120 王都〜孤児院で
孤児院の子供達も一緒に外に出た。子供が30人ぐらいいたのにびっくりした。
「かなり子供が多いのですね」
「母親が働きにいっている間に、預かっている子供もいる。半数ぐらいが身寄りのない孤児だ。ここに住んでいる」
うちの領地の保育園と同じことをしているのか。このおじさん、やり手だな。
「ここに食べられない植物がいっぱいある。本当によく生えているよ。食べられないのに。そしてこれがあの黒い飲み物の種だ。実は赤いのだがまずい」
鑑定してみると、コーヒーとこうぞ?じんちょうげ?鑑定の注釈が紙ができる素材。和紙、紙ができるのか。あの水で溶かした白っぽいのをすけたで紙にするやつか。
藁も使えるんだな。藁半紙。おー、これはここで製造してもらってもいいのではないか?うちはもう手一杯。むふふふふ。
「君は今は悪いことを考えていないか?」
「いえ、なんのことでしょう?」
可愛く首をコテンとしてみた。
すけたの作業での手荒れはポーションで治せるし、外に働きに行かなくても女性でもできるよね。それに自給自足で野菜などを作ればいいのではないか。
「提案ですが、ここで紙を作りませんか?それにこの黒い飲み物を売りたいですねぇ。僕はこの黒い豆が欲しいです。僕に売ってください」
「は?かみ?かみって字を書くものか?できるのか?この黒い飲み物が売り物?できる訳ないだろう!」
僕は全くおじさんの話を聞かず、次から次へと話をしていった。
「おじさんの商会はどんなものを売っているのですか?うちの商会と提携しませんか?あと、ここで農作業をしませんか?自給自足でいいと思うのですが」
「ちょっ、ちょっと待て。ケビン、お前何を言っているんだ?」
「あー、そうですね、うちの商会ってまだ王都で開店していないから心配ですよね。でも、大丈夫です、うちと提携しましょう。この黒い飲み物が欲しいのです。そうだ、おじさん、優秀そうだから、うちの王都商会の会計管理者になって欲しいです。僕はあまりこっちに来れないと思うので、しっかりした人が王都店の会計をして欲しいのです。まだ、王都店の会計責任者を探せていないので、おじさんお願いしますよ」
「違う違う、説明が簡素すぎる。そしてお願いされても、フォーゲリアの商会なんだろう?会計だって当主が管理するのだろう?」
「チッチッチ、違うんですよ!聞いてください!みんな僕を働かせるんですよ。僕、9歳なのに働かすんですよ。ひどいと思いませんか?」
「うーん、なんというか、私はこの短時間で疲れたよ。多分ではなく絶対君は周りを振り回しているのだろう?」
「うーん、まぁ、最近父様はボールドウェッジ公爵様のところばかり行っているし、イーサン兄様は魔道具、ロナウド兄様は商会立ち上げで忙しいのですが、僕のせい?といつも言われてますねぇ。解せぬ」
「あははは、やっぱり君が原因じゃないか。そこに私まで?私も商会とこの地域のもの達の保護があるので、君の事務官になれないが、私の息子が優秀なんだ。息子を使ってみないか?」
「息子さんですか、面談してみましょうか」
「うちの息子は事務に長けた者だが、私が裏切られてこのようになったことで人間不信になっているところがあるんだ。そういう子でもよければ使ってくれないか?」
ほー、人間不信かぁ。とりあえず面談をしてみよう。
あっ、また勝手に決めちゃった。
「あのー、おじさん、父様に相談してから面談でいいですか?いつも報告、連絡、相談がないと言われるので、まぁほぼ決めてしまったのですが、面談は父様に相談してからとなります。でも、推し進めますのでそのつもりでお願いします」
「くくくくっ、うちの息子が振り回されるのが目に浮かぶようだ!あははは」
そして僕を呼ぶ声が聞こえた。
「ケビン様!」
おっ、ブラッドが早かったかぁ。
「ブラッド、早いね」
「早い!ではありません。どれだけ探したことか!しかし精霊様達がケビン様の言伝と言っておりましたので、安心はしておりましたが、なぜここに?」
「迷子になって、ここに行き着いたのぉ」
「ほんとですか?!」
胡散臭い目で見られているが、迷子で押し通す。
「うん、そうだよ、人の波であれーっていう間に裏の路地でここどこ?となったんだよ。びっくりしたなぁ、もう」
そこでブラッドはユリアさんに気づいてびっくりしていた。
「ユリアさん、お、お久しぶりです」
「ブラッド様、お久しぶりです」
ユリアさんの笑顔が眩しい。ブラッドは真っ赤になっているね。ユリアさんがブラッドの想い人確定か!?
「ケビン!」
ありゃ、父様、イーサン兄様、ロナウド兄様、フレッド様が来た。なぜだぁ。
「カトレイン伯爵殿?えっ?ルーベンス殿ではないですか?」
「ルーク殿、久しぶりだな。本人から君の子供とは聞いていたが、性格は誰似?ロイド殿か?ロイド殿よりは考えが柔軟すぎると思うがね」
「うちのケビンがお世話になりました。何かやらかしていないですか?この子はどこへ行っても大事になることばかりでって何がありそうですね?」
「あははは、色々勧誘を受けたよ。そして商売の話までしたよ。うちはフォーゲリア商会の傘下に入るらしいよ」
「け、ケビン、何を言ったのだ?また、大事になることか?え?どうなんだ?」
「えーとですね、父様。ここで紙ができる植物があったので、紙を作ろうかなぁと。それとコーヒーの実があったので、コーヒーを売ってもらおうかなぁ。眠気が取れていいんですよ」
「は?ケビン、かみと言ったか?かみはあの字を書くものか?え?作れるのか?」
「作れます、たぶん。道具を作って貰えば大丈夫です、ねっ、イーサン兄様」
イーサン兄様が疲れ切った顔していたが木工技師達に作ってもらったほうがいいかな。楽しみだ。
とりあえず、ここで従業員となる子供達の家を直さないといけない。大事な従業員だから。葉っぱを取ったり実を取るだけの仕事だけど、従業員だから待遇を考えないといけないな。
「父様、ここの子供達は大事な従業員になるので、従業員特典を作らなければいけません。孤児院寮を作ります。いいですか?」
「ケビン、まだ話についていけていないが、ここの子供達も従業員なのか?」
「そうです、戦力になる従業員なのです」




