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第1,5章 第4話「追跡劇と、意外な欠点 ―前編―」

皆様、お久しぶりです。


もうこちらの作品ではすっかり忘れ去られたかもしれませんが、2ヶ月ぶりに漸く復活です。


今度はいつになるか解りませんが……。


それでは、本編どうぞ。

「不審者だぁ?」


グランヴァール城のとある騒がしい一日は、マクスのそんな呆れたような台詞から始まった。


珍しく虚を突かれたような、それでいて疑わしき表情を隠そうともしないマクスに、件の話題を持ち込んできた張本人、ファインが興奮冷めやらぬ様子で、首を千切れんばかりに縦に何度も振る。


「そ、そそそそうなんだよ! なんか、こ~~~~~んなにおっきな風呂敷背負って、街中をのっしのっし歩いてるんだよ!? しかも顔は覆面しててわからないし、気味悪すぎだよ!」


涙目で言うファインだったが、マクスはそれでも信じきれないようだ。


無論、ファインがこんな形で嘘をつくとはマクス自身思っていない。


ただ、その男が本当に不審者なのか。その信憑性が欠ける。


「マクス、将軍でしょ!? 逮捕とかしてよ!」


確かに、マクスにも逮捕という行為が出来ないわけではない。


ある程度の階級になると、犯罪者を見つけた際、逮捕・拘留する権限が当てられるのだ。


だが―――――。


「落ち着け。第一、それ本当に不審者か? 姿形が変だっつーだけじゃなぁ。誤認逮捕などなったら洒落にならんぞ?」


下手をすれば、罪にも問われかねない。


そんなことはごめんだと、マクスは声高にしてファインに問うが、ファインは未だ興奮冷めやらぬ様子で答える。


「本当だって! すっごくひょろひょろした体なのに、あんな大きい荷物歩いてるなんて、絶対変だ…………」


「そっちかよ」


ツッコミ、しかし心の内でマクスはその男に興味を持っていた。


ひょろひょろと表現するからには、なかなかの細腕らしい。


にも関わらず、そこまで大きな風呂敷を―――――ファインの感覚にもよるが―――――担いでいたということは、並大抵のことではない。


人間では、まず不可能だろう。そうなれば、おそらくは―――――。


「人外、か」


「に、人間じゃないの!?」


「まだ可能性の話だ。それで? そいつを探せってか?」


「やってくれるの!?」


「そんなやつが本当にいるなら大混乱になりかねねえからな。それに………」


「それに?」


立て掛けてあったマントを纏い、ヴァイステインを帯剣するマクスに、ファインはおそるおそる訊く。


「……俺も、そいつに興味がある」


にっ、と不敵に笑ってみせ、部屋を出ていくマクスをファインが慌てて負う。


かくして、謎のひょろ男捜索という騒動が、ここに幕を開けたのだった。

















「マクス将軍」


町へ出向くと早々、マクスは城門近くで声をかけられた。


腰に届くほど長いしなやかな緑の髪をたなびかせ、存在感のある胸の膨らみや洗練されたボディラインは、それなりに厚手であるはずの軍服の上からも解るほど。


少々鋭い目つきとそれに似合う銀縁のメガネが性格のきつさを前面に押し出しているが、性別を問わず、すれ違う万人がまず間違いなく美人と答えるような女性である。


しかしこの女性、只者でないのはそれだけではない。


女性がその身に纏う軍服こそ、この国に数人程度しか存在しない、将軍職の人間のみが着ることを許されたものなのである。


「ふぇ、フェルメール将軍閣下! おはようございます!」


「よっ」


ファインは仰々しく慌てて敬礼するのに対し、マクスはなんとも軽い。


同じ将軍職なのだから当然ではあるのだが、それでもロストンのような騎士の礼節を重んじる騎士にしてみれば、その態度は異様ともとれよう。


だが、このフェルメール―――――フルネームは、エリザ=フェルメール―――――という将軍は意外にも、マクスの態度には寛容的な人物の1人だ。


それどころか、礼節に欠けるマクスの態度を最初に認め、あまつさえ気に入りさえした将軍でもある。


本人曰く、「最近の騎士共は、礼節や騎士としてのプライドばかり気にする輩ばかりだ。やはり騎士とは、このような豪傑でなければな!」だそうである。


まあ結局のところ、礼節云々を並べ立てる以前に、実力と豪胆さが伴わなければ駄目だ。そう言いたいのだろう。


「どうした、また政務をサボって町へ繰り出す気か?」


「残念だったな、今回は仕事だ。こいつが町で不審者を見たから、一緒に探してほしいんだと。それで、お前はどうした?」


「私は夜勤明けだ。おかげでせっかくの休日が眠くて敵わん。……ところで、不審者とは?」


「は、はい。実は………」


おどおどしながら話し始めるファインに、マクスは笑いながら、どうもエリザのことを苦手だと言っていたのを思い出す。


確かにエリザは傍から見ればきつそうな性格ではあるし、実際そうなのだろう。


だがマクス自身全然気にもしないし、どちらかといえば彼女のようなさっぱりした性格には、好感すら持てると思っている。


そんなことを考えている内にどうやら説明を終えたらしく、エリザは顎に手を当てて、ふむ、と考え込んだ。


「細腕で巨大な荷物を背負う男、か。確かに奇妙ではあるが」


「でしょでしょ!?」


「ま、見た目だけじゃ判断できねえから、会ってみてからの話だがな、逮捕云々は。だが、興味ねえか?」


「確かに………その、力の法則を無視したような所業をなして見せたその男……興味があるな」


エリザも、どうやらその男に興味が出てきたらしい。


それも、ファインの言う奇妙さよりは、どちらかといえばマクスと同じベクトルに、のようだ。


「ま、頑張ることだ。何か解ったら私にも教えてくれ」


「へーへー。どうせお前は家で、愛しのガキとの団欒タイムだろ?」


「そうだ! 解っているではないか、マクス!!」


突然、それまでのクールでさばさばとした態度が一転、急に勢いづいてエリザは興奮気味に―――――否、完全に興奮して答える。


双眸に据えられた四角いフレームの眼鏡が、一層の輝きを持ったように見えた。


「我が最愛の息子、レインと共に過ごす時間こそが我が………否、我らが親子の至福の時だ!」


「眠いんじゃなかったのかよ。寝ろよこの親バカ」


「戯け! せっかく一日中レインと一緒にいられるというのに、寝てなどいられるか!」


「おいおい………」


呆れるマクスの横で、大仰に手を広げたエリザは尚も自分の世界に入ったまま、まるでオペラ歌手のような動きで言う。


「あぁ~、今頃レインは何をしているのだろうか! きっと私の帰りを待ちわびて泣いているに違いない! こうしてはおれん! こんなところで立ち話する時間も惜しい! レイン、今行くからなぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


そう興奮して一気に捲くし立てると、エリザは一目散に駆け出していった。


「…………フェルメール将軍、相変わらずだね」


「アレがなければ完璧な美人なんだがなぁ………。神さんも勿体無いことをする」


ぽかんとしたまま動けないでいるファインの横で、マクスはそう言って呆れたように、無理矢理町人を掻き分けて爆進していくエリザの後姿を見つめる。


このエリザという将軍、言うまでもなく軍人として有能であるし、義にも厚く部下からの信頼も厚い。


唯一、彼女の欠点とされているのがこの、行き過ぎた親バカなのである。


彼女には、レインという息子が1人いる。


同様に騎士団にいた夫は、数年前の隣国との大規模紛争時に他界したという話だから、彼女が息子を溺愛するのも解らなくはないのだが―――――それを差し引いても十分お釣りが来るほどの親馬鹿っぷりを発揮しては、よく軍の間で有名になっている。


夫との他界以前に、彼女自身がレインをとてつもなく愛していた、ということなのだろうと理解は出来るが、同時にその対象であるレインが少々―――――否、もしかしたらかなり―――――可哀相にも思えてくる。


今はまだ幼く、彼女にも懐いてきているからいいのだろうが、成長して反抗期にでもなろうものなら、鬱陶しくて仕方ないだろう。


「………さて。じゃ、俺達もそろそろ行くぞ。急がねえとそいつ、逃がしちまうからな」


「……あ、うん。そうだね」


しばらく呆気に取られていた2人は漸く我に帰り、町へと歩いていった。

















「で、マクス。どうやって探すの?」


町に出て数分、ファインはマクスにそう訊ねた。


「そうだな。まずは聞き込みだろ。人探しの定番だ」


「じゃ、似顔絵作るのはどうかな? ちょうど紙と鉛筆持ってきてるし。僕が特徴言うから、マクスかいてよ」


はい、と紙と鉛筆を渡すと、露骨に嫌な顔をするマクス。


それを見て、ファインは何か気に障ったことでもしたのかと慌てて考えを巡らせるが、特にこれといって思い当たる節はない。


「ど、どうしたの、マクス?」


「………俺に、絵を描けと?」


「うん、そうだよ? 簡単でしょ、マクスなら」


ファインに悪意はない。

否、むしろ純粋に褒めたのだ。

マクスならこれくらい、造作もないことだろうと踏んで。


だが、マクスの表情は晴れない。悪化していると言ってもいい。


その態度に、ファインはあることに気付いた―――――否、気付いてしまった。


「もしかしてマクス………絵、書けないの?」


言うと、マクスは冷や汗をだらだらと流してうろたえ出す。


「ば、馬鹿なこと言うな、絵くらい描ける」


「じゃあ描いて見せてよ」


そう笑顔のファインにずい、と紙と鉛筆を強引に握らされ、マクスは近くの喫茶店に入り、渋々と書き始めるのであった。

























その後、店内。


「パフェ特盛り、お待ちどう様でしたー♪」


さっ。


「………おい。何故に隠す」


「パフェは絵を描いたらね」


「後で覚えとけよ、てめえ………」


初めてマクスから主導権を握ったファインの満足げな笑顔が、らんらんと輝いていたというのは、余談である。


~神の黄昏~


神崎「皆様、お久しぶりです!」


マクス「待たせすぎだ。2ヶ月以上ほったらかしにしやがった上に、こんな短いとは」


ファイン「ま、あまり人気ないみたいだし。別にいいけどね~」


神崎「うわああああぁぁぁぁん、それを言うなあああああぁぁぁぁぁぁぁ!(滝涙)」


マクス「駄目だろ、事実を言ったら」


ファイン「あ、そっか」


神崎「コラ」


マクス「さて、今回は何のための話だ?」


神崎「今回は、初めてマクスの弱点が描かれる話ですね。読者様から、『マクスが完璧すぎて共感しづらい』というお言葉をいただきましたので、描いてみようかと」


ファイン「絵が苦手かー。なんだか意外な弱点だよね(ニヤニヤ)」


マクス「………ほう。随分嬉しそうだな(黒笑)」


ファイン「………あ、あのー、マクスさん? その頭上に輝いている神力球は何に使う気なのでしょうか?(滝汗)」


マクス「別に? ただちょっと人の揚げ足取っただけで有頂天になってる馬鹿野郎の鼻っ柱でも叩き折ってやろうかと思っただけでございますよ、ええ(黒笑)」


ファイン「口調おかしくなってるし!………じゃなかった、ごめん! 謝るから許して!!」


マクス「問答無用! シュトゥルムヴェインッ!」


ファイン「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


神崎「哀れな…………魔獣を怒らせてしまったがために、あんな目に……(合掌)」


マクス「で、次回は何だ?」


神崎「次回は不審者捜索の続き。そして新展開」


マクス「漸く2章目に突入、ってか?」


神崎「それはまだ先の予定。まだまだ出し切れてない伏線とかストーリーとかあるし」


マクス「なるほどな。それじゃ、次回予告行こうぜ」


神崎「よし来た。次回、『追跡劇と、意外な欠点 ―後編―』に、」


マクス「期待しとけ!」


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