108 父様来たる2〜母様、ジュリ、ルーナもいるよ
タウンハウスのお風呂、庭園を作り終わり、数日経った僕はガゼボでまったりとお菓子と紅茶を飲んでいた。兄様達はそれぞれ王都で商会立ち上げや魔道具施設の従業員の勧誘に行っている。優秀な人が別の職業に就いているので話を聞きに行っているみたいだ。帰ってきたら王都観光に連れて行ってくれる約束をしているので楽しみだな。
ルガリオ、ルッツ達は庭園と噴水で遊んでいる。ルガリオ達のおかげで木々花々が美しく咲いている優雅な気持ちだ。そう、咲いているんだよ。深くは追求はしないぜ!バラの時期ではないと思うのだがバラが咲き乱れている。というかこの世界にバラはないことがわかった。まぁ、母様の種から作ったバラだ。あー、幸せだなぁ。
バラの花があるので、イーサン兄様にフレグランスを抽出できる魔道具をお願いしている。これは蒸留装置と同じだから簡単にできると思っている。
蒸留装置の魔道具を作る条件は魔導施設をここにも作るということだ。ここの敷地は広いので魔道具施設をすでに作ってしまった。だからイーサン兄様は勧誘に行っているのだ。
そしてどうしてか、どうしてなのか父様、母様、ジュリ、ルーナが王都に向かっている話を朝食の時に聞いた。公爵様と一緒に向かっている?なぜだ?
あー、父様の声が聞こえるようだ。空耳だろう。
「ケビン、なぜこうなったー!」
遠くから雄叫びが聞こえてきたぞ。おおー、父様がいる。あー、母様がいる。
僕は母様のところに走って抱きついた。そして母様を見上げて想いを伝えた。
「母様。どうですか?この庭園。母様を思って作りました」
「まぁまぁ、ケビン。この子は。私のためにこんな美しい庭園を作ったの?びっくりしたわよ。ここ、うちのタウンハウスかしら?って思ってしまったわよ。門を入るところから、風景が違うのですもの。びっくりしましたわ。ケビン、ありがとう」
母様は僕を抱きあげ、ぎゅっと抱きしめてくれた。安心できる場所。余韻に浸ってあるのに、後ろから父様の声が聞こえるがスルーしよう。
「ケビン、ケビン、お前」
後ろからこめかみをグリグリされた。うわー、イタタタっ。
「父様痛いです。何するのですか!」
「お前が父様の話を聞かないからだろう。で、これはどうした。どうしてこうなった?全く違う、あっいや、家の外見は変わらないが、庭、室内、風呂、鍛錬場全てがすごいのだが?何か言いたいことはあるか?」
「えーと、殺風景だったので、母様とルーナとジュリが喜ぶものが作りたくて、えーと、こうなってしまいました。ルーナがよちよち歩きをするための芝生を植え、ジュリが鍛錬できるように鍛錬場(領地にはないトレーニングジムのようなもの)、そして王都で嫌な思いしかしていない母様の記憶をこの花々で癒そうと思い作りました。王都に来ることが楽しみなように作りました」
ドヤ顔で説明した。
「くくくくっ、相変わらずすごいな、ケビンくんは」
えっ、公爵様。なぜこちらに?あっフレッド様、アンジュ様もいる。アンジュ様は薔薇をうっとりと見ていた。綺麗だよね。
「ケビン、ホントに相変わらずだな。数日会っていないだけでこれだけのことをしているのか?」
「ケビンちゃん、この庭園はすごいわね。領地の庭園より花の数が違うわ。ガゼボ?はこのぐらいの大きさでいいと思うわ。ああ、それにしてもいい香りだわ。癒されるわ」
アンジュ様の背景にバラがある感じ。お似合いです。
「庭師のガーブスが手伝ってくれたんだよ。母様、見てください、樹木で形を作ったのです。可愛いですが?」
「まあ、動物の形?にしたのね。可愛いわね。木を捻ったようにしたの?木の形を変えると芸術になるわね。そしてあの時作ってと言っていた花ね。こんなに綺麗になるのね。領地は丸や三角だから形取った樹木もいいわね。でもドラゴンはやめて!」
「かっこいいと思ったのですが、ダメですか?」
実はドラゴンではない。某モンスターボールのリザー◯ンだ。小さいのはネズミ、カメ、火のやつも並べてある。傑作だと自負しているのだが。
ドラゴンもどきを見ていたジュリが大喜びをしている。
「にぃに、ドラゴンさん。ドラゴンさんかっこいい」
ジュリはやっぱり男の子だなぁ。ゆくゆくはドラゴンズレイヤーになってくれ。いや、だめだ、領主になってくれ、頼む。
「母様に、門を入ってからの花壇を見てくださいましたか?花でお出迎えという感じにしました」
花壇に花文字を書いた。ようこそ、わが家へってね。
「ケビン、面白いお出迎えの仕方ね。花も美しいわ」
「母様、あの花を使ってフレグランス、香水や化粧水を作ろうと思うのです。装置をイーサン兄様に作ってもらうようにお願いしてあります」
「まぁ、このお花、香りがとてもいいわ。そうね、このお花の香水を作りましょう。楽しみだわね」
母様が喜んでくれた。王都は母様とっていい思い出がないと言っていたのでこの屋敷にいる時、払拭できればと思う。やっぱり僕がガツンと嫌味を言いたい。言っていいだろうか?不敬かな。いつかは言ってやる、機会があれば。
それからみんなでガゼボでまったりとお茶をした。父様も落ち着いたかな。ルーナ用にベビーカーを作ってあるのでマジックバッグから出し、そこに寝かせた。寒くならないように辺境伯のヒツジーゼで作った軽くて暖かいショールをかけた。
「これはまたすごい赤ちゃん用のベッドか?車輪がついていると言うことはこれで移動できるのか。すごい」
「フレッド様、赤ちゃんのベビーカーと言います。このまま散歩にも行けるので、赤ちゃんの気分転換にもなると思ったのです。ここの足と腰のところに落下防止ベルトを閉めてください。横着してはいけません。赤ちゃんの安全第一に考えないとダメです」
「よく考えられている構造だね。ふーん、それも商会で売るの?」
「いえ、別に考えてないです。ルーナが快適に過ごせればそれでいいので」
考え込んでしまったフレッド様。商会をロナウド兄様とフレッド様がメインで立ち回るので、別にどっちでもいいのだ。みんな無理は禁物だよ。
「そういえば、父様、なんで王都に来たのですか?」
「お前が色々やらかすからだろう。すでに、ここのご近所からどうなっているのだ?庭を拝見したいと言った商家や貴族から連絡が入っているのだ。花を売ってもらえないだろうか、と言ってくる者もいる。はじめ手紙が来た時に何を言っているのだ?と思ったんだよ。至急ビクティに連絡し、ことの次第を知った。ケビン、報告相談がないだろう!」
あっ、これも相談案件だった?
「領地だけ相談ではないのですね」
父様が頭グリグリ攻撃をしてくる。痛いぞ。
「な、ん、ど、言ったらわかるのだ。辺境伯殿のところでもやらかして、父様が早馬で直行しただろう!何?忘れたのか?ん?忘れたのか?」
「わすれていまー、した。すみません」
父様と僕のやりとりはいつものことだが、それを見ている公爵様とフレッド様は考え込んでいるのはなんだろう?これ以上面倒ごとを増やさないでね。お前が言うなー、と脳内ボケツッコミを展開していた僕であった。




