【第6話】
「フェロスさん! いきなりいらしてどうしましたか? 商人にでも転職するんですか〜?」
「いえいえ、ただちょっとお願いがありまして……」
商人協会/本部
この人達なら、きっと良い働きをしてくれるはず
「皆さん。ここに一斉に注文をしてほしいのですが……」
そう言って私は一枚の紙を取り出す。ある名前と、その住所と連絡番号だ
「”カラカサ”…? 聞いたことない会社だな」
「ここと繋がりを持っていただきたくて……」
「そんなの容易いが……いきなりどうして?」
「そこを抑えておけば、色々と良いことが起きます!」
……我ながらメチャクチャな説明だな。
「それだけか? じゃあ、後は任せときな!」
「はい、お願いします」
数分の間だったが、この行動だけでもかなり変わるはずだ
先程の”カラカサ”という会社……というか組織は、この街の裏にひっついてる集団だ。元は裏から自衛や管理などを行っていて、(合法かは置いておいて)まあ私的には良かったんだけど……最近はちょっとね。クスリを回したり、犯罪の根回しをしたり、騎士と賄賂で繋がったり……制裁が必要です。
腐っているのはボスの者とその他幹部。そいつらを叩けば自然と良くなるはずだ
「ネオン街に来てみたが……眩しいな。これもあの勇者様のご意見かな?」
看板が光り輝き、客引きと酔った人間で溢れる通り。……そう、”カラカサ”の領土だ。おそらく飯田も承認しているだろう……なにせ自分が楽しめなくちゃ困るだろうからな
「嬢ちゃんカワイイね! うちには良い男がわんさか――」
「あ、大丈夫です」
「お姉さん! ちょっとウチで一杯――」
「結構です」
「良いスタイルだねぇ……ウチで働いたりしな――」
「間に合ってます」
数十メートル歩くだけで客引きと勧誘に声をかけられまくる。まあ、この人達は関与してなさそうだし、いいろう
「――な、ちょっとウラ行こうか」
いきなり肩に腕をかけられる……いよいよ今日のターゲットのお出ましか。”カラカサ”はこのように、女性にいきなり声をかけ、そのまま強引に路地裏などに連れ込む。散々遊んだら、ヤク漬けにして”顧客”にする……考えるだけで吐き気がする
私はそのまま路地裏に行き、数人の男に囲まれた
「……わかるよね?」
「ウチのシマなんでねぇ……ま、付き合ってくれや」
「大丈夫や、ちょーっと良くなるだけだから」
男が注射器を取り出す。先にヤクるタイプか…… 普通に刺されたけど、問題なし。なぜなら神だから
「……ん? おい、これ粗悪品なんじゃねぇの?」
「粗悪品は――」
後ろの男の顔面に、回し蹴りをプレゼントする
「あなた達でしょう?」
「な、何だおめぇ!?」
「誰に喧嘩売ってるか分かっとんの――ヘブェ!?」
そのまま足払いしてなぎ倒す。ついでにストレートも
「お、おいおい! 逃げるぞ!」
「逃がすとでも思っているんですか…?『聖なる障壁』」
「な、逃げれない……!! ひ、ひぃ!!!」
仲間を二人やられて、自分の退路もなし……詰みだな
「……何か言うことは」
「は、吐かないぞ! 俺が、吐くわけ……グフェァ!!」
男の腹(急所は外してるよ)に光のエネルギーの塊……槍っぽいものを押し付ける
「分かってますね……別にアジトの場所は知ってます。なんか計画してるでしょう?」
「お、俺は、言わな――ウバァ!!」
やってること鬼畜だけど良いよね。私はちょっとずつ槍を食い込ませる。血は出ずに、痛覚と精神だけにダメージを与える拷問向きの技だ
「……言え」
「あ……あ……明日に……大規模な……ヤクの……販売……会……を……あが……」
最後に吐いてくれましたね。気絶してるんでほっときましょう。私は転がった3人の男を縛り上げ、大通りの壁際に置いておいた。そのうち見つかってくれるだろう……
にしても販売会ねぇ……大人数人が集まっているなら、ついでに奴隷を売るような真似をする可能性がある。早めに抑えとかないと
「ふぅ……お邪魔しまーす」
「フェロスさん? また来たんですか?」
私は再び商人協会にやってきた。奴らの計画を知ったからには、そこを叩くしかない
「”カラカサ”への発注の件。明日の午前までにできますか?」
「午前か……良いですか?」
「ああ、そのくらい余裕だ!」
シルクさんとベールさんが仲睦まじく了承してくれた。……準備は終わった
「……では、明日と明後日は協会を閉めたほうが良いかもしれませんね。じゃあまた今度」
「閉めるって……ってフェロスさん!?」
私は一旦宿へ向かい、計画を練ることにした
アジトはネオン街の1つのこぢんまりとしたビル。しかしその地下には、大きな空間と金庫が広がっている。”カラカサ”はこの街一帯の犯罪と裏の事象を牛耳る影の組織。下手に刺激すれば大変なことになるだろう。ぶっちゃけ私が突撃すれば解決なんだけど……何をされるかわからない。私の力を使えば、ここら一帯の中毒者の症状を直せるし、ヤクそのものの存在を消せる。しかし、それじゃあ意味がない。カレーを作るって言ってレトルト使ったらだめじゃん? しっかりとした制裁を加えなくてはならない。
……それに、彼の動向も気になりますし
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……夜、久々に窓の外を見てみた。 今日は女も居ないし、欲求不満かもなぁ……w
……転生してきたのは俺が最初だった。四天王とやらをなぎ倒し、ついでに周囲の魔物の集落を消し飛ばし、魔王の住処まで直行して3回ぐらいなぶり殺してやった。でもなぁ……意味なかったんだ。無限に復活するあいつに、何かを作れるだけの俺が、叶うわけなかった。”能力殺しの秘宝”を使っても、あいつの不死性は生まれながらのものだから効果なし……”魔法無効”を使っても、次第に単純な力にシフトされて押された…… あいつは進化し続ける、相当なチートやろうじゃ無きゃ無理だな……ははっ……
……俺も浮かれてたのかな……全てを失って、気づいたら死んでて、仮初の力で英雄になって……
……深く考えてもしゃあない。 明日には大事な”交渉”があるんだ。とっとと寝よう
……それに、やらなきゃいけないことがある
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