うしろのおはなし
ポチャムたちはワクワクしながら、おばばを見ていると、おばばは巻き物をだしたよ。
ふわふわとうかんだ巻き物がおばばのうえでくるくるとひらいていくよ。
どこからか、リーンゴーンとかねのおとがひびきだして、いのちの木にむかって風がふいてきた。
広場のまわりのこおり杉たちが、じめんの土といっしょに外へ外へと遠ざかっていくよ。
おばばが何かを唱えだしたね
「いにしえよりねづく、しんだいの木よ」
「かつてのきおくをとじて、ねむる木よ」
「さあ、すがたを取りもどせ」
「はじまりの木よ、お目覚めの時間じゃよ」
ワクワクしているポチャムにすこしこわくなっておびえてる雪ん子しまい、ハンマーをかまえて雪ん子しまいをまもろうとしてる雪ダルマきょうだいに、王子様はおどろいて口をあんぐりあけていますよ。
おばばは唱えおえると、風のようにほうきでポチャムたちのところへ飛んできたよ。
ポチャムたちがなにかをきくよりまえに、いのちの木のねっこから、次々とみきがまきつくようにはえていくよ。
広場のまん中にぽつんとあっただけのいのちの木はどんどんとみきがまきつき、空へ空へと伸びていくよ。
枝も葉っぱもどんどんと伸びてはふえていくよ。
さあ、山のように大きくなったいのちの木、ポチャムたちのめのまえには大きなうろが、どうくつみたいに口をあけている。
「これがホントのこおりのダンジョン、はじまりの木だよ」
おばばが両手をひろげてポチャムたちを見ているね。ポチャムたちはびっくりしすぎてこえが出ないみたい。
でも、ポチャムはだんだん楽しくなってきたんだね。
「おばば、大冒険だねっ!! 」
ポチャムたちはうろから木のなかへと入っていくよ。
「さーて、それじゃポチャムにはタンバリンを、雪ダルマたちにはラッパを王子はたてごとをひいてもらうかねー」
おばばはそう言いながら、ポチャムたちの剣やハンマーを楽器にかえていくよ。
王子様にはおばばのかみをぬいて、たてごとにかえてわたしてる。
「雪ん子のじょうちゃんたちはベルとすずをならしながら、おうたをうたってちょうだいな」
おばばは大きなこえでうたいはじめて、それにあわせて、ポチャムたちはがっきをならしてうたいながらあるいていくよ。
はじまりの木のなかにいるフローズンスパイダーのこどもたちは楽しそうなポチャムたちにまざりたくて、キューキューないてはたくさんある足をうってはダンダンダンとはやしてるよ。
リスにネズミにゆきウサギ、かわいいどうぶつたちがあらわれてはキュッキュ、チーチー、チューチューと楽しそう。
「おばば、とっても楽しいね」
「そうじゃのー、ただ、そろそろ、あいつが出てくるころじゃからな」
「あいつ? 」
ポチャムが話しかけて、おばばがかえしたけど、あいつってだれ? って、ポチャムたちはおもったようだね。
「もう、やってきたみたいじゃよ。王子、出番じゃぞ」
おばばのことばに王子様がたてごとをひくのをやめると、むこうから王子様にそっくりなぬいぐるみじゃないくまさんがやってきました。
「ほー、これはつよそうなくまだな。いっちょ、オイラとおすもうといこうや」
王子様はいきなり、そんなことを言われてちょっぴりきげんがわるそう。
でも、ポチャムたちは楽しそうだね。
「王子様、エイヤーってなげちゃってっ! 」
「王子様のがつよいよねーっ! 」
ポチャムたちにおうえんされて、王子様もやる気になったみたい。
「ほっほっほ、かつてのめいやくにしたがい、こんだいの王子ともたたかってくれるのかい、じゅうおう」
「あたりまえだな、さぁこいっ! 」
じゅうおうっておばばに呼ばれたくまさんにむかって、王子様はぶつかっていったよ。
でも、じゅうおうも王子様もちからは同じくらいみたい。じっとうごかないふたりに、ポチャムたちはどっちにもせいえんをおくってるよ。
「がんばれー王子様っ! 」
「くまさんもがんばれーっ! 」
おばばは嬉しそうに笑って
「王子、ダンジョンの女王にあうにはもりのけものの王に勝たなくてはならんのじゃ、おぬしのいもうとのためにもうひとふんばりじゃ」
いもうとのためと言われて、王子様はがぜん、ちからが出てきました。こしにまわした両手にせいいっぱいのちからをこめて、はをくいしばります。
「けがをさせたら、すまないっ! 」
「ふんっ、しょうぶでけがをしても、うらみっこなしさ」
じゅうおうがニカッてわらうから、王子様は全力で投げました。
「やったーっ!! 王子様のかちだーっ! 」
ポチャムたちはかけよって、王子様にすごいすごいって抱きついたり、じゅうおうにけがしてないってしんぱいしたり、おおいそがし。
「オイラはダイジョブ。それより、ぬいぐるみの王子、これが女王のいるはじまりの木のダンジョン、こおりの女王のもとにいくためのカギだ。もってくといい」
そうして、じゅうおうはくびにさげていた。まあるい石を王子様にわたしました。
王子様はありがとうってうけとって、石にとおってるひもで首に石をかけたよ。
「さぁ、じゃあ、フローズンスパイダー、このはじまりの木の女王にあいに行こうかね」
ポチャムたちはまた、がっきをならして、うたいながら、すすんでいきます。
そうして、大きな大きな木のとびらのまえについたら、さっきの石がひかりだして、それから王子様のからだから、ちょっぴりわたがとびだしたよ。
わたがモコモコとかたちをかえると、カギのかたちになって、とびらのあなにささったね。
ゴゴゴゴゴ、ってとびらがひらくと、おくからあしはくものはっぽんあしだけど、からだはとってもキレイなおねいさんがやってくるよ。
じめんについちゃいそうなくらいにながいかみのけはまっしろでキラキラしてる。
くもみたいな足もおしりもまっしろで、にんげんのおねいさんみたいからだには、うすーいはごろもをはおってるね。
ひたいにちいさなまっくろな石がむっつブイの字にならんでるよ。
「よくきたな、おばばにこんだいの王子よ。わたしの糸なら用意してある。もっていって、はやくなおしてあげるといい」
「久しぶりじゃな。ありがたくもらっていくよ。こんどは用などなくともかおをだそうかね」
「ならば、とびらはあけておこう。おばばならば、とくべつだ」
そう言ってわらいあうふたりをみながら、雪ん子のしまいがたずねます。
「その糸はなんにつかうの? 」
「このもりのこおり杉の葉をはりにして、このフローズンスパイダーの糸を使って布をぬいあわせ、こおりのリンゴの種をいれると、ぬいぐるみにたましいがやどるんじゃが、わるいびょうきになったぬいぐるみには、いちど糸をはずしてこおりのリンゴのかじゅうにつけた、この糸でぬいなおすのがいちばんなんじゃ」
「そーなんだねー、じゃあ、いそいでかえらなきゃね」
ポチャムたちはアルマちゃんのためにいそいでかえろうとせかしだしたけど、フローズンスパイダーの女王様にとめられちゃった。
「そんなにあせらずとも、ほうき星のせいれいのむすめがおるのだ。ダイジョブだよ」
「たのんでくれるのかい」
「あぁ、おばば。あの子どもおもいのせいれいなら、ことわらないだろう」
「ほうき星のせいれいよ。はじまりの木のめいしゅたるわたしのたのみだ。ぬいぐるみのくにまで、王子とおばばを運んではくれぬか」
女王様がそう大きなこえで言うと、どこからかこえがきこえてきます。
「えぇ、いいでしょう。わたしのおっぽにつかまって行くといいわ」
雪ん子しまいと雪ダルマのきょうだいたちはおおはしゃぎ。
「ママだーっ! 」
「ママーっ! わたしたちもつれてってっー」
「えぇ、みんなつれてってあげるわ、ポチャムたちはかえりもはこんであげますね」
こうして、ぶじにぬいぐるみのくにまでもどった王子様とおばばはアルマちゃんをなおしてあげて、ポチャムたちはだいかんげいされたみたい。
めでたしめでたし。
おしまい。
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