表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/32

第2章 第1話「抗う者達 ―前編―」

「ねえ………マクス?」


「何だ?」


そこは、とあるのどかな峠道。


帝都を出、双子要塞を抜けたマクス達一行は、港へと向かう道の途中、峠で球形を休憩をとっていた。


今3人は、出掛けに店で買ったハンバーガーを仲良く並んで頬張っている。


ちなみにファインが齧っているものとフィーネがちびちびと口に運んでいるものは、2つとも同じ普通のハンバーガーだが、マクスが大口を開けているのは彼が将軍の権力をちらつかせて特注した、特大サイズの甘口バーガーである。


思い切り職権乱用だが、まあ、その辺りマクスらしいと言えるだろう。


そのハンバーガーを手に、ファインはマクスに訊ねた。


「あの悪魔の情報だと、レントールにマクスを元に戻す手がかりがあるんだよね?」


「そう言っていたな。まあ、あの辺りはサコクとかいう特殊な外交政策を打ち出してる国だ。何か秘密があってもおかしくはない」


東の大国、レントール。


島国で国土面積こそグランヴァールに劣るが、独特の気風と文化で他国の侵入を寄せ付けず、それ故数百年にも渡って独自の文化を築き上げてきた国家である。


鎖国と呼ばれる体制を敷き、一部の例外を除く数多くの他国との外交を絶っている、珍しい国でもあった。


そのレントールへ、船で繰り出そうというのだが―――――。


「大丈夫かな。レントールに行く船なんて、滅多に出ないんじゃない?」


実は、その鎖国体制こそが一番の難関である。


他国との外交を絶つ、即ち他国の船がレントールへ寄港することも極めて稀なのだ。

強引に侵入しようとすれば外交問題、下手をすれば小競り合いに発展する危険もある。


ファインが心配しているのは、きっとそのことだろう。


「まあ、アテが全くないわけじゃねえよ。その辺はてめえが心配することじゃねえ」


「ああ、そう? それならいいんだけどさ」


言いながら大きくハンバーガーへかぶりつくマクスに、ファインは納得したように笑って、こちらもハンバーガーに大きく齧りつく。


「………どうでもいいがお前、最近俺の言うこと成すこと皆、疑おうともしねえな」


「そりゃ、マクスだし」


当然のように言い放つファインの隣ではフィーネが、うんうんと、声には出さずともはっきりと頷く。


ファインの台詞は全く答になっていないが、その一方で妙な説得力を持っていた。


「…………そうか」


ので、マクスもそれには呆然と返事を返すしかない。


よくもまあ、これだけの信頼を集めたものだと自分でも思う。


この少年達の頭からは、自分が元々他国の人間であることがすっぽりと抜け落ちているのではないかとすら思い至った。


「まあ、そういうことならいいが…………とりあえず」


「? とりあえず?」


さっさと、まだ多く残っていたハンバーガーを口に押し込むようにして平らげ、立ち上がるマクスをファインはきょとんを見上げる。


そして、後頭部に何やら物が当たっているのを感じ取り、それについて訊ねる間もなく―――――。


「とりあえず、伏せとけ」


「えっ………ぎゃんっ!?」


奇妙な声を上げ、他ならぬマクスの手によって思いっきり地面へ顔を叩きつけられた。


その隣では、フィーネが既に自分の意思で、身体を低く構えている。


そして―――――。


「何者だ、お前?」


キィン、という、金属同士がぶつかり合う独特の音すらファインには認識できなかった。


気付けば、マクスの手に押さえつけられながらも僅かに回転させた顔から、マクスの愛剣ヴァイステインと、何者かの剣とが鍔迫り合っているのは目視できた。


「くっ…………!」


その何者かが、舌打ちしながら跳び退っていくのが、音と地面の振動から理解できた。


そうして漸くマクスが手を離してくれたおかげで地面に頬ずりする状態からなんとか抜け出したファインは、ホルスターから銃を引き抜きながら振り返った。


「何々、夜盗か何か!?」


「バーカ、夜盗は夜に出るもんだ。まあ…………」


ファインに軽口を叩きながら、マクスはヴァイステインを振り―――――再び肉迫し振りかぶっていた敵を迎撃した。


再び剣と剣がぶつかり合い、ギリギリと耳障りな音を立てた。


「てめえ………何者だ?」


ぎろり、と剣越しに睨みつけながら、マクスは敵の姿を観察する。

顔は仮面でまるごと覆っていて素顔は解らないが、ヴァイステインと鍔迫り合いになっている短剣は、裏の仕事を生業とする暗殺者(アサシン)が好んで使用するダガーである。


それらの特徴からマクスが導き出した答えは、暗殺者。


自分達の内誰を狙っているのかは解らないが、幸先の悪い旅の始まりに思わず溜め息が出そうになった。


マクスの問いに暗殺者は返事を返すことはなく、その代わりとばかりに短剣を振り回す。


剣筋は洗練された暗殺者のそれだが、その尽くはマクスのヴァイステインに防がれ、一撃とて、掠ることすら許されない。


やがて疲弊したか、暗殺者は再度距離をとった。


「目的は何だ? ま、大方金か。はたまた将軍やってる俺かフィーネの命、ってのが一番しっくり来る解答だが………」


言いながら、マクスは剣の切っ先を暗殺者へ向け挑発する。


「ま。どちらにせよ、ただで返す気はねえがなっ!」


マクスが言うと同時に、再度突撃をかける暗殺者。


「はっ。アサシンが馬鹿正直に正面ばかりとは、芸がねえなっ!」


ヴァイステインを余裕たっぷりに振る。

剣の軌跡は、真っ直ぐに暗殺者の影を斬り裂く―――――はずだった。


だが実際には、銀の光沢はその残像を斬り裂いたのみであり、暗殺者自身の姿はそのまま掻き消えた。


「…………前言撤回、なかなかいい腕をしてるな。だが………」


剣に手ごたえが伝わってこないのを理解し、マクスの顔がニヤリと歪む。


そして、そのままその剣を頭上へ移動させ―――――。


「俺には、及ばねえ」


今まさに脳天をかち割ろうと振り下ろされようとしていたダガーを、弾き飛ばした。


「なっ!?」


この時初めて、暗殺者は驚きの声を上げる。


だが、呆けている暇はない。

元々、マクスを相手にした時点で自らの敗北が知らぬ内に決定していたとしても、絶え間なく思考を巡らせて、次の手を考えなければ。


だが、暗殺者はその時点で思考をやめてしまった。

止まってしまった身体へと、マクスは驚異的な身のこなしで180°回転して向き直ると、仮面の着いた顔へ掌底を叩き込み、地面へ組み伏せる。


「がっ…………」


「戦士が戦いの途中で思考を放棄するな。そこで終いだぞ」


そう冷徹に見下ろすマクスの下で、暗殺者はじたばたと抵抗するが、そもそも力が違いすぎる。


神獣の血を飲み、神の使者としての力を我が物にしたマクスにとって、人間の力など取るに足らぬもの。


ディヴァイライトの加護でもない限り、彼の力を常人が撥ね退けることは不可能であろう。


暗殺者もじたばたしていたのは最初だけで、すぐに振りほどけないのを理解したか、動くのを止めた。


「潔いな。それでこそ影の隠者とも呼べる存在だ。………さて。面を拝ませてもらうとするか……」


そう言って、マクスは馬乗りになったまま、暗殺者の仮面を剥ぎ取った。


「くっ………」


「あ…………」


暗殺者が悔しげな声を上げるのと、素顔を目の当たりにしたファインが間の抜けた声を上げるのは、ほぼ同時だった。


暗殺者は、女だった。


藍色がかった黒く長い髪は後ろで結わえられており、どことなくこの国には珍しい気風を漂わせている。


そういえば、この暗殺者の女が着ている衣装も、この国の暗殺者が着用する隠密服にどことなく似てはいるが、ところどころに異色な造形を伺うことが出来た。


「てめえ、この国の出身じゃねえな。遠路はるばる外国から来たってことは、密偵か?」


マクスは問いかけるが、さすがにそこは隠密と言うべきか、確りと口を噤んだまま喋らない。


「………おい。なんか喋れ」


「話すことなど………ない」


マクスの言葉に、漸く口を開いたかと思えば、このとおり。


どうにも強情で仕方がないので、マクスは溜め息をつきながらマクスはその女の顔に手をかけ―――――。


「うりゃっ」


「~~~~っ!?」


力を入れ、立ち上がった。


圧の掛かった女の後頭部が地面に押し付けられ、女は声にならない悲鳴をあげる。


「ふうぅ、ずっと同じ姿勢はさすがにしんどいな」


「ふぇ…………!?」


痛みに顔を顰め、涙目になりながら、女はマクスの姿を見上げた。


そして。


「き、貴様………」


「ん?」


おそるおそる、訊ねた。


「私に、何もしないのか?」


「何だ、何かしてほしいのか?」


「そ、そんなわけがあるか!」


恥ずかしいさを振り切って発した問いに間髪入れずに答を返され、思わず怒鳴り返す女。


だが、意外だった。

てっきり、どこか拘置所にでも連れて行かれて、洗いざらい吐かされると思っていたのに。


だのにこの男は、服に付いた砂埃を落とすのみであり、自分に何をしてくるわけでもない。


これは一体、どういうことか。


そんな女の心理を読んだか、マクスははぁ、と溜め息をついた。


「どうして何もしないのか、か? まあ、理由は簡単だ。お前達隠密を取り調べるのは、これが初めてじゃない」


マクスのその言葉には、女はそれはそうだろうと思っていた。


マクスは仮にも将軍。

都市で犯罪が起きた際、その容疑者を取り調べるのは、一部は将軍が担うことも多い。


それに驚かないところを見て、マクスはほう、と唸った。


「驚かないか。てことは、俺が将軍だってのは知ってるってことだな」


マクスの問いに、女は頷いて答える。


それを確認すると、マクスは更に続けた。


「お前達隠者には2種類の人間がいる。この程度の脅しで落ちる奴と、お前のようにそうでない奴だ。まあ隠密である以上、前者は滅多にいるもんじゃねえが………。まあ、それで、俺がお前に何もしないのはだな……」


溜めに溜めるマクスは、女のみならずファインやフィーネの視線をも集める。


そして、発せられたのは―――――。


「面倒だからだ!」


なんとも気の抜ける、しかし同時になんとも彼らしい言葉だった。


それにファインと女はずっこけ、フィーネは何が面白いのかくすりと笑った。


「貴様ぁ! ふざけてるのか!?」


「いや、だって面倒くせえし」


「マクス、将軍でしょ!? いいの? 他国のスパイかもしれないんだよ!?」


「スパイなら、わざわざお忍びで旅に出たばかりの要人襲ったりなんて、目立つ真似はしねえだろ。暗殺にしたって、世界最強のこの俺を狙うなど有り得んしな」


「うわ、また出たよ」


相変わらずのマクスの自信に、ファインは苦笑いすることしか出来ない。


尤も、これまでは溜め息すらついていたことを考えれば、慣れてきたと言えるのかもしれないが。


「大した自信だな。自分がこの世界で一番強い、と?」


「違うのか?」


ニヤ、と、まるで当然のことにように訊き返す。


それには、気丈に声を張り上げていた暗殺者も呆気にとられ、声も出ない。


自分相手に、万が一にも倒されることを考えてもいない。


それは、女にとって気に障るものだった。


「馬鹿にしているのかっ!?」


「別に。実際、てめえは強ぇよ。隠密の中でも、充分に優秀な部類に入るだろう。…………ただ、俺には及ばねえってだけだ」


「くっ…………」


舌打ちする―――――が、それも事実。


実際マクスの全身から漲る神力は尋常なものではない。これなら、ここまでの自信を見せるのにも納得がいくことだ。


普段は潜めているものを、あえて威圧のためにその一部を解放していることなど、女は知る由もないが、とにかく感じ取った感覚は、女に確信を抱かせる。


この男には、勝てないと。


「ま、そういうわけだ。別にてめえをどうこうする気はこれっぽっちもねえ。元々興味も時間もねえし、お前を放したところで俺をどうこうできるわけでもねえし」


「その、溢れんばかりの自信はどこから来るのだ…………?」


ついには、呆れたように溜め息までつき始める女。


慣れてしまった今となっては溜め息も出ない自身に呆れつつも、ファインは女の言葉に心の底から同意した。


そうして、俯くこと数秒。


不意に上げられた女の顔には、何かを決意した表情。


それに、マクスは僅かに顔を顰めた。


何故か。

それはマクスが彼女の表情から、何となく察してしまったからだ。


人があのような表情をする時。それは―――――。


「………頼みがある」


―――――大抵、厄介事が舞い込む時なのである。


~神の黄昏~


マクス「おいコラ待て。散々読者の皆様を待たせておいて、この短さはどういうことだ」


神崎「いやー、ちょうど行き詰まってたし、区切りもよかったものでw」


マクス「〝w〟じゃねえだろが。今回何が進んだよ? 暗殺者が出てきて、ただいろいろ喋っただけじゃねえか」


神崎「その喋った中に、この先の伏線とかいろいろ入れたんだけど………まあいいや。とりあえず、2章最初の冒険はこの女暗殺者のひょんな頼みから始まります。頑張って書いていきますので、読者の皆様、何卒応援宜しくお願い致します」


マクス「まあ、こんな作者の作品だが、これからもどうか見てやってくれ」


神崎「宜しければ感想もお願いします。励みになります故」


マクス「俺からも頼む」


神崎「しかし…………あれだね。今までのパーティがいないとマクスのキャラが目立っちゃって仕方ないね」


マクス「ま、俺だからなw………だが、これまでのパーティのキャラを揃えなかったのは何故だ?」


神崎「ああ、それはただ単純にパーティの一新を図りたかったから。いつまでも同じ人ばっかりじゃマンネリになりそうな気がしたし、こうすれば新しい人も出し易いしね」


マクス「そうか。…………ん? だとすりゃあ、ファインがくっついてきてるのは何故だ?」


神崎「彼は無論、君のボケにツッコませるツッコミ要員に決まってるじゃないか。ツッコミのいないボケほど、寂しいものはないからね」


マクス「………とりあえず、お前が普段俺をどう見ているのかは理解したぜ」


神崎「…………さて、なんだか雲行きが怪しくなってきましたので、今回はこれで失礼します。次回、『第1話「抗う者達 ―中編―」』にも、」


マクス「期待しとけ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ