110 ボールドウエッジ公爵(ライアン様)視点
またもや忙しくなってきた。ケビンくん、君は!
ルークから家族で王都に行くために魔道列車の一室を貸して欲しいと言われ、どうしてなのか尋ねた時の理由というのがとんでもなかった。
「ライアン様、すみません。タウンハウスのご近所や商家から手紙が来るようになったのです。そしてタウンハウスの執事ビクティに確認したところ、またケビンがですね、タウンハウスに温泉施設、魔道具制作施設、庭園、鍛錬場を作ったと連絡が入りました。庭園には、その見事な花が咲き乱れ、その花束が欲しい、庭園を見たいと言ってくる人の手紙が多数あり、対応しに王都に行こうと思いました。そこでルーナが生まれましたのでタウンハウスで紹介をしようと一緒に行くことにしました。ケビン、あいつは何やっているのだ、はぁ。すみません、ライアン様取り乱しました。ライアン様どうかお願いします、魔道列車の一室をお貸しください」
けいばをや商会をするにあたって、魔道列車の一室を貸すことはこの前決めたことだからいいのだが、ケビンくん、何をやったのだ?また、ワクワクすることをしているのか?私も東地域に行くのに同行しようかな。楽しそうだ。しかし王都か、よし、私も行こう。領地はステファンに任せよう。
「ルーク、私も一緒に行こう。何が起こったのか寄親として見ておかないといけないからな。ステファンを呼べ」
ステファンが執務室に入ってきた。
「ステファン、すまない、これから王都に行かないといけない。領地のことを頼んだ」
「は?父上、いきなりどうしたのですか?まさか、またケビンくん案件ですか?いったい何をやったのですか?」
「いや、詳細は誰もわからないが庭園を作りその花が見事らしいということだけはわかる。ルークはその対応のため王都に行くが、私も寄親として同行した方が対処できると思ったのだよ」
「父上、単なる興味本位で行くのですね。顔が楽しそうですよ。はぁ、1週間後に母上が帰ってきます。帰ってきたら王都に母上を送り届けます。それまで父上までケビンくんと一緒に暴走をしないようにお願いしますね。それとも私が王都に行きますよ。父上は大人しく領地にいて母上と王都に来てください」
なんと、息子にケビンくんと同等に取られてしまったのか?確かにフォーゲリア前領主のロイド、スティングレイ前領主トーマスと一緒にヤンチャなことをしていたが、公爵家の当主になった後は落ち着いて、貫禄のある領主と自負していたが、息子目線はケビンくんと一緒?
「オホン、私が暴走するわけないだろう。それに私がいた方がすぐ采配できるだろう。先に私が行っているよ。キャロラインが帰ってきたら、王都に一緒に来て欲しい。ステファン頼んだぞ」
「はぁ、わかりました。くれぐれも一緒に暴走しないようにルーク様よろしくお願いします」
「いや、ケビンを制御できない私なのでライアン様は無理です。フレッド様に頼んでください」
「いや、フレッドも一緒に暴走するからダメです。父上、やはり私が行きますが?」
「だめだ、私が先に行く。ルーク、奥方と子供達はもうここにいるのか?それならすぐ行こう!」
「ち、父上、もう行くのですか?え?」
こうして私はルーク達家族と一緒に今から乗れる列車に乗り込んだ。
「ライアン様、良かったのですか?」
「なぁに、ステファンは一番公爵家で知的で計画性のある子だ。あいつに任せておけば大丈夫、あははは。さてさて、ケビンくんは何をやらかしたのだろうなぁ。楽しみだ」
「ライアン様、楽しんでおりますね」
「ルーク、お前も大変だろうがケビンくんを次期当主と考えているのだろう?イーサンは魔道具で頭角を現している。ロナウドもフレッドと一緒だ、あの子達は外に向かう子達だ。領地に根ざさない。ジュリアンくんはたぶん騎士か冒険者か?ケビンくんかルーナちゃんが当主か?」
「今のところ次期当主はたぶんケビンです。ルーナがやりたいならそれでもいいと思っています。ケビンは領主に固執しないですから。ケビンはジュリアンに領主をと考えていそうですが、ジュリアンは剣の道を進むのでしょう。どうなるのでしょうね」
多分誰もがケビンくんが次期領主と思っているのだろう。それはそれで楽しみだ。どんな領主になるのか。敷地内に魔道具施設があるからイーサンは領地に留まるかもしれない。多分みんなケビンくんを助けるために近くにいるだろう。いい家族だ。
王家というか国王陛下はメルシー様を表立っては認めていない。魔法第一主義者の宰相のせいで!他のご兄弟はメルシー様のことが心配で陰ながら手を貸していた。結婚後は手紙のやり取りを我が公爵経由でしているのでご兄弟、先王と王太后様とは会えなくても良好と言えるだろう。王妃様は国王陛下に強くはいえないだろうから、あの二人は同じ行動になってしまっている。王妃様も本当はメルシー様に手紙を出したいらしいがなかなかできないでいるみたいだ。
家族の仲を悪くしているのは、あいつだ!魔法属性絶対主義のあいつ。あいつさえいなければ、王家は家族仲良くできていたはずだ。ボロレスめ!
この前のケビンくんが文句言ってやるとかなり怒って言っていたことを思い出し、笑ってしまった。あの子ならできるかもしれないな。
さぁ、王都についた。このままフォーゲリア家のタウンハウスへ行こう。
公爵家の馬車に乗り、王都から少し離れたところにフォーゲリア家のタウンハウスがある。だんだん近づいてきているが、ん?なんだかすごい人だかりだな。どうしたのだ?
「ライアン様、フォーゲリア家を民衆が集まっています。民衆に道を上るように行って参ります。少しお待ちください」
は?フォーゲリア家に民衆が集まっている?なぜだ?ルークを見ても首を振るだけだ。
馬車がフォーゲリア家の近くにきてびっくりした。なんだ、この花は?庭園?は?なんとも可愛らしい樹木。何かの動物か?ドラゴンの木?は?そしてガゼボの周りに美しい花々。
ルークがすごい勢いで外を見ている。
「これ?うちのタウンハウスか?」
わかるぞ、どこぞの貴族の家なんだ、これは。しかし、門を入り、なんだ、この花壇は、ようこそとかいてある花壇だが絵が描かれてあるのか?なんの絵だ?くちばしが黄色いからアヒルか?アヒルに大きな目?独創性ある絵であることはまちがいないか。屋敷に近づくにつれなんともチグハグな古い屋敷の周りを新しい施設が三つ。
「うちの屋敷ですね。間違いないが、隣は温泉施設か?あっちは魔道具施設か?騎士宿舎か?あいつめ、やらかしやがったな。うちの屋敷が一番ボロく感じるではないか!」
ルークとは対照的にメルシー様は嬉しそうに庭園を見ている。
本当にケビンくん、君って子は。
フレッドが玄関前で待っていた。
「父上、こちらに先に行くと聞きましたので、こちらで待っておりました。しかし、すごいですね、これは」
フレッドも呆れ返っておる。知らなかったのか。てっきり一緒にやっているのかと思っておった。
「フレッド、お前が一緒じゃなかったのか?」
「いえ、私は公爵家のタウンハウスでけいばと商会の話があったので、こちらに来なかったです。失敗しました、一緒にいれば良かったと後悔しましたよ」
さて、ケビンくんの話を聞こうではないか!ワクワクするな。




