126 王都〜ルーアンと王都へ遊びにいこう2~健気な演技を伝授
さて侍女さん、護衛騎士さんと会えたことだし、僕たちは散策を再開しよう。
「ルーアン。お疲れ様。ありがとう」
「ケビン様、なんでも首をツッコむのはやめてください。今回は助けられましたが、状況が違っていたら大変なことになってました」
「ごめんごめん、ルーアン。ところであの子、レオンって王子?」
「はい、王太子殿下の第二王子殿下のレオンハルト様ですね。ジュリアス様にそっくりですね。ケビン様にも似てますよ。ただ評判はワガママという話は聞いております。ここへもお忍びで遊びに来たのではないですか」
「ふーん、ワガママという噂なんだ。そうは見えないけどね」
かまってちゃんか?意思表示が難しくわがままに見えてしまうのか?俺に泣きじゃくりながらお礼を言ってきた時は素直でいい子って感じだけど。
「レオン、良かったね、じゃー、僕達は行くね。この誘拐犯はどうする?あなた方に任せた方がいいですか?」
レザリーさんとウィルズさんがびっくりして僕をマジマジと見ていた。
「ゆ,誘拐犯ですか?え?レオンハルト殿下!大丈夫ですか!酷いことをされていないですか。お怪我は?。申し訳ございません。我々が、我々が目を離した隙に大変申し訳ございません。いかなる罰もお受けいたします。本当に申し訳ございませんでした」
レオンハルト殿下って言っちゃっているよ。侍女さん、泣きながら謝っていた。いかなる罰か。立場が立場だから罰があるのかな、やだなぁ。
「謝るのは後にして欲しいんだ。この誘拐犯はどこかの貴族に頼まれたみたいだよ。自害しないように口を縛っているけど、そちらに渡していいの?」
「あっ、はい。申し訳ございませんでした。このご恩は、えっ?あなた様は?あの、もしやメ、メルシー様の」
皆が一斉に俺を見ているよ。まずいな。
「僕は通りすがりの街人です。気にしないでください。では、この誘拐犯はそちらで処分してください。処分しちゃってください。また悪いことは何度でもすると思うので。じゃぁ、レオンくん、元気でね。人生色々あるけど、大変なことばかりじゃないから、楽しいことを見つけて人生を謳歌してね。でも、わがままと自己主張は違うからね。多分わがまま言ってお家?から抜け出したのかな?興味があることはいいことだけど、それに伴って周りにも責務が発生することを覚えたほうがいいよ。それから、もし辛いことや他の人に嫌なことをされたら、自分の胸にしまうのではなく、親に泣きついていいと思うよ。まだ子供なんだから。ここの胸にずーっと、ずーっと押さえ込むと辛くなって、人生楽しく無くなってしまうから、親に相談したほうがいいよ。でも、その親が全く話を聞いてくれない親なら、僕のところに来ていいよ。一緒に人生を謳歌しよう。でも、僕のところに来たら、働かせるけど!一緒に仕事をしよう。だってみんな僕に仕事をさせるんだよ、ひどいと思わない。こんな可愛い盛り、遊び盛りの子供に仕事をさせるんだよ。こーんなに書類の山なんだよ。ごめん、僕の愚痴でした。じゃあね、レオンくん。うーん、そうだ、侍女さん達、もし職がなくなったらうちに来ていいよ。うちは人材が必要なんだ。王城で勤めているなら優秀だよね。まぁ、そーなったら考えてね。うちは王都で商会を立ち上げたからそこに来てくれればいいから」
トコトコとレオンくんがやってきた。
「あの、ありがとうございました。ぼ、僕がワガママ言って王都に遊びにきました。こんなことになるなんて、ウゥッ。ヒック、助けていただきありがとうございました。あ、あの、僕、本当に父上達に言っていいのかな?ダメだと思って、ずっと我慢していたんだ。ずっと、先生達に兄上達と比較されダメな子って言われて、ツネられたり、ムチで手を叩かれたりしていたんだ。先生を変えてほしくても言えなかったんだ。ヒック、言ってもいいのかな?余計酷いことをされないのかな?ううっ」
僕は侍女さん達に目をやった。あの人たちも気づいていて何もしてあげなかったのか。はぁ。
「じゃぁさ、こう言おうよ!ムチで手を叩かれたり、ツネられたり体罰がひどいので先生を変えて欲しい。いつも先生達はボクのことをダメな子と言うんだ。父上達も僕をダメな子と思っているの?いらない子なの?と弱々しく言うんだよ。健気な男の子のように言うんだよ!これ大事だから。健気さが大事。ボク、ダメな子なの?いらない子なの?と弱々しくいうんだよ!そしてそんなダメ教師、やめさせてしまえ!教師は子供の成長助けるための教師なのに、そんな自分の名声のためにするやつらは教師ではない!よし、そいつをやめさせよう。はい、今から練習しよう。ボクみたいにいつも言っていると誰も気にしなくなるから、たまにそう言うことを子供に言われると心にグッとくるかもしれないから、はい、今から練習しよう」
ルーアンが呆れているよ。それから伝授した。心にグッとする言い方を。
「レオンくん、感情が高まってくると自然に涙が出てくるから、泣きながらでも言葉はしっかりと言うんだよ。僕が今から演技するからそれを真似てね」
僕の白熱した言い方。僕もレオンの境遇を自分のことと置き換えて感情に任せて言った。僕も感情移入で涙が出てきたぞ。涙ながらに訴えるように言った。あれ?侍女さんや護衛騎士まで泣いてきたぞ。よし、言い切ったよ!
「レオン、どう?こんな感じ、自分の気持ちを言う時、今までのされてきたことが走馬灯のように浮かび、そしてそれを言葉にすると必然的に涙が出てくる。これ大事だから、コラえるように言うと余計嗚咽が出て気持ちが高ぶってくる。大人達はグッとくるんだからね。でもこれをいつもやっちゃダメだよ。全く効果がなくなるからね。さっきも言ったけどワガママと自己主張は違うからね。ワガママは周りに混乱を促すことになる。今の君はワガママになってしまっている。勉強はやらなければならないこと。大人になるまでに勉強することは大事だよ。勉強が僕たちを成長させるのだから。勉強が嫌で駄々を捏ねているのはワガママだからね。そして自分が本当は何をしたいのか、どうしたいのかを言わなければダメだよ。これ大事だから!自分がどうしたい!何がしたいと言う意思表示は大事だからね。何もないのにやりたくないはワガママだからね」
「うん、自分の今までの気持ちそしてやりたいことを言うよ。僕は魔道具開発をしたいんだ。ずっとずっと言えなかったんだ。言わずに勉強などやらなかったことはワガママだったね。こんなことをケビンはいつもやっているんだね。策士だね。頑張ってみるよ」
策士って酷いな。




