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第1章 第14話「絶望から希望へ」

2人はしばらくの間、語らって過ごした。自分のことを余すことなく相手に伝えるために。


レインシアもまた、自分のことを話した。


自分が皇帝の一人娘だということ、大変可愛がられたが、過保護なために自分では自由に行動することなど出来ず寂しい思いをしていたこと。普段の自分からは信じられないほど、レインシアはマクスに心を開いていた。


マクスも様々なことを話してくれた。


機械産業が発達したベルネールで、よく父である公王に連れられて工場等の見学に連れて行ってもらったこと。誰にも言わず父とともに冒険へ出かけ、親子共々宰相に怒られたこと。どれも冷静に考えてみれば滅茶苦茶な話ではあったけれども、レインシアにとって楽しい話ばかりだった。


「マクスさんは、幸せだったのですね」


「ああ、あの頃は楽しかったぜ。ま、親父がハチャメチャな人だったってのもあるんだがな」


「フフフ、それでも羨ましいです。私はこれまで、ほとんど城から出たことがありませんでしたから」


そう言って笑うレインシアの頭を、マクスは撫でる。


「これからは忙しくなるぜ? 何せ、お前が皇帝になるんだからな。嫌って程外に出ることになる」


「はい。………あの、マクスさん。この件が終わったら、どうなさるおつもりですか?」


「うん? 俺か? そうだなぁ、とりあえずまた旅にでも出るかな」


「旅………ですか?」


「いくらお前に頼むとはいえ、すぐには見つからねえだろうからな。俺の方でも独自に探す旅に出る。ま、気長にいくさ」


「あの…………その………」


急に顔を赤くしてもじもじとし出すレインシア。一体何事かと思いながらマクスは尋ねた。


「何だ?」


「ええと、もしマクスさんがよかったらなのですけど、わ、私のお城に住んでくれませんか!?」


「………は?」


ちょっと待て、一体いつの間に俺はこいつを誑かした!?


そう思われても断じて文句の言えない彼女の仕草と言動に、マクスは目を丸くした。


「おい、今のは俺の聞き間違いか? 俺が、何だって?」


「ですから、私のお城に一緒に住んでいただきたいのです」


「あのなあ、俺はお前を口説いた覚えはこれっぽっちもないんだが。どうしてそういうことになるわけ?」


「え? 口説く?」


相変わらず顔は赤いままだが、きょとんとした顔でマクスを見るレインシア。


(自覚なしかよっ!)


心の中で突っ込み、マクスは補足した。


「お前、今遠まわしに結婚してくれって言ったんだぜ? 気付かなかった?」


「え………ええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


物凄い声を上げるレインシア。しかし今は夜中で、ましてや彼らは現在逃亡中なのである。マクスは慌ててレインシアの口を押さえた。


「声が大きいぞ」


「え、ああ、あの、すみません! ああ、で、でも………」


もはや臨界点寸前まで顔を真っ赤に染め上げ、レインシアはうわ言のように呟く。


「そういう意味だろ?」


「違います! もう、意地悪を言うのは止めて下さい。怒りますよ!」


そう言って頬を膨らませるレインシア。だが迫力などは微塵もなく、むしろ可愛らしい。


「はは、悪ぃ、悪ぃ。で、なんでまたそんなことを?」


「あ、はい。一緒にお城にいた方が、神の涙が見つかった時に知らせが早いと思いまして」


「そうだな…………」


確かに、レインシアの申し出は的を射ている。見つかった時に城にいれば、話が伝わるのも早いだろう。


「どうです?」


「欲を言うなら、それなりの役職がほしいな。いざという時動けなかったら洒落にならん」


「それもそうですね。解りました、検討しておきます」


「頼むぜ。さ、そろそろ夜も遅い。もう中に入るぞ」


「はいっ」


笑顔で答えるレインシアに満足そうに笑みを帰しつつ立ち上がり、マクスは彼女を連れて建物の中に入る。


自室を目指して階段を上っていくと、一人の人影が目に入った。


「………何やってんだ、あいつ?」


マクスの視線の先にいたその物寂しげな背中は、間違いなくファインであった。


「………はぁ、仕方ねぇな。というわけだレインシア、俺はここで」


「はい、解りました。お休みなさい」


「ああ、お休み」


頷き、中へ入っていくレインシアを確認すると、マクスはファインのもとへゆっくりと近付いていく。決して気配を消していたわけでもなく、音を立てないよう用心したつもりもない。だが、ファインは振り返るどころか、一向に気付く気配すら見せない。


今日の彼はいつにも増して軍人らしくなかった。今のがもし敵であれば、もう彼の命はこの世にはない。


「おい、ファイン」


マクスの声に、ファインはびくっ、と体を震わせた。


「………………何?」


机に突っ伏した格好のまま、そう反応を返す。


「いつまでそうやってる気だ?」


「…………マクスはやっぱり……凄いよね」


呆れたように言うマクスに、ファインは姿勢を変えないままそう呟く。


「は? 何の話だ?」


「だって、昔あんなことがあったのに、絶望しないで生きてる」


「………盗み聞きとは関心しないな」


「ごめん。でも僕は、マクスみたいには生きられない! 将軍と戦うなんて、出来っこないよ……………」


「…………それでいいんじゃないか?」


「…………え?」


てっきり「馬鹿野郎!」などと怒られるとばかり思っていたファインは、予想外の返答に当惑し思わず聞き返す。


「お前は将軍と戦いたくないんだろ? だったら戦わなければいい。何か間違ったこと言ってるか?」


「そ、それは…………」


すぐに返事が見当たらず、ファインは押し黙る。


「そう、戦わなければいいんだよ。だがな、問題はその後だ」


「その、後?」


「そうさ。お前に残された選択肢は2つだ。尻尾を巻いて逃げ出すか、無理を承知で説得するか、だ」


「やっぱり説得、無理なのかなぁ………」


「はっきり言って、無理だろうな。奴の帝国への恨みは相当のものだ。帝国を変えようという思いも同じくらいに、な」


「やっぱり…………」


「だがな、この際そんなもんは関係ねえんだよ」


「え?」


マクスはファインの向かいの椅子に勢いよく座ると、テーブルに置かれていたワインをグラスに注ぐ。


「お前は将軍とは戦いたくない。だが、それと同時に将軍には道を踏み外してほしくないと思っている。だから説得したい。違うか?」


「それは………そうなんだけど」


「ならもう迷う必要はないだろう? いいか、お前は間違ってることが一つある。俺は確かにまずまず無理だと言ったかもしれないが、可能性が0だと言った覚えはないぜ? 可能性が残されているならとことん突っ走れ」


「とことん、突っ走る…………」


マクスの言葉を反復し、ファインはそれを抱くように俯いた。しかし、その表情は先ほどとは打って変わって、僅かながら希望の色が浮かんでいた。


自分にはまだできることがある。憧れの人を救うことが。


「ありがとう、マクス! 僕、やってみるよ! 絶対に将軍を説得する!」


「ああ、その意気だ」


そう言ってマクスはファインの頭をくしゃくしゃと撫でた。


「ふわあぁぁ、吹っ切れたら眠くなってきちゃった。僕もう寝るね」


「そうか」


ファインは立ち上がり大きく伸びをすると、自分の部屋へ向けて歩き出す。


そして途中で、思い出したように立ち止まり、振り返る。


「マクス」


「うん? 何だ?」


「僕、マクスのこと気にしないから」


「いいのか? 俺は敵国の人間だが」


「だって、今まで僕らのこと守ってくれたじゃない」


「信頼させておいていきなり刺そうと考えているのかもしれないぞ?」


「えっ…………」


考えつきもしなかった答にあたふたとするファインに、マクスは苦笑する。


「冗談だ。安心しな。すくなくともこの用事が終わるまではちゃんと守ってやるよ」


「うん!」


邪気のない笑みを浮かべ、ファインは駆けていった。


「おいおい、夜なんだから静かにしろっての」


悪態をついてはいるが、その顔には微笑が浮かんでいる。


(………ファイン、お前はもう一つ間違ってるぜ。俺は絶望しないで生きられてなんていない。否、むしろ絶望しなければ生きていることなど出来なかったのかもしれない。だがこれからは違う。絶望ではなく、希望を見出すために今の俺はある)


マクスは一息にワインを飲み干すと、窓から夜空を見上げる。


「俺が歩む道は地獄か、それとも………」


立ち上がり、満天の星空を見つめる。


「答は神のみぞ知る、か…………」


彼の呟きに答える者は、誰もいなかった。


マクス「さあて、まず初めに訊いてやる。何故こんなに更新が遅れた?」


神崎「お、落ち着いて! ええとね、まず同時進行してたディケイドのカブト編を終わらせたかったからなんだ」


マクス「ほう、それで放っておいたと? 確か最近では新しいW編にも取り掛かってたよな?」


神崎「うっ…………」


マクス「それで更新する暇がなかったと? はっ、よくもまあそんなことが言えるな?」


神崎「ごめんなさい! モチベーションが上がりませんでしたっ! ただし、いつもより短かったのは決してモチベーションではなく、きりがいいところにしたかったからです」


マクス「ふん、最初から正直に言えばいいんだ」


神崎「お詫びに、これを読んでいて後書きや番外作品等にうちのキャラを出してみたいという方はどうかご一報を」


マクス「……ちょっと待てコラ」


神崎「さぁ~て、そろそろマクスが恐いので、早々に失礼します。ではっ!」


マクス「待てやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


こんにちは。読んでくださっている方、お久しぶりです。

さて、ディケイドの方にも書きましたが、ここで書いて欲しい新規作品を募集します。


候補は以下のとおり。


①完全オリジナル(SF,現代ファンタジー,異世界ファンタジー、etc)

②2次創作:仮面ライダー(555,剣)

③2次創作:ガンダムSEEDシリーズ(他歴代ガンダム作品とのクロス,ガンダムSEEDのみ)

④2次創作:ガンダム《オリジナル》

⑤2次創作:リリカルなのはStrikerS(オリ主,転生)

⑥2次創作:テイルズオブジアビス

⑦2次創作:テイルズ《オリジナル》


オリジナルと書いているものはオリ主か転生かは特に決めていませんが、ほぼ間違いなくオリ主になるかと思われます。例のごとく、()の中からジャンル(?)を選んで、番号と共に感想かメッセージにてお寄せ下さい。


それでは。

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