116 王都〜王都支店を見に行こう3
父様とライアン様がすぐやってきた。父様達、フットワークが軽いなぁ。まぁ、いつものお小言を言われたが今回は無関係だってんだ!僕は言っただけ。それだけなんだよ。
それから土地の買い付けの作戦を立てた。
両左右、裏を買いに行くために、少々古めかしい貴族服を着て行く計画を立てた。貧乏のフォーゲリア伯爵家が王都の北側を購入。そこをタウンハウスにする気か?と言う設定。商会を立ち上げるようだが、北側だから売れないだろうと言う印象を与える。父様とロナウド兄様となぜか僕が行くことになった。年齢より小さいから、食べさせられなくて小さいと言う印象を与える作戦らしいが、僕は食べているけどちょっとずつ大きくなっているんだよ。ひどくないか?僕はセリフを考えたよ。
"父様、今のタウンハウスより王都が近くなるのですね。今までお城が小さく見えていたのですが、ここはお城が大きく見えるのですね。人もいっぱいいました。びっくりです。あ、あの、父様、王都の屋台でりんごを売っているのを見たのです。あれを一個買ってもいいですか?無理じゃなければ小さいのでいいです"
弱々しく言ってみよう。
「父様、貧乏貴族に見えますねと言うか今まで貧乏でしたけど、あははは」
ロナウド兄様、笑い事ではないけどなぁ。今まで本当に大変だった。兄様達だって、生活が大変だったと思うけど、頭を切り替え、これからのことを考えなくてはいけないよね。よし!
「では行って参ります。フレッド様、イーサン、ケビンが考えた商会の概要の精査をお願いします。ライアン様、いつもすみません。やっと恩返しができると思っていたのですが、迷惑ばかりおかけしています。誠に申し訳ございません」
「わははは、何を言っているのだ、ルーク。こんな楽しいことはないよ。これからどんどん楽しいことがふえていくのだろう?なぁケビンくん」
僕に振らないでくれー。キョトンと知らないふりをする。
誰もがお前だと言う目で見るが素知らぬ顔だ。しらーん。
「ぶふっ」
「あははは」
「お前なぁ」
「ケビン」
「父様、無邪気な子供の様な感じでいいですか?」
また、大笑いだよ。いいじゃないか、無邪気な子供。
「そ、そうだな、ふふっ、無邪気な子供で頼むよ、ケビン」
それから商業ギルドまで歩いて行った。もちろん護衛騎士はいるよ。僕たち貴族だからね。でも、歩きだけど。先ぶれをセレビィ様がしてくれているので商業ギルドも待っていてくれるだろう。
「ようこそお越しくださいました。フォーゲリア伯爵様。私、商業ギルド長のアレジオン サルパトスと申します。サルパトス侯爵家の三男です。中へどうぞ」
応接室に通された。
「この度はお時間をいただきありがとうございます。サルパトス商業ギルド長殿」
「私は侯爵家と言っても三男ですので、堅苦しい言葉は抜きでお願いします。それでは本日は北側のフーリス商会があるところの土地を買うとお聞きしましたが、本当によろしいのでしょうか?もっと適したところをお勧めいたします」
「いえ、いいのです、あそこで。王都中央に近いと高いですし、王都でも敷地を広く取りたいと思ったのであそこで十分です」
「そうですか。あそこの土地は商業ギルドで預かっていたところでして、所有者がですね、ガーゴイヤ商会というところなのです。本日は責任者をお呼びしたのですが、同席してもよろしいでしょうか?あと、もし契約される場合教会の司教様が契約魔法をいたします。よろしいでしょうか?」
うわっ、あの商会が直々に来たのか!どんな顔だ!それも教会の司教が契約魔法をするのか?
ふーん、では買った場合、フォーゲリア家が所有する物を王家、貴族、ガーゴイヤ商会他いかなる者も妨害や嫌がらせをしないという契約魔法をしてもらおうかな。この契約が終わった後にフーリス商会がうちの所有になる手続きをするからね。うちの所有物になるからね。ふっふっふ。
そして教会の司教様と太々しい顔のガーゴイヤ商会の人が入ってきた。
「やぁやぁ、私がガーゴイヤ商会長、ドワンゴだ。うちの商会は王家にも卸しているちょっとした有名な商会なんだよ。田舎の貴族ではわからないかもしれないがな。わははは。王家といえば、フォーゲリア伯爵様の奥様はあの王女様でしたね。お元気ですか?王家の皆さんは元気ですよ。この前も、王太子殿下のお子様がお生まれになり、王家皆さんでお祝いをしておりましたよ。あっ、奥様は来ておりませんでしたね。嫁いでから見ておりませんね。私はボロレス公爵様が後ろ盾になっていただいているので、ボロレス公爵様によく王宮にお呼ばれするのですよ。だから王家の人と顔馴染みなんですよ、わははは」
こいつ、絶対許さないからな。母様をコケにしたな、こいつ。やはりボロレス、お前も許すまじ!
「フォーゲリア伯爵様、いかがいたしますか?購入しますか?」
ギルド長が心配しているのがわかる。心配してくれてありがたいが買うよ。
「そうですね、私が所有するタウンハウスは郊外にあるのでなんとかこの子達のために王都にもタウンハウスを所有したいと思ったのです。長男と次男も働き出したので少しお金を出してくれると言ってくれたのです。これを機に王都にタウンハウスをと思い購入したいと思います」
父様演技上手いね。呼水となっているよ。ナイス!
「わはははは、フォーゲリア伯爵様は大変なのですね。わかりました、私が所有している土地を売りましょう。こんな小さな子が大変な思いをしていると思うとかわいそうになってくる。元王女様もさぞ苦労なされているのでしょう。うちもその土地を持っていても、全く金にならず、逆にマイナスになるので売却したかったのです。もう価値がなくなりましたので売りましょう。ただし、契約魔法で返却は不可としてください。あんなクズ土地を持っていても本当にマイナスだったので、要らなくなったと言っても自分達で所有してください。これが私からの契約魔法の条件です」
さぁ、僕の番だ!
「父様、王都に土地を買うのですね。やったぁ。おじさん、ありがとう。でも契約魔法って、破ってはいけないんだよね?」
「そうだよ、破ってはいけないんだよ」
「僕ね、怖いんだよ。いつも怖い魔獣や怖い人が来ているんだよ。だから契約魔法で、僕の家が所有する物は王家でも、貴族でも、おじさん達や、魔獣などいかなる者がイタズラや嫌がらせ、妨害をしない様に契約魔法をして欲しい。安心して寝たいんだ。お願い」
「そ、そうだな、弟よ、安心して寝たいよな」
と言って、抱きしめてくれた。しかしロナウド兄様、弟よってクサイセリフだよ。
「そうだ、君は今いくつなんだね」
「僕ですか?9歳です」
「9歳!6歳ぐらいではないのか?うちの孫は7歳だが、君より大きいよ」
単なるデブではないのか?お前も恰幅がいい腹をしているからな。
「そうなのですか?これでも大きくなった方です」
目の前にあったケーキを俺に渡してくれた。
「これでも食べなさい」
「おじさん、ありがとう。いいの?食べて?こんなケーキ食べたことがないよ。父様、兄様、甘そうですね」
目をキラキラさせてお礼を言ってみた。どうだ、可愛い、幼気な男の子だろう?
「いいんだよ、食べて大きくなりなさい」
「ありがとう、いただきます。あまーい(すぎる)」
甘すぎるよ!甘ければいいもんじゃない。
「そうだろう、甘いんだよ。こんな甘いの食べたことがないだろう?かわいそうになぁ。うちの孫は毎日食べているんだよ」
だから太るんだよ!
それから、契約魔法で、ガーゴイヤ商会や王家、いかなる者からフォーゲリア伯爵家で所有する物に対して嫌がらせや誹謗中傷などをしないと契約させた。ふっふっふっ。
多分教会が母様の今までの経緯を知っているから保護も兼ねてなのかもしれない。ありがたい。
「父様、安く買えたので、りんごを一つ買って欲しいです。買えますか?やったー、おじさん、りんごが買えるんだ。ありがとう」
ニコニコしてお礼を言った。ギルドのお姉さんが涙ぐんでいた。心が痛い。ごめんね。
「お前、本当に策士だな」
ボソリというロナウド兄様。頷いている父様。えー、悪は許すまじだよぉ。
数日後、フーリス商会をフォーゲリア商会に譲渡の契約をした。さぁ、これから改修工事だ。やるぞぉ!おー!
ボロレス公爵とガーゴイヤ商会の南地域は許さないからな。




