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第1章 第5話「圧政の町」

「ふわぁ、よく寝た…………」


ファインは欠伸をすると、大きく伸びをする。


「やっと起きたか、この寝ぼすけめ」


マクスが、じとっとした目でファインを睨む。


「仕方ないだろ~。色々あって眠かったんだから」


「何言ってやがる。レインシアはとっくに起きて準備済ませてるぞ」


「え、マジ?」


「マジだよ。ほら、早く起きて飯食っちまえ。今日は一気に次の町まで行くぞ」


普段なら文句の一つも言うところだが、逃亡中であるのと、レインシアにだらしないところは見せられないという気持ちからか、ファインは素直に飛び起きて支度を始めた。


「あの、マクスさん」


「ん、何だ?」


「次はどこへ行くんです?」


「この近くにジルヴェリストって町があってな。そこに俺の知り合いが住んでんだ。とりあえずそこへ行ってみようと思っている」


「ちょっと、殿下を他人に会わせるつもり!? 僕達は逃亡中なんだよ?」


「信頼できる奴だ。別に問題はねえ」


「本当かな…………」


「うっせえな。口よりも手を動かせ。待っている俺やレインシアの身にもなってみろ」


「はいはい………」


やがてファインの準備も終わり、一行は出発した。


白昼堂々と襲ってくる盗賊をマクスが軽々と撃退しつつ、幾つかの平野を越え、一行が目的の町に着いた時には既に刻限は昼に差し掛かっていた。


「さて、あいつに会いに行く前に宿をとっておくか。行くぞ」


宿へ向かい、部屋に荷物を運び込むと、一行は宿の外へ出る。すると………。


「? どうしたんだろう?」


何やら町が騒がしい。人が次々と、どこかへ忙しなく駆けていく。


「何かあったんでしょうか?」


「…………よし、ちょっと様子を見に行ってみるか」


マクスの言葉に、二人とも頷いた。


人だかりは、町の広場に出来ていた。

輪の中心を覗いてみると、そこには………。


「これより、この町の規律を犯せし罪人に処罰を下す!」


「な、何だって!?」


後ろでファインがそう言うのが聞こえる。


「何を驚いている?」


「だって、こんな街中で堂々と刑の執行だなんて………」


「別に驚くほどの話でもねえだろ。最近は人権問題もとり立たされてこんなことするような町も減ったが、昔はよくこうやって、白昼堂々行われたもんだ。見せしめの意味を込めて、な」


「酷いです………」


裁判官らしき男が、磔にされた男の前に移動し、つらつらと罪状を読み上げる。


「汝、レメド=イオタレダは、本町戒律第8条、“執政長官の許可なくばいかなる漁業、農耕、商業を行うべからず”に抵触した。よってここに、死刑を宣告する!」


「そんな馬鹿な!」


ファインが、相手に聞こえない程度の声量で非難する。その顔には、明らかな怒りの色が浮かんでいた。


「あんなの理不尽過ぎじゃないか! 漁業や農耕、商業にまで許可が必要なんて。しかもそれで死刑だって!?」


「止めましょう!」


「止めておけ」


「何でさ! あの人見殺しにしろって言うの? マクスはあれが酷いと思わないわけ!?」


「落ち着け。お前達じゃ無理だと言いたいだけだ。……………俺が行く」


そう言って、前に出ようとするマクス。だが…………。


「な、何だお前は!?」


人だかりを作っている人々がどよめく。


何事だ、とマクス達は輪の中心に視線を戻す。そこには、予想だにしない光景が広がっていた。

一つの影が躍り出て、ナイフで磔にされた男の拘束を解き、素手で、周囲に陣取っている兵士達を蹴散らしていく。その動きは、流れる風のように鮮やかなものだった。顔には仮面を付けており、顔は確認できない。


「す、凄い………」


「ふぅむ……………」


ファインが息を呑む横で、マクスは何やら考え込むように腕を組んだ。


やがて兵士達は全員乱入者に難なく蹴倒され、裁判官の男はいつの間にか姿を消していた。息を吹き返したように磔にされていた男は我に返り、立ち上がると群衆の中から女性と子供が二人、男に駆け寄り抱きついた。どうやら男の家族らしい。マクス達のいるところまでは声が届かないが、泣いて喜んでいるのが見える。


「よかったです…………」


「ほんと。………どうしたのさ、マクス。難しい顔しちゃって。嬉しくないの?」


「あ? いや………」


「…………ははぁ、なるほどねぇ」


ファインがにやにやしながらマクスを見つめる。


「何だ?」


「マクス、自分の出番取られちゃっていじけてるんだ。へぇ、なかなか可愛いとこあるじゃ…っていだだだだだだだだだだだだだ!!」


マクスに頬を思いっきり抓られ、ファインは絶叫した。


「そんなわけあるか。そうじゃなくて、あいつのあの身のこなし、どこかで見たことあるような…………」


「そうなんですか?」


「ま、マクスって結構危ないことに首突っ込んでそうだもんね、きっと危ない知り合いの一人や二人…ってあいだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!!」


マクスに頭を拳でぐりぐりとされて、再びファインは絶叫する。マクスは本当に容赦がなかった。


「ま、それは今はどうでもいい。今は奴に会うことが先決だ。この町で何が起こってんのか、詳しく訊けるかもしれねえしな」


「そうですね、行ってみましょう」


マクスがずんずんと先頭に立って先に進み、その後ろをとことことレインシアがついていく。


「ひ、酷いよ………。殿下まで、何でスルーするんですか…………」


ズキズキ痛む頭を擦り、とぼとぼとファインは彼らの後を追った。


















一行は、少し古ぼけた木造の家の前まで来ていた。町の隅に位置し、普通の民家であるはずなのに、まるで秘密基地のような不思議な雰囲気を醸し出している。


「ここなんだね…………。覚悟決めとかないと」


「てめえ、まだそんなこと言ってんのかよ………。大丈夫、あいつはまともだよ。………たぶん」


「最後の推量の単語が思いっきり不安感を煽るんだけど!?」


「まあ俺基準での普通だからな。お前達にしてみれば少々異端かもしれないな」


「やっぱり…………」


がっくりと頭を垂れるファイン。


「いつまでやってんだ、行くぞ」


マクスは不安一杯の表情をしているファインを横目に、ドアを軽くノックする。


「は~い、どちら様?」


陽気な女性の声が返ってくる。


「俺だ」


「………あれ、その声…………」


次の瞬間、バタンと勢いよく扉が開け放たれ、中から一人の女性が飛び出してきて、マクスの首に飛びついた。


「ぐふっ!」


首にタックルの衝撃を受けて、マクスが呻く。


「やっぱりぃ~! マクスじゃん! え? 何? どしたの?」


「………………お前が何だ」


「や~ね、ちょっとしたスキンシップじゃん」


笑顔で言い放つ女性の様子とは対照的に、マクスは鬱陶しそうに額に手を当てて溜め息をつく。さっぱりとした明るい赤の短髪にカチューシャを付けた女性で、少々童顔だが、豊かな胸の膨らみや雰囲気などから大人っぽさが滲み出ている。服装も、ノースリーブのシャツと上着にミニスカートという、活発なものだった。


「あの…………」


このままだと話が進みそうがないので、レインシアが恐る恐る話しかける。


「ん? あんたら誰?」


「あんたこそ誰さ! マクス、この人がマクスが言ってた人?」


「…………残念ながらな」


女性の拘束を無理矢理解き、不満そうに唇を尖らせる女性を無視して、マクスは服の乱れを整える。


「紹介する。こいつはリュネ・バルカートン。帝都にも行かずこんなとこで万屋やってる変わり者だ」


「何よー、変わり者はお互い様じゃん」


「やかましい。………そんなことより、話は中でだ。いいな?」


「OK♪」


マクスとリュネは、当然のようにさっさと家の中に入っていく。


「…………案外普通でしたね」


「は、はい」


残されたレインシアとファインは、少しの間呆然としたまま固まっていた。

















「ふ~ん、あんた、また大変なことに巻き込まれたもんねぇ」


マクスの古い友人だというリュネは、レインシアとファインの想像どおり肝の据わった女性であった。今、マクスが大雑把ではあるがことの顛末を話したところなのだが、全くうろたえることなくこの調子である。


「全くだ。ま、だがこれで俺の目的を果たす大きな一歩になるはずだからな。我慢してやろうじゃねえか」


「で、あたしに何の用? 用があるからわざわざ来たんでしょ?」


「一つ目、俺達に協力しろ。こいつはこの国の帝位後継者だ。上手くいけば、お前も損にはならんだろう」


「そうね、確かに悪い話じゃないかも。いいわ、協力してあげる」


「ありがとうございます、リュネさん」


礼儀正しく、レインシアはぺこりと頭を下げる。


「その代わり、恩赦は弾んでもらうからね」


「二つ目。この町で今何が起きてる? さっき広場を見てきたが、あれは“今の時代じゃ”異常だろ」


「あれはこの町の執政長官の仕業よ。あいつ、帝都の目が届かないのをいいことにやりたい放題やってるの。ま、所謂独裁者ってやつよ。でも、そんなこと聞いてどうするつもり? お姫様の件とは全く関係ないじゃない?」


「…………生憎そうとも言えなくてな。さっき磔にされてた奴助けたの、お前だろ?」


「あら、やっぱりばれてた?」


結構上手くやったと思ったんだけど、とリュネは笑った。


「隠そうともしないんだな」


「そりゃ、事実だし。でもさすがマクスね。こんなあっさり見破るなんて」


「当たり前だ、何年付き合ってると思ってる? まああれだ、お前がこのままこの件に関わってるようならお前を連れて行くわけにいかねえからな。下手にほったらかしにして、こっちの仕事に横槍入れられても面倒だ」


「そうね。………じゃ、手伝ってくれる?」


「ああ。お前ら、それでいいな?」


マクスが訊くと、二人とも頷いた。


「はい。私は元々、そうお願いするつもりでいましたから。ありがとうございます」


「僕もいいよ。このままこの町素通りしたら、後味悪そうだ」


「よし、決まりだな。執政長官の野郎とっ捕まえて憲兵に突き出してやろうぜ」


三人は、無言で頷いた。


「さて、んじゃ、いろいろと準備始めますか! マクス、手伝って」


「ふざけんな、自分でやれ」


「ええ~、いいじゃない、手伝ってよ~」


「ええい、鬱陶しい!」


じゃれ付いてくるリュネを払いのけ、マクスは外に出て行った。


「もう、相変わらずつれないわね」


そう言いながら、リュネもまた準備のために作業に移る。


「あ、私手伝います」


「ん、ありがと」


「ちょ、殿下! 殿下は休んでいてください!」


レインシアを止めようとするファイン。しかし、レインシアは聞かなかった。


「やらせて下さい、ファイン。私も、何か私に出来ることをしたいのです」


「…………解りました。でも、無理はしないでくださいね。僕は町に出てますから」


「はい。ありがとう」


レインシアは、優しく微笑んだ。


神崎「神崎はやてのぉ~!」


一同「神の黄昏、in SPIRITUAL ARMS!」


神崎「さあ、今回もやってまいりました、神の黄昏! 司会は私、神崎はやてと!」


マクス「マクス=トレンジアでお送りするぜ。作者、今回は随分と更新が遅れたな。どうかしたのかよ」


神崎「ああ、ディケイドの更新とか勉強とかいろいろあってね」


マクス「ふん、そうか。………なんか今回はまた人数が増えてやがるが」


神崎「はい、今回は、レインシア、ファインに加え、今回の新キャラ、リュネさんにお越しいただいております!」


リュネ「こんちは~! リュネで~す!」


マクス「…………はあ」


ファイン「どうしたのさ、マクス?」


マクス「………いや、五月蝿い奴が来たもんだと思ってな。んで? 今回はこの面子でトークか?」


神崎「そうです」


マクス「はぁ…………」


リュネ「何よ、元気ないわねえ。もっとしゃきっとしたら?」


マクス「原因の大半であるやつが言うな」


リュネ「何よ~、つれないわね。昔組んだ仲じゃない」


ファイン「そういえば、二人とも昔からの知り合いなんだよね。どんなだったの?」


神崎「それは…………」


リュネ「作者さん?」


神崎「は、はい!?」


マクス「それ以上言ったら………向こうの物陰で個人的に『お話』させていただくことになるが………それでも構わんなら言うがいい」


神崎「は、はい………(恐っ!)」


ファイン「(昔一体何やってたんだよ!?)ええ~と、そろそろ時間みたいだね」


レインシア「そうですね」


リュネ「どたばたしちゃったけど、これからも私達の活躍をよろしくね!」


マクス「それでは、次回に続くぜ!」


次回はいよいよ裏話が!? 次回に続く!

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