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102 ステファン様とけいばについて話し合い1

 僕は今、公爵様、ステファン様の前に座っている。僕の両左右は父様とフレッド様、兄様達そしてお祖父様もいる。応接室でも高級なソファだったが、この執務室はソファはもっとフカフカなのだ。そこで、ケーキと紅茶を出されている俺。こぼさないように食べないといけないミッションだが、ソファがフカフカ、足が届いていない状況で体勢が不安定なんだよ。食べたいのに食べられない。絶対後ろにひっくり返る予感しかない。そうなると紅茶まみれ、ケーキまみれになるおれとソファの未来。このソファはおいくら?


 うーんと悩んでいるとすかさず、父様がお膝に座らせてくれた。さすが父様。


「ふかふかで安定しないから食べられないだろ。うちのソファはこんなフカフカじゃないからな。父様のところで食べられるか?」


「うん、父様ありがとう。こぼさずに食べられそうだよ。ケーキがおいしそうだったのでどうしようか迷ってました。ありがとうございます」


 ほのぼの親子の会話。これで安定して食べられるが、父様の膝の上での話し合いには不向きだ。公爵様達を待たせてはいけないので早く食べて、話をしなければ。


「ケビンくん、すまない、配慮が足りなかったよ。このケーキは昨日料理教室でふわふわになる方法で教わったケーキだ。女性陣が感動しておったよ。ゆっくり食べて大丈夫だから、私達も味わって食べようではないか」


 みんなスポンジとホイップの柔らかさに驚いていた。うまうまだ。公爵家の料理人も優秀なんだ。うちの料理人達も優秀だけどね。料理のレベルが上がっていけば美味しい料理がどこでも食べられていいよね。目指せジャパン化。早く海に行きたいよ。


 魚介が食べたい。いつでも食べられるよう販路開拓を目指したいのだ。


 はっ!今は競馬のことだ。お馬さんかぁ。僕はオグリの緑色のメンコを被ったぬいぐるみを持っていた。マスコットやゆるキャラを作っていたから、あんな感じでマスコットを作れば売れるか?それとも"娘"化?この世界ではそれは無理だな。当たり前だけど。ただ考えただけだからね。


「ケビンくん、昨日の料理教室で、留守居の奥方達や屋敷の者達用にお土産を渡していたではないか。その時のマジックバッグのことなんだが、あんなに何であるのだ?うちに返す様にと言っていたが、あれを回収してフレッド経由で返却すればいいのか?そう言えばフレッド、お前も腰につけていたな?」


「ああ、父上、これは従業員特典です」

 フレッド様が普通に答えていた。フォーゲリア領地内は当たり前になってしまっているが、他から見れば驚きだよね?そういえば。


「は?また従業員特典?一体いくつ従業員特典があるのだ。フレッド」


「色々ありますね、従業員特典。あははは。見せたほうがいいですか?」

 

 フレッド様は父様に目と目で確認していた。目と目で何が分かるのだ?僕は見ていてもわからなかったぞ。


 マジックバッグからアイマスク、寝袋、快適綿のテント、自転車、時計、ドライヤー、魔道ランプ、魔道コンロ、扇風機、保冷用タンブラー、リバーシ、将棋、チェスを次々に出していく。最後は酒の大樽を4樽。酒をそんなに入れていたの?


「こんなに従業員特典って、すごくないか?しかも全く見たことがないものまである。フレッド、その樽は酒ではないか、持っているのになぜここで出さない」


「えっ、嫌ですよ。これは私の酒ですから。持っているのが分かれば絶対出せと言うでしょう?だから言わなかったのです。でも渡しませんよ」


「良いではないか、1樽ぐらい」


「父上、これ全部味が違うので1樽を渡すわけにはいきません」


「こんな大きな樽なら少しぐらいくれてもよかろう。まったくケチじゃな」

 

 親子喧嘩が始まってしまった。


「父上、フレッド、喧嘩はやめなさい。話が進まないではないか。フレッド、その従業員特典の品々はすごいな。イーサン、ロナウド、フレッドこれらすべてを売る気なのか?」


 ステファン様も興味津々だった。見たことものばかりだよね。


 ロナウド兄様が代表して説明した。


「これらは今は売り出しません。まずは魔道ランプとドライヤー、リバーシ、将棋を売ります。それから今出されてはいないオルゴール、そして農作業用工具を売ります。我々は農耕機を開発しましたので、それを使用し平民でも楽に農作業が出来る工具を売ります」


「それは今ないのかね」


 公爵様が農耕機に興味を示した。農耕機を使用すれば、平民たちの労力軽減になるとともに収穫率UPに繋がる。


「持ってきてはいないです。すみません」


 なんだか脱線話が多いぞ。僕は話の修正をしちゃうよ。


「ステファン様、あの話が脱線しているので競馬の話をしましょう」


「ああ、そうだな、その話はまた今度、聞かせてもらおう。良いですね、父上」


「そうだったな、すまんすまん。脱線してしまった。ではけいばの話をしようではないか。まずケビンくん、そもそもけいばとは何だね?」


「けいばとは騎手が馬に乗り決められたコースを走り競わせて、着順を観衆に賭けてもらうのです。賭け事ですね。ただそれはあくまで口実で馬の品評会を兼ねています。パドック、競馬の前に馬を見てもらう場所です。そこは競走馬の体調を知るために重要な場所です。馬体の太さや筋肉の張り、毛艶などをチェックすると、馬のコンディションを把握できるのです。あの少しお待ちください」


 僕はマジックバッグから木材を取り出し、某競馬場を作ってみた。ただトラックを回るのは大変なので一直線のコースも作った。どちらを走るかは後で考えればいい。


「こんな感じで、ここのコースを馬が走ります。もちろん騎乗する人のテクニックも必要です。そして着順を賭けるのです」


 みんな俺が作った模型を繁々とみている。


「なるほど、観客席を設けて、コースを走るのか。まずは寄子の馬同士を競わせてもいいな。あとは周辺で走らせたいという領主がいたら考えるか。馬好きの者達が見にくる可能性があるのか?はじめは他の領地から来る人は予約制にしないといけないな。そんなに人が来るわけではないが寄子の滞在先を考えないといけない。ふむ、ステファン、まずは競馬場をどこにするかだな。厩舎近くがいいだろう。あと乗り手の練習だが、騎士達の中で馬の扱いに長けた者を選別しよう」


 あれ?もうやる方向で進めるの?今話したばかりだけど。


「どうした、ケビンくん?」


「ライアン様。今、話したばかりですが、もうやることが決定ですか?」


「半年後を目処に開催しようと思う。その間に馬の選考や乗り手の練習、施設の建築、周辺の開拓をしていこうと思っている」


「もうそこまで考えているのですか?早い」


「ルーク、もう少しケビンくんの意見を聞きたいのだがいいか?」


「え?ライアン様、あのですね、ケビンが考えることは大事になるのでお勧めしないです」


 父様、ひどい。お勧めしないって。競馬をやるなら利益になることを考えないとダメじゃないかぁ。


「あははは、お勧めしないのか。ケビンくん、今回のはどんな大事になるのだろうなぁ」


「いえ、ただ馬を走らせて、賭けをすればいいので大したことにはならないと思います」


「ケビンくんが考えるとしたらどうするのだ?」


「僕ですか?施設は今作ったものです。宿泊施設は買い付けに来た人専用施設を付近に、観客なら、街の宿泊施設に滞在させます。高位貴族なら送迎馬車を出し、平民なら乗合馬車を運行させます。初回に限り、来場者みんなに馬のマスコットをプレゼントします。持っている人は次回来ても初回から来た人だとわかるのでデザート券など渡せばいいかなぁ。馬好きの人は会員になれば馬の蹄のバッジが支給されます。そうすれば会員専用出入り口と屋根付きのふかふかの椅子で観戦できるとかですかねぁ。会員制スペースには飲み物や食事が用意されているとかですか?」


 みんな言葉を失っている。おかしなことは言っていないよね?


 

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