【第4話】
大聖堂の内部では、勇者とその下僕が何かの準備をしているようだ。彼らは気づいていなくても、私には全てお見通し…… 反省の余地は無いようですね
私は閉鎖された大聖堂の大扉の目の前まで来た
「おいっ! 只今、王命によってこの大聖堂は閉鎖されている。 内部には危険物が――」
「危険物とは……あの傲慢な勇者のことですか?」
「!? な、何者だっ!」
案の定門番に見つかって警戒されたが……
「仕方ないですね……『私を、門の中へ、通しなさい』」
「――わかりました。 門を開けろ!」
私がそう言うと、門番はすぐさま門を開き、私を中へ入れた。この『服従』……使えるのが週一なのが玉に瑕なんだよな……
「なんだ、見守りは終わったのか――って誰だ貴様っ!?」
もちろん中には勇者とその他が居るので絡まれた。さっさと突破しよう
「勇者 飯田浩二……わかりますね?」
奥にいる勇者に話しかける。彼の目の前には、半分ぐらい具現化され、半透明な謎の物体があった
「なっ! 俺の名を! ……ってことは、まさかっ!!」
「はい、お久しぶりですね」
「えっと……勇者様、面識があるのでしょうか…?」
「面識があるも何も! こいつが――」
「ええ、私が……私が女神です」
私は変装を解き、降臨したときと同じ神々しい姿を見せる。白いベールと光輝く輪、ついでに翼も出しておいた。ぶっちゃけ私に決まった姿は無いので、神っぽい姿になっとけばいい
「……!! あ、あなた様は……本当に……!」
「さあ、勇者……いえ、力に溺れた愚者、飯田浩二よ。 いい加減態度を改めたらどうですか?」
「――っ!!!」
神の圧マッシマシで言う。飯田は汗を掻きながら、下を向いたり、こっちを向いたりしている。流石に怖気づいて、更生してくれるで――
「……へ、へへへっ! はっははははっ!!!」
「…? 気でも狂いましたか?」
「神なのに気づかねぇのかよぉ!!」
飯田が私をあざ笑いながら言う。何か隠し玉でもあるのだろうか……
「俺のこの力はお前に貰ったもんだ! だからよぉ…… オメェが近くに居るとよぉ……」
「――!!」
飯田の目の前の物体の輪郭が徐々にはっきりしていく。それは、繊細な装飾がされつつ、赤と黒で彩られた、禍々しくも美しい、得体のしれない力を持った剣だった
「俺のスキルはより強くなる!! 普通なら数日かかるところがこんな数秒でできたぜぇ!!!」
飯田は剣を手に取ると私に突きつける
「とっととやり合おうぜ! この『神殺し・天斬』とよぉ!!」
「『神殺し・天斬』……なかなか大層な名前ですね。いいでしょう」
勝負を受けたが……少し不安要素もある。……『神殺し・天斬』って自分で言ってて恥ずかしく無いのだろうか。元はいい年したおっさんだぞ?
「先手必勝! 死ねぇ!!」
飯田がいきなり切りかかってきた。まさか戦闘になるとは予定外だがまあいい
「聖なる障壁・破《ブレイカー》』ッ!! ……なっ!!」
あろうことか、私の防御魔法がそのまま切り裂かれてしまった。かろうじて避けたが、なかなかに厳しいぞ……!
「魔法無効、防御貫通、絶対防御、……人生で会得できるかできないかレベルのスキルをありったけ注ぎ込んだんだよ!」
「……っ」
腕に赤い線が見える。どうやら先程の攻撃に、少し掠ったのようだ……普通ならこんな事無いが……
「防御貫通……お前みたいな奴でも簡単に切り刻めるんだよぉ!!」
またもや飯田が切りかかってくる。剣士レベルカンストから放たれる斬撃は、私でも避けるのがやっとだ。……こんな奴にチートスキルを与えた私が馬鹿だったわ
「どうしたぁ? 神なのにても足も出ないってかぁ? じゃあその手足を切り刻んでやるよぉ!!」
「ッ!! 舐められたものですね…!」
……やろう。 もうウザいわこいつ
「どうしたどうし―――ッ!」
空から、無数の光の槍が降り注ぐ。室内だが、天井を貫通してきているようだ
「『裁きの天穹』!」
「へっ! 魔法無効だって言っただ―――ガハッ!?」
飯田の腕にそれが突き刺さる。確かに、こいつの持っている装備の能力で魔法は無効だ……が
「魔法じゃ無いんだからしょうがないじゃないですか」
「ま、魔法じゃない……だと!?」
「ただ単に光属性の塊をありったけ降らせただけですよ」
「……それって魔法じゃないのか?」
細かいことを気にしない。
「魔法無効は”魔法陣や精霊の助けを借りたり、何らかの方法を使って属性攻撃を行った時”に発動します。 私はただ単に光属性をぶん投げただけなので。技名っぽいのも言っただけです」
ちなみに『裁きの天穹』という魔法はある。全然違う技だけど
「そんなん……ありかよ……!」
「ありです。だって神ですから」
自分で言ってるけど、結構無茶苦茶な理論だ
「クソッ! だがな……」
飯田の腕の傷がすぐさま閉じる
「超再生レベルカンスト……俺が死ぬことは無いィ…!!」
なるほど……並の攻撃じゃ死なないようですね……つまり目指すは
「……即死させればいいんですね?」
「できるものなら……やってみろっ!! 『魔力無効化装置』だぁっ!!!」
「……なんだかロクでもなさそうですね」
「魔法だけじゃねぇ……魔力を使う攻撃全てを消し去る。 俺も対象だがな……へっ!」
「……私は神ですが、ただ単にこの世界の管理を任されただけ。世界を書き換えたり、無理やり効果を無効にしたりするのは、制約上不可能です。それができたら、勇者の性格を書き換えてますし。だからいちいち魔法とか属性攻撃をしてるんですが……」
「何だ? 弱音か?w」
「……魔法だけが能だと思わないでほしいですね」
飯田に近づき、みぞおち目掛けて突きを繰り出す
「――ッ!! は、速いっ!?」
「流石は勇者やってるだけはありますが…… ―ッ!!」
「グフッ! ……クソ! 殴られっぱなしは嫌なんだよぉ!!!」
切りかかってきたが、余裕がないのか下手な斬りかかりだったので、軽く避けることができた
「……更生しますか?」
「……更生? 何が更生だ。 別に俺は普通にやってたぞっ!!!」
……やはり更生の余地はない
私は護衛の持っていた槍を持つと、飯田に向かって進んでいった
「お、おい! そんなもので俺をやれるわけ――」
槍が飯田の横腹を貫く
「――グッ! クソッ! いい加減にしろよな!!」
「……あなた、今まで何をしてたんですか? この国では犯罪がゴロゴロと転がっていますが」
「別にいいだろ! この国のトップは俺だ! 首都の王である俺が一番なんだ!!! 俺がいいからこの国もいいんだっ!!」
…? 神でも理解できない論理……ダメですね
「大丈夫です。 一瞬でやってあげます」
「クソッ! 死ねよ! 俺が……こんなところで――」
「勇者様! 騒ぎがあったと報告――何だ貴様は! って神々しい!」
「勇者様から離れろ! ……すげぇ光ってるけど大丈夫か?」
そういえば神の姿だったな……
流石に派手にやりすぎたか、援軍が来てしまった
「……運が良かったですね」
「お、お前ら! こいつを捕えろ! 絶対にだ!」
「……あなたが改心するのを待ってますよ。猶予は一週間です」
そう言い残して、私は遠方へ飛んだ
……お尋ね者になったが、幸い神の姿だったので普段の姿ならまだ街にいれる
都内では、「王が殺されかけた」と騒ぎになっているらしい
到底彼が改心するとは思いませんが……少し期待しておきましょう
私は例の旅人の姿となり、再び街に戻った
読んでいただきありがとうございます!
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無双シーン…むじゅい…!
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