131 王都支店オープンに向けて2
午後からは魔道具施設の面接だ。特に多いのが王都学園卒業予定の学生が多い。あとは卒業したが別の道に行ったが再度魔道具士になりたい人達だ。他に事務官も募集している。
「イーサン兄様、筆記、実技試験をした後に面接となりますね。実技試験はオルゴールの組み立て、みんな組み立てられるかなぁ」
「ふふっ、組み立てられなかったら魔道具士として失格だよ。まずはモノを作らなければ始まらない。今回のオルゴールは手動、ネジを回すタイプのものだ。考える力、そして想像する力が必要だ。凝り固まった頭ではここの魔道具施設では働けない。ケビンの作って欲しいノートの数が増えてきている。それなのに、それ以外で作らなければいけないモノが多すぎる。まだ売り出したばかりのドライヤー、魔道ランプ、アイロンの生産だけでも大変なんだ。その後故障や中古品として売るための整備も増える。やることがいっぱいなんだよ!誰だ、こんなに考えたのは!開発と生産両方こなせる人材を探さなければいけない。そして平民、貴族などの壁がない、領地で働いてもいいという人材が多くいればいいなぁ」
「イーサン兄様、大変ですねぇ」
「お前だよ!こんなに考えたやつは。次から次へと、わかっているのか」
頭をグリグリされ、地味に痛い。
「いやぁ、僕はただ言っただけですよ。こうあればいいねぇ、ぐらいですよ。イーサン兄様、あとは試験の時に見て欲しいのは態度です。実技試験の時は特に性格が出ると思うので、よく見ておいてください。化けの皮が剥がれる時があるかもしれないですからね」
やっぱりこいつ怖いって、ひどいね。上っ面だけいい奴、裏では後輩いじめや弱い者いじめをする奴らはいる。特に貴族で上位思考、貴族第一主義者が紛れ込んできたら輪が乱れる。うちはみんな平等。僕たちが見ていなくてもきっちり働いてもらわないと追いつかない状況なんだから、みんなで一致団結して頑張ろう精神だ!
「僕は事務官候補生の試験の後面接に入るので、魔道具士の面接の時に会いましょうね。ではいってきまーす」
後ろ手にため息が漏れてたよ。兄様達いつも振り回していてごめんよ。でも、これは僕の兄になった使命と思って頑張ってくれたまえ。俺の快適スローライフには魔道具士にぜひとも頑張ってもらわないと。
スキップしながら事務官の面接に向かう。後ろにはルーアンがいるけど、これまたため息ついていたよ。幸せが逃げるよー。
「ケビン様はいつも楽しそうですね」
「えー、ルーアン、ルーアン楽しくないの?この生活辛い?大丈夫?」
「いえ、とても楽しいですよ。振り回されすぎていますがやりがいはあります。ケビン様と一緒にいると次何が起こるのだろうとワクワクします」
「ルーアン、よかったよ。僕といて辛いと思われていたらどうしようかと思ったよ。まぁ、大変かもしれないけど今後ともよろしくね。デートなどがあったら言ってね。プロポーズする時は僕が演出してあげるからドーンと任せてね」
「あっいえ、まだそういった予定はないですし、ケビン様にさせるのはちょっと、遠慮します」
何気にひどい。花火作ってドーンとしたり、屋根のない馬車に横断幕でプロポーズ成功!と張り、それに乗って領内一周、空き缶がないのが残念なんだよ。空き缶に紐をつけて馬車の後ろに取り付けるとカランカランと音を鳴らしながら馬車移動。ふふふ。その間、領民達がおめでとうの言葉と共に花びらシャワーでもすればバッチリじゃないの!
「ケビン様、よからぬことを考えるのはやめてください。顔がニヤついておりますよ」
「まぁ、演出は任せてよ!」
小声で遠慮したいと言っているよ。スルー。
「これから事務志願の人達は社員食堂で食事をとってもらっているからその間に採点しよう。どんな回答が出ているかなぁ」
事務官候補生の試験は多分初めて見る筆算と数字のパズルとクロスワード。
それから作文でも小論文でもどちらでもいいがお題"こういう世界になって欲しい"。綺麗事を書いても点数加算に入らないことを注意書きとして書いておいた。そんなものはいらない。ゴールのための過程をどのように考えているかを知りたかっただけだから。
そして即戦力が欲しいので自分が考える収支報告を作ってもらう。
ロナウド兄様とフレッド様、そしてなぜかウェルス様とライアン様、ステファン様がいた。
「ウェルス様、あれ?領地は?」
「少しの期間トリニティに仕事を任せてきたよ。トリニティは本当に優秀だよ。これから部下となる者達がどんな思考を持っているか知りたくて来てみたんだよ。トリニティがぜひにと言ってくれたのでな。ドバイン殿もきているよ。そしてなんだね、この試験。頭が硬いとできないな。ケビン君の下で働くものは柔軟な思考を持ってないとついていけないから、どんな回答が出るのか楽しみだ。そういえば社員食堂の料理、うまかったよ。領地と遜色ない味だった。本当、ここは就職したい場所としてはとても良い。ただし、入らなければ良さがわからないのだけどね。あははは」
みんなに採点を手伝ってもらったのでサクサク終わった。試験の内容を一枚一枚見て、紙の余白に書かれている努力の成果などを見ていた。大体そこに答えがある。だから余白を多く取っていた。
「くくくっ、惜しいな。ここまで行き着いたのに最後が甘い。この者の努力はわかったな」
筆算をすぐに理解して最後まで答えが出ている人もいた。
「面白い試験だね、ケビン。同じ考えはないということだね」
ルーアンが食堂偵察から戻ってきた。
「ごめんね、ルーアン、食堂はどうだった?」
「食堂の料理が美味しいと皆言っています。そして試験の感想を皆口々に言っていますね。王宮事務官を目指しているものは、酷評ですね。なんだ、この試験は意味がない、と言っておりました。しかし中には、この問題を考えた人はすごい、面白いと絶賛している者もいました」
うん、面白問題なんだけど、真面目にやれー、と思う人もいるだろうなぁ。柔軟な考えも大事だよ。
さて、これを踏まえ面接に取り組もう。どんな人たちなんだろう。
はじめに不安に思っていることに対する答えを伝えてあげて、それからこちらが質問、最後にまた疑問を聞いてあげよう。




