たらない。この世界の船ってどういうの?


「ブラッド、ここの船って小舟がメインなの?大きい船はないの?」


「??大きい船ですか?みんなあの浮いている船ぐらいです」


「網で囲い漁をしないの?」


「ケビン様、またおかしなことを言ってますね。あみ?ってなんですか。漁はだいたい潜って先の尖った木の棒を刺したり、手で捕まえたりします。海精霊様達が持ってきた魚貝類は見たことがなかったのでびっくりしたのです。あのようなものがこの海にあるのですかね?また食べたいです」


 網を知らない?じゃあ、タコつぼは?カゴ漁は?試してみたい漁業がたくさんある。これは本当に東地域の人たちの協力が必要不可欠だ。


 それにしてもブラッド、ロブスター見たことがなかったのか?あの時、海精霊達がたくさん魚貝類を持ってきてくれたがどこの魚貝類を持ってきたのだ?人間が行くことができない遠くの海なのか?


 アズマイースト商会はどのあたりにあるのだろう?


「ブラッド、アズマイースト商会はどこにあるの?」


「その商会はうちの寄親のガーネイル侯爵の街にあります。ここから近いですよ」


「あとで行ってみたいな。天草がなくなってきたのでまた買いたい」


「あれでしたら、うちの漁村にもたくさんありますよ」


「あ?なんだって?ブラッドのところにあったの?え?なんで早く言ってくれなかったの?えー。ブラッドのところから仕入れしたのに」


「いえ、そもそもゴミですから捨てていましたので売り物ではないですよ。天草で何を作っているのですか?」


 そこから?ブラッド、寒天食べていたではないか!原料は言っていなかったか?あれ?


「ブラッドが好きなコーヒー寒天とフルーツ寒天、ところてんも食べたよね。あれだよぉ」


「え?寒天?まさか」


「あの天草は寒天の原料なの。ゴミにするのは勿体無い。はっ、ゴミで捨てているものがいっぱいあるのではないか?ゴミと呼ばれるものを見せて欲しいな」


「かしこまりました。父上や兄上に伝えてみます」


 まただよ、という顔をされたって、知らないで捨てているものがいっぱいあるのではないか!これは調べないと、もったいないお化けが出てしまうぞ。


 屋敷からブラッドの両親と思われる男女が出てきた。


「よ、ようこそ、イグリシアート家にお越しいただきありがとうございます。そして愚息がお世話になっております」


 深々と頭を下げられてしまった。


「おじさま、お久しぶりです。イーサンです。ブラッドには大変お世話になっているのです。特にうちの弟ケビンの事務官をしていただいているので助かっております」


 ケビン?小さい子の事務官?僕を見ているよ。でも僕の隣にいるレオン、そして髪色は変えているけどアルバート様と分かるんだね。言葉を失っていた。


「父上、母上、その中へ通してよろしいでしょうか?」


「へ?う、うちへ?」


 動揺しているよ。ブラッド、親御さんに気遣ってあげて。


「父上、母上、大丈夫ですか?中に行きましょう。すみません、皆さん、中へどうぞ。兄上、義姉上」


 お義姉様、身重なんだね。お義姉様の方を気遣わなければ。


「ブラッド、いいよ。お義姉様、赤ちゃんいるんでしょ。僕たちに気遣わなくていいから、お義姉様、座っていてください。すみません、皆さん、押しかけてしまって、すぐ帰りますので」


 復活したブラッドの親御さん。


「た、大変申し訳ございませんでした。びっくりしてしまいまして。まさか、アルバート殿下とレオンハルト殿下がいらっしゃるなんて、申し訳ございません、取り乱しました」


「すまない、今は王家とは関係なく対応してほしいのだ。普通に接してほしい」


 普通に接するのは難しいかもしれないが頑張ってほしい。


「ところで、こちらにはどのような用件でお越しいただいたのでしょうか?」


 王族を連れて本当に何しに来たの?という心境だろう。大したことはないんだよ。海に行きたかっただけなんだ。魚釣りをして魚貝類を食べたかっただけなんだ。深い意味はない、ごめんなさい。


「おじさん、申し訳ございません。ブラッドの元気な?姿を見せることと、うちの弟のケビンが海が見たい、魚が食べたいという目的でこちらに押しかけてしまいました。本当に申し訳ございません」


 兄様達の想い人に会いに行くのは言わないのか?そちらが兄様達はメインではないのか?僕をダシにしてはダメだぞ!


「先ほどから、あの、ケビン?様と言うのはこちらの小さいお子さん?がブラッドの雇用主ですか?こんな小さい子が働いているのですか?」


 ハテナマークばかり付く会話だよね。こんな子供が?と誰が思うよね。わかる、わかる。僕もそう思うよ。


「そうなんですよ、イグリシアート子爵様。僕みたいな小さい子をこき使うのです。酷いと思いませんか?僕はのびのびと遊んでいた方がいいと思うのですよ。そう思いませんか?」


 戸惑っている子爵様に畳みかける。


「父上、母上、ケビン様の見た目に騙されてはいけません。この小さい体で仕事を増やしていくのですから、皆大忙しなのです。それに、この領地でも何やら確認したいことがあるようです」


 みんな一斉に僕を見る。


「どんな漁をしているか見たいなあと思っただけだよ。どんなものが獲れるのか知りたかっただけだよ。そんな忙しくさせるようなことにならないと思うよ(たぶん)」


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