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129 王城一室では

>>王城、王太子家王宮>>


「ケンドリック王太子殿下様、大変申し訳ございませんでした。いかなる罰もお受けいたします。申し訳ございませんでした」


 レオンハルトの侍女レザリーが平伏している。


「今回の件はレオンハルトのワガママで王都に行かなければ起こらなかったことだ。確かに今、王族派、貴族派が激化している。貴族派の一部が行ったこととわかった。はぁ、父上、国王陛下はボロレス公爵に依存しすぎている。今回の件も貴族派が計画したようだ。レオンハルトを部屋に閉じ込め、教師達にさせるように依頼した。勉強が嫌で逃げ出すとは王家として恥ずかしい行為だ!お前達も追って沙汰を出す。以上だ!」


「父上、それはあんまりです。レオンハルトを部屋に閉じ込め、勉強させるなんて!勉強嫌いが余計増してしまいます」


 レオンハルトの兄、第一王子アルバートが弟レオンハルトを庇った。


「言葉を発するのはいけないことだと重々承知しております。も、申し訳ございません、レオンハルト様の思いも聞いてください。お願いいたします」


 レザリーが泣きながら進言している。護衛騎士のウィルズも皆レオンハルトの思いを聞いて欲しいと頼み込んでいる。


「そうですよ、父上。レオンハルトの思いも聞いてあげてもいいのではないですか!レオンハルトだって言いたいことがあるかもしれないではないですか」


「子供の言うことだワガママしかないだろう」


「父上、お願いです、レオンハルトの思いも聞いてみるべきです」


「分かった、レオンハルトを連れてくるように。アリステリアも連れてくるように」


 レオンハルトが入って来た。レオンハルト、こんなに小さい子だったか?その後、妻アリステリアが入って来た。泣き腫らした目をしていた。


「アリステリア、こちらに座ってください。こんなに泣き腫らして、目を冷やさなければ。冷やすものを持ってくるように」


「あぁ、レオンハルト、こっちに座りなさい」


 兄のアルバートが隣に座るように言った。それに従いレオンハルトが隣に座った。


「レオンハルト、自分で何をしたかわかっているか?どれだけ迷惑をかけたかわかっているのか?勉強が嫌いだからと言って逃げるなんて、王族としてあるまじき行為だ!誘拐犯にさらわれるような失態」


 私は王家としてあるまじき行動をしたレオンハルトを叱っていたが、涙を溜めて、必死に縋ってくるレオンハルトに心を痛めた。


「父様までボクのことをダメな子と思っているの?ボクは兄様と姉様と比較され先生達にダメな子だと言われながらムチで手を叩かれたり、ツネられたりしているんだ。ボクは勉強が好きなんだ。だけどいつも先生達はボクのことをダメな子と言うんだ。父様達も僕をダメな子と思っているの?いらない子なの?どうして?どうしてあの先生なの?別の人じゃダメなの?」


涙ながらに訴える我が子。なんだって?ダメな子?ムチを打つ?何を言っているんだ?


「レオンハルト。な、なにを、ムチを打つなんて、ダメな子って、そんなことを言われていたのか!」


 侍女の方を見たら泣きながら頷いていた。まさかそんなことを、くそ!


「レオン、ごめんなさい、お母さまが気づいてあげられなくてごめんなさい」


「レオン、アイツだよな。ボロレス宰相の寄子の、くそっ。私の方こそ気づいてあげられなくてごめん、兄として弟を守れなくてごめん」


 レオン、すまない。私の方こそ父親として失格だ。まだ子供なのに他人に任せきりにしてしまい、あの子は必死に一人で耐えていたなんて。


 私はみんなが抱き合っている外側を包み込んだ。


「レオン、すまなかった。気づいてあげられなくてすまなかった。一人で悩まないでくれ。これからはなんでも相談してほしい」


「父上、母上、兄上、あ、ありがとうございます。ヒック。父上達に拒絶されたらと思うと悲しくて、でも拒絶されたらケビンのところに行こうと思っていたので、それも少し残念です。ケビンが教えてくれたのです。ワガママと自己主張は違うこと、自分の気持ちを素直に言うこと。それでも、親が聞き入れてくれずダメならケビンのところに来いと言ってくれたんだ!ケビンのお兄さんが魔道具士みたいだから遊びに行っていい?」


「コラコラ、さっきの泣きべそレオンはどこに行った?ケビンって誰だ?その子に助けられたのか?」


 ケビン?メルシーの息子にケビンという子がいたが?侍女を見たら頷いていた。メルシーの子に助けられたのか?その子がうちの子を勧誘?


「レオン、そのケビンくんに何を言われたんだ?」


「あ、あの、"全く話を聞いてくれない親なら、僕のところに来ていいよ。一緒に人生を謳歌しよう。でも、僕のところに来たら、働かせるけど!一緒に仕事をしよう。だってみんな僕に仕事をさせるんだよ、ひどいと思わない。こんな可愛い盛り、遊び盛りの子供に仕事をさせるんだよ。こーんなに書類の山なんだよ"と言っていました。だから、ダメならケビンのところに行って、一緒に働こうかと思ってました。このマジックバッグとドライヤーと寝袋と食料をもらいました。それに色々とマジックバッグに入れてくれたのですがなんだかわからないです。従業員特典だそうです。まだ従業員ではないのですがもらいました」


 なんだ、そのマジックバッグとドライヤー、ねぶくろ?って。髪の毛を乾かす魔道具?アリステリアが興味津々だな。マジックバッグの中から化粧品やらしゃんぷー?はんどくりーむ?お菓子などが出てきた。それも温かいまま。メルシー、君の息子は何なんだ?あぁ、君に会いたいよ。みんな君に会いたいんだよ。君の息子のケビンくんにもお礼を言いたい。レオンハルトを見失わないでよかった。


「レオンハルト、今度、そのケビンくんに会いに行きたいな」


 レオンハルトが笑顔で答えてくれた。


「はい!」


 レオンハルトの笑顔を守れてよかった。




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