122 王都〜西側スラム街を整備しよう1
この王都西側スラム街はおじさんこと、元南地域貴族ルーベンさんの縄張り?それではヤクザみたいだな?うーん、管理している地域。怪我や欠損で退役した元騎士や体が弱い老人、母子家庭、収入に困っている家族がここにひっそりと生活している。貧困者が集まってきてしまうみたいだ。だからみんな生活が苦しい状況。
ルーベンスさんは商会を立ち上げ、孤児院から巣立っていった冒険者達が討伐した肉や素材を商会に売りに来てくれ、飢えを凌いでいる自転車操業的状態だ。冒険者稼業もしょっちゅうここに戻って来れるわけではないので、働ける者は街に働きに行き、ここに戻ってくる生活をしている。中には街の生活が良くなり戻って来ない人も中にはいるらしい。ただ、大体は街の環境や街の人の西スラム街出身を嫌う者もいて、折り合いが合わず戻ってくる者もいるらしい。
「ルーベンスさん、退役騎士さんは力仕事は出来るのですよね?あとは子供達に剣術を教えてもらいたいです。これから冒険者になりたい子供達に基礎を教えれば死亡率は少なからず抑えることができます。それに野外授業として、魔獣討伐に連れていったり、薬草採取に出かけたりしてもいいですね。あとは読み書き計算を教える人を募りたいですね。ユリアさんは刺繍や淑女教育を教えていただくことは可能ですか?あっ、それともうちの領民で王都に行きたいと希望する人をここに派遣しようかな。イーサン兄様、ロナウド兄様、王都で教師がしたいと言っているお友達いないですか?そういう人を集められないですか?」
「あぁ、ケビン、お前が学校のことをだいぶ前に言っていただろう?その時から教師希望者を募っているんだ。平民が貴族の家庭教師になることは難しい。だから別の職種の働き口を探して働いている方が多いんだよ。貴族の嫡男以外は同じだ」
どこもかしこも高位貴族のコネかよ。王宮はよほど碌でもない人材が上司に就いているかと思うとこの国大丈夫か?と思ってしまう。とりあえず、僕の周辺だけでもいい環境を整えておこう。環境で働きがいの意欲も変わるからね。
まぁ、前世も働きがい改革委員会でやる気を出させるにはどんな環境がいいかということをやっていたが、賃金を上げればやる気は出るよー、と思ったけど賃金は上げられないので、ダーツ大会やボーリング大会を企画したがやる気につながったかどうかはハテ?という感じだ。やる気、働きがいは永遠のテーマだね。
ということで脱線してしまったが、この企画をみんなが了承してくれれば、今の生活よりは改善した生活ができると思うんだ。了承してくれないかなぁ。その前にイーサン兄様に道具を作ってもらわないといけないんだけど、余力があるかなぁ?
数日後、やり手執事という出立の秘書さん、退役した騎士さん、子供達を伴って、ルーベンスさんがやってきた。
「この間の話、お受けいたします。皆と話し合い、過去よりも未来の話ができる喜び、今の生活を払拭したいという気持ちがあり、そして子供達の衣食住が困らないならどんなことでもいたします。皆の総意です。どうかこの間の話を進めていただきたい。お願いいたします」
子供達にはお菓子とジュースを勧めた。美味しいと言っていっぱい食べていた。笑顔があるっていいよね。
「ルーベンス殿、顔をお上げください。あの土地を少しでも良くしていきましょう。ただ、これだけは覚悟してほしいのですが、ケビンと関わると大変です。みんなが振り回され、大事になっていきます。それでもよろしいのでしょうか?」
「あははは、出会った時から振り回されているよ。まぁ、これからもっと振り回されるのですか?ケビン様」
父様とルーベンスさん、酷いこと言ってない?安心させないとね!
「大丈夫だよ!何も大変なことは起きないよ!どっしりと構えていてね」
父様が首を振ってこめかみをグリグリしていた。ルーベンスさんもため息をついていた。まだ出会ったばかりのルーベンスさん、表面だけで人を判断してはいけないよぉ。
さてさて、紙の作成と自給自足生活をしたもらうために生活改善をしなければならない。まずはそこから始めよう。
「ルーベンスさん、まず、従業員特典で家を直します。外はボロでも中が快適な家を作りますね。外がボロの方が怪しまれないので、ゆくゆくは外も普通の家にします。見た目ははじめだけ我慢してください。それから、奥まったところに紙を作るための作業所、農作物を作る畑を作りましょう。それからやり方を教えます。水を使うことが多いので、手荒れのクリームを支給しますので大丈夫です。あとは、退役騎士さん達で、治安維持のための騎士団を作れますか?騎士団には、見回り、子ども達への剣術指導、荷物の搬入などを頼みたいです」
「ま、待ってください。私は南地域のボロレス公爵家元騎士団長だったグレゴリウスともうします。ボロレス公爵、寄子のサウザンド伯爵家嫡男でした。このような姿になり、嫡男と騎士団を追われるここにひっそりと生活しておりました。退役騎士と言っても、この通り怪我人が多い、もしくは欠損者です。子供達に剣術は教えられても、荷物の搬入や不審者を取り押さえることが難しいと存じます」
「ふーん、もしだよ、もし体が良くなったら、グレゴリウスさんは自身の伯爵家に戻ってしまうの?」
「いえ、戻るところはありません。今、サウザンド伯爵は弟、母が違う異母弟が当主になっておりますので、私は戻るところはありません。皆、戻る場所がなくここにいるのが現状です。えっ?体が良くなるとはどういうことですか?」
「いやっ、ポーションなどで良くなったら、ルーベンスさんのところでそのまま居てくれて頑張ってくれるのかなぁと思っただけだよ。グレゴリウスさんは強いの?騎士団長をするぐらいだから強いんだよね?」
「は、はい。騎士団対抗では上位にいました」
「おー、上位。すごいじゃないか。そっか、グレゴリウスさんのような騎士がみんなのまとめ役になった方がいいよね。今まで嫡男としての教育もしてきただろうし、騎士団長として部下をまとめることもしていただろうし、うーん、どうしようかなぁ」
まずはどんなことをするかみんなに説明してから考えてもいいかな。
「ケビン、まさかと思うがあのポーションを使おうとしてあるのか?」
父様鋭い。どうしようかなぁ。
「あー、みんな昔のことだから欠損のこと忘れているのではないですか?だから、そんなことあったっけ?何のことですか?ととぼければなんとかなるのではないですか!僕の護衛騎士でもいいですけどね」
父様、思考回路停止しているよ。おっ、回復してきたかな?
「ケビンの護衛騎士。そうだな、それも考えなければいけなかった。ケビン専属の護衛騎士。フットワークが軽く強い騎士か。ルーベンス殿、グレゴリウス殿、今いるところに退役騎士は多くいますか?グレゴリウス殿以外でもまとめ役になる騎士はいますか?」
「ええ、おります。実を言いますとグレゴリウスは事務方は得意ではないですよ」
え!まさかの脳筋?ぼそっと言った言葉が響いてしまった。
グレゴリウスさん、大笑い。
「すまん、すまん。嫡男として勤しんでいたが、なにぶん外で体を動かす方が好きなので、嫡男としては役不足だったのです。だから異母弟が嫡男で良かったと思っています。ただ、利き腕の欠損のため、迷惑をかけると思い故郷を離れました。そして流れ流れてここに居座っていたのです。一応、左手でも剣は使えるので、狼藉者などは退治したました」
やっぱり僕の護衛騎士候補かな。




