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伐魔剣士  作者: ヌソン
二章 常夜桜編
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”桜亡廊”

――――??? 一階 常夜桜とこよざくらに通じる大廊下


 絢華あやかれいが地下通路から抜け出し、暫く走り続けていると一際大きい、半円型の天井をしている巨大な根をくり抜いた様な通路へと出た。

 辺りを見渡すとこの通路を中心に多くの道が枝分かれし、まるで樹木の様な形になっている。


「…街の地下にこんな道が…」

 絢華が驚いて居ると

「うぎゃぁ!」

 後ろから少し間の抜けた麗の声が聞こえた。

「常夜桜だ!」


 声に反応し、麗の方を振り向くと、後ろを向いてうずくまって目を瞑り、鼻をつまんで震えている姿が写った。


 麗が向いていた廊下の向こう側には道幅や高さと同じ大きさに作られた扉もない出口らしき穴が空いており、その先に広がる空間の中心に、常夜桜の根本と、その周りをチラチラと落ちていく花びらが見えた。


「ちょっと見ちゃったから、やばいかも…!」

 昼の戦いのせいか、自身の正気を失う事に怯える麗。

「………いえ…」

 その様子を見ていた絢華だったが、微かに違和感を感じ取り、辺りの匂いを嗅ぐように鼻で呼吸をする。

「…これは……麗様」

「んぁー?」

 気づいたと言わんばかりの表情で麗に話しかける。

「ここは香りがしません、大丈夫です」

「…ほんとぉー?」

「はい、一切と言っていいほど何も香りません、それに…麗様もこの距離で一目見ても魅了されていない、恐らくここは何らかの力で魅了が効かない場所になっているのでは無いですか?」

「そうかなぁ…?だとしても怖いんだけど…」


「…一度、目を開けて見て下さい、様子が変わる様でしたら私の力ですぐに治します」

「そんな事出来るの!?」

「回数に限りはありますが…」

「じゃあ、咲夜さくや用に取っといた方が……というか私の扱い酷くない?」

「大丈夫ですよ、疑う前に私を信じて下さい」

「うぅ、騙されてる気がするけど…分かった、見るよ」

 麗が渋々といった表情で目を閉じたまま立ち上がり、振り返って口で深呼吸する。


「ふぅー、見るよ!」

「はい」

「見るからね!」

「はい」

「行くよ!今行くよ! ほら!!」

「早くしてくだい」

「しゃあ来い!どんと来い!」

「来るのは貴方です」

「う、うぅー…!」


 ようやく覚悟を決めたのか、引き裂くように苦しそうな唸り声を発しながらゆっくりと目を開ける。

 少しずつ、真っ暗な視界に光が戻る。

 ぼやける視界にちょっとだけ疑う心。


 しかしその二つを吹き飛ばし


「危ない!!」ガッ…

「…えっ…?」


 咄嗟に刀へと手を伸ばしてしまう程の衝撃が


「後「残念」

「!?」


 絢華の背後へと現れていた。




 先程まで見えていた常夜桜を遮り、ゆらゆらと黒い影が広がっていく。

 その中心には妖しく輝く真紅色の口紅と、深紅色の目が邪悪に微笑み、こちらを裁くように静かに手を向けていた。


「さようなら」




 静かな宣言、剣に手をかけるが直感的に脳が理解した、避けられぬ死の感覚。


 咲夜との間の地面が少しもり上がる。

 絢華は直感的に昼間と同じように木の根を伸ばす攻撃をする事を察した。


 察したとしても間に合わない、間違いなく。

 すぐ後ろなら反撃出来たのかもしれないが、奴の立っている位置は少し遠い。



 気配が全くしなかった。

 先程までは鋭敏に感じていた気配。

 いや、正確には今もそれは感じている。

 それは目の前のこいつからでは無い。

 気配は変わらず、私達の階層よりもずっと上にいる。


 つまりこいつは…



「絢華さん!!」

「!!」

 自身の名を呼ぶ少女の叫び声で、ふと我に帰る。


 その瞬間、目の前に来ていたはずの死の音が急に離れた感覚がした。


そうだ、今は違う。

無力だった数分前の私とは違う。

(それを…!)

 もり上がっていた地面が急速に尖り、絢華の頭を狙って、一本の槍と化した根が放たれる。

「っ…!」

(証明する…っ!)

 それを一歩も動かずに上半身の動きのみでギリギリ躱すと


 ヒュン!!


 その反対側をすれ違うように鈍色の一閃が飛んでいく。


 ドスッ!!

「!?」

 虚をつかれた咲夜は飛んでくる刀に反応出来ず、動く暇もなく、右目に深々と突き刺さった。

 だが紅い瞳は変わらず微笑みながら、再び絢華へと手をかざす。


 だが

「……あら?」

そこに絢華は居なかった。


 ガシ!

「ふっ…!」

 一瞬の内に距離を詰めていた絢華は突き刺さる刀の柄を握り


「はぁ!!」

 ズバァ!


 咲夜の頭を袈裟に両断した。



 ズル……ドサ…

「ふぅ…」

 絢華が一息ついた時、彼女の目の前には頭の上半分がない棒立ちの咲夜が立っていた。


「大丈夫!?」

 後ろから麗が駆けつける。

「ありがとうございます、助かりました」

 絢華は頬から滴る血を拭いながら、麗に刀を渡した。


「…死んだの?」

「いえ、こいつは…」

「おや…お気づきでしたか」

 唯一顔に残っていた唇が動き、悪どく微笑む。

「かなり頑張って似せたつもりなんですが、少し悲しいです……ですが、最低限の役割はこなしてくれました…」

「……?」


「…しかし…何故気づいたのか…んー…」

「…」

「もしや…貴方は私の場所を知っていて、そこに居るのが偽物だと気づいた…という所でしょうか…私もずっと貴方から何かを感じています…「繋がり」とでも言うべき違和感を…どうですか?」

「……さぁ…」

「その答えと反応だと…図星…という事みたいですね、昔から分かりやすくて助かります、ふふふ…」

「……だとしたらどうしますか?」


「くす…どうもしません、待つのみです、今貴方達の立っているこの城は、私そのものと言っても過言ではありません…昼の私とは大違いですよ?」

「その違いが、この粗末な影武者ですか?」

「…あらあら、手厳しい…以外と芸術肌なのですね、殺し屋より、そちらの方が向いているんじゃないですか?」

「………あぁ、そうでした…その事で貴方に伝えないといけない事があるんです」

「何でしょうか?」


 スァ…

 絢華の剣がサラリと咲夜の首を薙ぐ。

「私、不知火 絢華(しらぬい あやか)は本日をもって退職し…」

 ズリ…

「…討魔隊へと身を置く事となりました」

「絢華さん!!」


 トサ…


 咲夜の首が地面へと落ち、全身が灰になって消えていく。


「…そうですか、残念です……まぁ良いでしょう……ふふふ、良ければ最期に、この城をお楽しみ下さい」


 全身が消えても、どこからともなく咲夜の声が響き渡る。


「桜都・華舞奇に隠された、我らが愛の巣…否…彼の愛が生んだ奇跡の産物…!」



桜亡廊さくぼうかく』を…!!

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