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【第8話】

……魔王城。常闇の地の中央に位置する巨大な城、光がないので外壁は黒一色にしか見えない。赤と金を基調としたカーペットにカーテン。暗い木材で作られた軋む床。こんな気味悪いところに来たのは、魔王城の何もある通り”魔王”を殺すためだ



「はぁ……はぁ……これで……死んだだろ……」


殺すのは至って簡単。高火力の特性武器で殴り続ければいい。そのはずだった。人に近い形をしたソレは、何度粉砕しても、より硬くなって蘇る。いくら頑張ったって、全て無に帰る


「おいおい、また産まれやがった……ははは……」


そう、全てが無駄になる。かつての様に、何もかもが―――







「ぁぁぁああああ!! はぁ、はぁ……はぁ……んだよ……夢かよ……」


悪夢で夜中に目が覚めるなんて、めっちゃ久しぶりなことだなぁ……

俺は無駄なくらい大きな窓から、街を覗く。ポツポツと火が灯り、数人の人が道を通っている。広いベットと寝室には俺一人で、小さな机以外ほとんどなにもない。四天王を殺し、何千者人を救ったけど、結局俺はただの低スペックカスだ。何もできないんだよ、どうせ、そうだよ。最初っから何もできねぇんだよ。俺はふと、前世(過去)を思い出した






桜の目が見え始め、夢と共に歩く学生たち。その中には、俺、飯田浩司も含まれていた。特段に才能に恵まれたわけじゃなかった俺は、期待に答えるために努力し続けた。その努力の賜物か、周りも俺も認めて、もっと期待を寄せるようになった。


「浩二! お前は自慢の息子だぞ!」

「浩二君!また成績トップだし!すごいよ!」


でもな、上には上が居た。高校に上がったときだった


「さすが██君!すぐに覚えちゃうんだから〜」

「いやいや、浩司に比べたら――」


あいつの顔と名前……忘れたくとも頭に残る。あいつが、最初の壁になった。あいつを越そうと、もっと頑張った。時間を切り詰めて、励み続けた


「また間違ってる! 最近どうしたのよ! もっと(・・・)努力しなさい!」

「ミス、ミス、ミス……やる気あんの? もっと(・・・)やれよ!」


もっと(・・・)頑張った、もっと努力した。青春なんて知らない。ほとんど誰とも話してない。それでも


「浩二!俺コンクールで優勝したぜ!」

「なあ浩二!俺合格したよー!! お前はどうだった!?」


あいつの笑顔と希望が、俺に追い打ちをかけた


「不合……格……?」


見間違いだと思ったさ。滑り止めのとこにいけたけど、俺が、俺に望まれたのはそこじゃなかった


「落ちた? 浩二!俺がいくらお前に費やしたかわかってるのか!!このクソ息子が!!」

「所詮は馬鹿だったかーw あ、誰もお前なんかに期待してなかったから大丈夫だよw」


そこでも頑張ったが、結局俺には何も残らなかった。楽器も引けなくなって、スポーツも下手くそになって、勉強も底辺大学にしか行けなかった


「すげえな██!お前海外に行くんか!流石だぜ!」

「ははっ、別に大したこと無いよ」


家も追い出されて、アルバイトでなんとかしようとして、ストレスか栄養不足で意識が朦朧としていた時、その結果が交通事故だった






俺はこの世界で手に入れた”才能”に喜んだ。それを使えば、もっと期待に答えられたから。でも、やはり上には上が居た。結局何も変わらなかった。でも力はあった。前の王家を人気と力で押し出し、何も考えずにトップに立って、何も考えずに遊び呆けた。ったく、どうするかなぁ……



「珍しく悩んでいますね」


「うおぉ!? お前……女神か。 なんでここに……」


聞き覚えのある声の方を向くと、暗い部屋をほのかに照らすヤツが居た


「……なんだぁ?殺しにでも来たのか?へっへっへw」


何されるか分からない恐怖と、抱いた不信感を押し殺して笑う。しかし奴はいつもの真顔のまま話しかけてくる


「いきなり起きていたので、何か秘密裏にやっているのではと思いましてね」


「たまたま起きただけだよ……それだけか?」


一人になりたいので、女神にとっとと部屋を出るように促す。お構いなしのスタンスを取られたが


「信用できません。明日の密売市(みつばいいち)にでも行くのでしょう?」


「……密売市? 何のことだ?」


つーか何処の?その様な情報は聞いてないぞ…… 俺は首だけ向けてていた体を45度くらい回す


「……知らないなら良いです。態度を改めないなら、いよいよ殺しますよ」


「はっはっはw わーかったよ、密売市になんか行く気ないし、止めもしねぇよw」


「……そうですか。では、また」


そう言って女神は光の粒々になって消える。分身体だったんだろう。微かに照らされていた部屋は再び暗さを取り戻す

……闇市……潰すしかねぇよな。俺にもメンツがあるしw





深く考えてもしょうがないので、とっとと寝た翌日。俺には今から向かう用事があるので、朝早くに兵長に情報やへの接触と兵士の配備を頼んでおいた

無駄な装飾の多い廊下を抜け、ありったけの食料が置かれた倉庫に忍び込み、こっそりパンを一つつまんで軽い朝食にする。”奴”が来るまでは、廊下をうろうろするくらいしかやることがない。……まあ、普通の王だったら執務とかあるんだろうけど


「イイダ様、ご来客です」


少し暇を持て余していると、近衛の一人から声をかけられた


「おっ、来たか……とりあえず、応接室に案内しといてくれ」


「了解しました」


適当に指示し、俺も応接室へ向かう。アイツと合うのは1年半ぶりか?




「……久しぶりだな、カイト」


「コウジぃー暇そうだな」


応接室の扉を開け、同じ縦長の机の対角に座った男に言う。五十嵐(いがらし) 海斗かいと、3番目の勇者だ


「なかなか派手に政治してるじゃねぇか。経済はどうなんだ?」


カイトが、こちらに身を乗り出しながら聞いてくる。こいつも俺と同じくとある一国の王だ。国の名前は忘れた


「別に、経済なんて知らねぇよ……」


あくびと伸びをしながら、俺は気だるく言う


「少しは僕を見習って欲しいねぇ……」


「参考にするわけねーだろ」


友人の様に話しているが、別に仲が良いわけではない。カイトはニヤニヤしながら元の位置へ戻り、真顔に戻った


「……さて、要件ってのはなんだい?」


「ああ、要件はな……」


カイトに”要件”を言うように言われ、それに従う。今日こいつをここに呼んだのは、とある目標のため……打倒女神のためだった


「……本当にそれで良いのか? 取り返しはつかないし、面倒くさいことになるぞ」


「お前が欲しいものも手に入るし、俺も要望を満たせる。ウィンウィンじゃねぇか。それに、こういうことはお前のほうが慣れてるだろう?」


「はぁ……わかったよ。じゃあ、明日だな?」


「ああ、明日の午前10時頃、集会場で」


「……わかったよ。全てうまくいくさ」

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