124 王都〜西側スラム街を整備しよう3
ルーベンスさんが温泉施設から出てきて一言。何ですか、あれは?そうだよね、この世界に温泉施設があるかどうかはわからない。もしかしたら別の国にはあるかもしれない。
「気持ちよかったでしょう?みんなが使ったあとは必ず綺麗に掃除することが条件だよ!汚いと不衛生になり病気になってしまうから、必ず水を流して、綺麗にブラシで掃除してね。ダメなら、この施設は解体するから言ってね」
「え?解体する?いえいえ、これは必ず継続するようにきれいに掃除します。みんな綺麗にするはずです。しかし、元騎士達が傷が治っているのはどうしてでしょうか?老人や病弱なものが健康になっているのですが!」
「えー、それは追々説明するよ。どうだろう?みんな契約魔法してくれそうかなぁ。頑張って仕事してくれるかなぁ」
「もちろんです。お風呂の中でも会話が弾み、これなら頑張って仕事をすると皆が口々に言っておりました。そしてこんな秘匿することばかりなことがあるのですから、契約魔法をぜひお願いします。お願いですから、契約魔法をしてください。本当にお願いします」
すごーくお願いされてしまった。秘匿事項があってごめんね。
綺麗になって改めて、みんなの意向を聞いてみたが、この状態が続くなら、頑張る、死ぬ気で頑張りますと言われてそこまではやめてとお願いしたよ。死なれちゃ困るから。
みんな意欲あるれるオーラだった。うんうん、いい傾向だ。未来に向かおうとする意志があるんだもん。
それから紙を作る人、農作業をする人、護衛騎士団になる人に分かれ工程を教えた。今は体を癒して、それから全ての工程が整ったら開業式をしよう!飲めや歌えやだ!
「父様、開業式をしましょう。みんなで心を一つに一致団結して頑張ろう会です。飲めや歌えやです」
「待て待て待て、どうしてケビンだけがどんどん先に進んでいくのだ。物事は状況に合わせて動くものだ。今日でどれだけ進んだ?まだここでしか話をしていないのに、もう開業の話になっているではないか!ロナウドやフレッド様に相談してから開業を決めよう。それまで、綿密に打ち合わせをしてから始めていこう。それまでは各々で紙の作り方、工程を把握し仕事がスムーズに流れるようしていこうではないか。ルーベンス殿、本当にうちのケビンが矢継ぎ早に決めて行って申し訳ない。もっとゆっくりでいいのにいつもケビンは話を進めるが仕事が増える一方だよ。ルーベンス殿もこれから忙しくなるので、今は、今だけはゆっくりした方がいい。皆もそうだよ、ケビンが絡むと忙しくなるんだぞ。これだけは覚えておくように!もう一度言う、ケビンが絡むと忙しくなる。わかったかな?」
みんな、はぁー?と実感が湧いていないようだけど、そんなに忙しくならないよ。
「みんな、父様はこんなことを言っているけど、大丈夫だからね。ゆったりとした雰囲気の中仕事ができると思うよ。社員食堂を作ったので、料理人を探すよ。それまでは商会の社員食堂で作って持ってきてもらうからね」
安定した衣食住は心に余裕が生まれるからみんなの顔も違う。子供達の顔つきが特に違う。
「あ、あの、す、すみません。ケビン様。わ、わたくし、グリムと申します。以前王城で料理人をしておりましたが、火傷を負い料理ができなくなってしまいやめてしまいました。ですが、こちらのおんせん?に入り火傷が治ったのです。指を動かすことができるようになったのです。本当に、本当にありがとうございました。このご恩を料理で返していきたいです。ぜひ私に社員食堂を任せて貰えないでしょうか?」
王城の料理人!
「いいの?治ったなら王城に戻れるのではないの?」
「いえ、私の居場所はないと思います。そもそもあの火傷の事故だって、あっいや、何でもないです。王城よりもこちらで自分の料理を振る舞いたいです」
王城の厨房で何かあったのか?火傷までさせるなんて陰湿すぎる。そんなところ行かなくていい!
「願ってもないことです。そうしたら、うちの商会の社員食堂に修行に来てください。今、領地の料理長と副料理長が教えに来ているのです。ぜひ、修行に来てください。それまではそこで作った料理をここに届けますので」
「は、はい!よろしくお願いいたします」
みんな着々と前を向いて歩いているんだよ。
ん?誰かが来たぞ?入ってきていいのか?
「父さん?みんなどうしたの?見違えるほど綺麗になっているのだけど。ユリアもどうしたのだ?別人みたいだよ?」
「酷いわ、兄さん。普通は元から綺麗だがとか何か言うんじゃないの?お世辞も言えなくなってしまったのかしら、全く」
お兄さん?ルーベンスさんの息子か?この前言っていた貴族に不信感があるけど、事務に長けた息子かぁ。
「ローガン、この前の話考えてくれたか?紹介するよ。こちらがこの話とこのスラム街を改善してくれたフォーゲリア伯爵様とお子息のケビン様だ。このケビン様の下で会計事務官をして欲しいそうだ」
ギロっと見られている。こんな子供の下につくのかって感じの態度だなぁ。子供だからしょうがないけど。
「フォーゲリア伯爵様、ケビン様、私はローガンと申します。聞いていらっしゃると思いますが、私は人間関係は得意ではありません。特に貴族とは折り合いが悪いです。ですが、父から話を聞き、立ち上げたフォーゲリア商会の運用内容を聞き、とても興味深い内容でした。会計事務関係と聞いており計算など得意です。ぜひ、雇い入れていただければありがたいです。お願いいたします。ただ、すみません、あの、ケビン様の元で働くのですか?小さいお子様と見受けられるのですが?」
聞き捨てならない言葉だぞ、小さいお子様って。子供だけど、9歳だよ!
「僕、9歳だよ。9歳」
9歳を連呼し子供であることをアピールした。子供なんだよ。
「あっ、は、はい。すみません、もう少し小さい年齢かと、と言うか9歳でも働くのは早すぎますよね?」
「でしょ!9歳で働かせるんだよ。ひどいと思わない。僕子供なんだよ。お子様なんだよ。それなのにみんな僕を働かせるんだよ、しくしくしく」
泣き真似をしたが誰一人賛同してくれない。父様なんて、苦笑いしてまたため息ついているよ。
「ローガンと言ったかな?見ての通りケビンは子供に見える。見えるのだが、次から次へと面倒ごとが増えて仕事も増えていく子なんだよ。王都の会計事務をお願いするのだ、辛いと思ったら、うちの長男、魔道具士のイーサン、商会長のロナウドに愚痴を言ってくれていい。もう無理だと思ったらやめてもいい。退職金を払う。体を壊さない程度にケビンに付き合ってもらえればありがたい。こちらからよろしく頼む」
「父様、何だかそれでは僕が問題児のような言い方に聞こえますよ。ローガンさん、僕は見た目通りの子供なので安心してください。それでは、計算が得意ということですので、明後日、商会に来てください。明日はまだ王都で遊ぼうと思うので、仕事は明後日からにします。それまでこの計算ドリルとこのそろばんを使いこなしてください。そして収支報告書式を覚えてください。あっ、そろばんの使い方は,うちの領地の事務官のブラッドに聞いてください。ブラッド、ローガンさんに今やり方を教えてもらえるかな?」
そして僕はマジックバッグから計算ドリル、そろばん、簿記基礎学をまとめたものをローガンに渡した。そしてブラッドを紹介した。
「ユリアさん、勉強室を貸していただけますか?ブラッド達を案内していただきたいです。ブラッド、ブラッドはそこでローガンさんに会計収支報告のやり方やそろばんなど教えて欲しい。即戦力で使えるようにね。よろしくね」
「ケビン様、よろしくねって、また無茶振りですよ。そんな短時間で即戦力まで教えるなんて、はぁ、頑張ります。そうでなくても、私も負担がかかっているので、即戦力になっていただけるなら何でも教えます。ローガン様、本当にこちらのケビン様に就くことは非常に非常に大変です。忙しいです。次から次へと事が勃発します。最後は諦めてください。しょうがない、やるかに、なります。諦めの境地です。なので、共に頑張りましょう」
周りにいるみんなの目が、一身に僕に向かっている。父様がさっき言った事が現実に起こるかもと思ったのかもしれない。
「みんな、これからの仕事は気楽にやってね」




