125 王都〜ルーアンと王都へ遊びにいこう1
今日はみんなそれぞれ忙しいみたいだ。ブラッドはユリアさん、ではなくローガンさんに会計など事務官のやり方を教えに行っているのでいない。本気ですぐ引き継ぎをしたいみたいだ。
王都支店は今日の午後改造計画をするのでそれまで僕は暇である。今日の午前中、僕とルーアンだけなので、王都へ食べ歩きに行こうと思っている。串肉がまた食べたいからである。
「ルーアン、串肉食べよう。3本ぐらい食べたいなぁ」
「ケビン様、今日は午後から王都支店へ行く予定ですよ。タウンハウスでメルシー様とジュリアス様とゆっくりされた方がいいのではないですか?」
「タウンハウスにいると、ジュリは騎士団と剣の稽古と鍛錬に勤しんでいるし、母様達は美容と僕にドレスを着させようとするから嫌なんだよ!新作ドレスのデザインを僕に着させるんだよ。酷いと思わない?髪の毛だってくるくるにされるし化粧するしやだよ」
ルーアン、笑い事ではないよ。全く、かわいい女の子に合うかどうかなんて僕は男なんだよ!何度でも言う、男なんだよ。それなのにイメージがわかないから試着してって酷いよぉ。髪型はツインテール、お団子、シニヨンなどなど前世の髪型を伝授した。これでも姪っ子の髪型をしてあげるのは俺だった。義姉は家庭全般は不器用なんだ。バリキャリの人だったんだ。ほんと小さい時からオカン的役割。それが続いていたんだ。楽しかったけどね。その知識を美容部員の人に教えて感謝されたんだ。おっと、脱線してしまった。
「食べ歩きして鬱憤を晴らすんだ!行こう、ルーアン」
従者なのに渋々付いてくるってどうなのよ!
王都には知らない食材があったので鑑定をして前世と同じものがあったら買いまくった。豆、ほうれん草、ロナウド兄様が誕生日に持ってきたフルーツ、パイナップル、グレープフルーツ、オレンジが並んでいたけど売れていないみたいだなぁ。
ドライフルーツにしたいしパウンドケーキに入れたいから買っていこう。シャーベット作りたいな。大量購入。
「おじさん、これちょうだい!」
「おー、嬢ちゃん、これは食べられないよ、皮が硬いし、芯が硬くて食べられたものじゃないよ。こっちの黄色いのは皮が苦いんだよ。全く、こんなのを息子が買わされてしまったから,とりあえず店頭に出しているけど、結局腐って捨てるところだったんだよ。お嬢ちゃん、買うのかい?」
「僕、男の子だよ!」
「悪い悪い、かわいい顔でちっちゃいから女の子だと思ってしまったよ。ごめんな」
ルーアン、笑っている場合じゃないよ。まったく。
「これください。売れないなら全部引き取るよ。あれ?これ、天草?これも欲しい」
「坊主、こんなのも欲しいのか?食べても上手くないぞ。これも結局捨てるんだよ。こんなもの買わされて、うちのバカは全くよぉ」
「これはどこで買ったの?」
「あぁ、それは東の商会が置いてくれと頼んで言ったものだ。置いてくれったってゴミしかならないから、結局うちで捨てろって事なんだよ」
東の商会?東の海にあるんだ。やったぁ。それに捨てるだって?勿体無い。
「その東の商会の人は度々くるの?」
「うーん、2ヶ月に1回くるかなぁ。東もあるのがなくて困っているみたいだよ。だから物々交換って言ってもうちが損しているようなものよ。今日は坊主が買ってくれるから良かったけどな!がはははは」
東の商会って名前はなんだろう。教えてもらいたいな。
買ったものはその場ですぐマジックバッグに入れられないので、ルーアンに何度も行き来してもらい路地でマジックバッグに入れていた。
「ルーアン、大量購入だね。魚とかは流石にないね」
ふと、小さな声で助けて、やだよと聞こえたような気がした。辺りを見回しても何もない。
「ルーアン、声が聞こえない?」
「いえ、聞こえませんが?」
キョロキョロしても別に人はいない。うーん、さっき聞こえたんだけどなぁ。気のせい?
「ケビン様、もう少しで先ほど買ったものが全て揃います。絶対絶対ここを動かないでください。前みたいな事はやめてください。動くとしても私が来てからでお願いします」
「うん、わかったよ。前は人の波に流されたの。ここはあまり人通りがないから流されることはないから大丈夫だよ」
前と周りの状況が違うから大丈夫だよ。心配性だな。
今回は食材をいっぱい買ったから料理が楽しみだ。特に天草。フルーツ寒天や牛乳寒天を作ろう。羊羹もできるよね。楽しみだ。
しかし、聞こえたんだけどなぁ。キョロキョロしても何もない。ぼーっとルーアンを待っているとやっぱり声が聞こえた。
やめてよ、ヤダよ、帰してよと子供の声が聞こえる。虐待か!誘拐か!ルーアンを待ってから行動しよう。
だけど声が近付いているんだよなぁ。あっ、あの人たちか!小さい子が腕を掴まれているよ。これは一大事!無邪気な子供を装う。
「何しているの、おじさん達?小さい子供が嫌がっているよ?」
僕の方が小さく見えるけど、まぁいいか、脳内ボケツッコミしている場合ではない!
「すまんすまん、息子が学校に行きたくないってゴネていんるだよ。全く、この悪ガキがよー」
あなたに全く似ていないけど、というか弟のジュリに顔がそっくりなんだけど。ジュリにしては線が細い。体の作りは俺と同じだな。あー、そちらの方のご子息かな。
「おじさんにまったく似てないけど、本当に息子なの?」
「あぁん?坊主、なんか文句があんのか?お前もかわいい顔しているな。お前は売れるなぁ」
「やだよ、人身売買は違法だよ。この国の法律で決められているじゃないの。おじさん達捕まったら処刑されちゃうよ」
「ふざけんじゃねぇ!お前もこっちに来い!」
「えー、やだけど」
横目にルーアンがいるのが確認できた。ルーアン、がんばれ!何とかして。
「このやろ、子供は大人の言うことを聞け。こいつを捕まえて、大金が貰えるんだよ。だから邪魔するな!」
「誰かに頼まれているの?そんな大金くれるなんて、貴族?の人から依頼されたの?そんな貴族がいるんだ、怖い貴族!」
「あぁ、そうだぞ、貴族は怖いんだよ。こんなこの子を誘拐してこいって言うんだからな。誘拐してその親に言うことを聞かせようって魂胆なんだから酷い話だよなぁ」
「うん、おじさん、その貴族ひどいねぇ。人間のクズじゃないか。そう思わない?おじさん」
もう、ルーアン用意ができたかなぁ。
「あぁ,思うけど、その大金に目がくらんでんのが俺たちよ。諦めな、坊主達」
「おじさん、怖いからこの子と手を繋いでいい?一人じゃ震えちゃうから」
「まぁ、しょうがないなぁ、ほら一緒に手を繋げ。じゃー、いくぞ」
男の子をぐいっと引っ張り路地の影に隠れた。そこからルーアンがバッサバッサと倒していく。つよーい。さすがルーアン。
「もう大丈夫だよ。怖かったでしょ。良かったよ、助かって」
「あ、あっ、ひっく、ありがとうございました。ひっ、怖くて、怖くて、どうなってしまうのだろうって不安で不安で、本当にありがとう、ございます、うわーん、えぐっ、うっうっ」
「よしよし、もう大丈夫だからね、いい子いい子,もう大丈夫だからね」
僕より背が高い事がわかった。年上だよね。多分。これで年下なら別の意味で僕は泣く。
「このやろう、クソガキがー。お前が近づいて来なければ計画がうまく行っていたのに、こっちに来い!」
ヨロヨロしながら僕たちに近づいてきた。腕を掴まれそうになったので、その手を振り切っ、と思ったら、体制が悪く前のめりに倒れてしまった。うわー、倒れる。スローモションのように、倒れないように足を踏ん張り、何とか堪えた、コラえた。コラえた拍子に頭にフニャリとしたものが頭に当たりそのまま頭突きをしたようなかんじになった。おじさんが股間を押さえ悶えている。えー、あのフニャリ感は、まさかー、ヤダー、汚いよ。頭が汚い。
「ルーアン、おじさんの、おじさんのモノが頭に、きたなーい、やだよ!」
「ぶはっ、け、ケビン様、あははは。旦那様の拳骨で頭が強くなったのではないですか!」
「笑い事じゃないよ。おじさんのイチモツが僕の頭に当たったんだよ。やだよ、汚いよ」
悶えているおじさんがふざけるなと言っているが知ったことではない。笑いながら誘拐犯を取り押さえるルーアン。笑いすぎだよ。
「みんな取り押さえたから良かったね。僕の頭に残る感触がすごく嫌だけどね!お供の人達いるの?表通りに行こうか。ルーアンは誘拐犯を監視していて。この子のお供の人はきっと探しているよね。目立つところで座っていよう」
異様な光景。噴水付近に座り串肉を頬張る俺たちと縄に繋がれた誘拐犯とルーアン。
「レオンハ、レオン様」
お供の人が来たのかな?
「レオンハ、レ、レオン様」
お供の人たちのようだ。
「レザリー、ウィルズ」
慌てて走ってきた女性と騎士らしき数人。
「探しました、レオン様。お怪我は、お怪我はありませんか?」
侍女さんなのかな、レザリーさんか、そして護衛騎士がウィルズさんか。王家大捜査が始まったら大変だから、会えてよかったよ。




