第5話 凍えそうなきみへ
「おーい。大丈夫??」
全然大丈夫ではない。だいじょばなすぎる。寒暖差で体調がぶち壊れそうだ。
「ここはきみにとってすごく重要で大切な場所なんだよ。覚えてるかな??」
尋常ではない雪の量、凍りついた道路、両端にそびえ立つ雪山。目に映る全てが白だ。
「ここは北海道だよ。札幌市中央区。」
中央区と言われてもピンとこないが、中央というくらいだし栄えているのだろう。
「北海道に思い入れがあると言っても、札幌には2年半しか住んでないんだもんね〜。」
ん?俺ここに住んでいたことがあるのか?頭の隅から隅まで検索をかけるが、何もヒットしない。
「とりあえず小学校でも行こっか??」
そういってうみみはぼくの手を握りしめる。小さくて柔らかい。なんだか泣きそうだった。
「どうしたの?具合悪いの?」
確かに寒暖差には驚かされたが、特段具合が悪いわけではなかった。
ただ形容し難い感情がずっと心に残って、それを吐き出したくて、溢れでそうな涙を抑えるのに必死だった。
「ゆっくりでいいんだよ。わたしはどこにも行かないから。」
そう言って、頭を撫でてくるうみみ。背伸びしているところを見逃さなかった。かわいいやつめ。
「滑りやすいから気をつけてね。」
2人でゆっくりと小学校への歩みを進める。
寒くないように手を繋ぎながら。