【第2話】
いくら天界から見ているとはいえ、詳しくはこの国について見れていない
お散歩ついでに現状について調査してみよう
「そこのお姉さん!」
道なりに進んでいると声をかけられた
客引きだろうか
「見た感じ旅の者だよな? 良質な装備が揃ってるぜ」
どうやら防具やのようだ
確かに商品は黒竜の鱗を使った盾や火炎の力がこもったネックレス、岩竜の防具など超良質なものが揃っていた。もちろん、初心者用の簡素な防具まで
「なかなかいい品揃えですね」
「だろう? 俺も元々冒険者だったんだが……ちょっとやっちまってな」
そう言って店主は自身の足を指差す。大きな傷跡が短パンから覗いている
「俺はスピードを生かして戦うスタイルだったから……防具も軽いのに注目してておろそかになっててな……それ以来、俺は装備などを作りまくって、俺の二の舞いを減らそうとしてるんだ。あんたに話しかけたのも、やけに軽装だったからな……」
「なるほど……もし、その傷が治ったらどうします?」
「えっ? そうだな……今度は冒険じゃなくて、自由に旅をしてみたいかもな。もっといい防具を作るために異国を巡るんだ」
「なるほど……では、魔力を増長させれる者はありますか?」
「魔道士か……珍しい。安心しな!俺の品揃えはすごいぞ!」
そう言って店主は店の裏からローブやペンダントを出してくる
軽く鑑定してみるが……どれも値段以上の優秀な性能をしている
ぶっちゃけ防具などはいらないのだが……せっかくなのでかってみよう
「”防護のローブ”を1つ、お願いします」
「見る目あるねぇ! 54シルバーだ」
100シルバーで1ゴールド。”現世”の値段にしてゴールドは万だ。おおよそ54千円だろう
「ありがとうございます! ……あなたに幸運があらんことを」
「おう! またな!」
……これから3年くらいで足の傷を直してあげよう
「『治癒の祈り・修』……」
きっとこれで大丈夫だ
こうやって詳しく見てみると、見落としていた部分が多いな……
……ん?
「例のブツは持ってきたか?」
「や、やだよ……犯罪じゃないか……」
「ほぉん…… 商人のクセにろくに”注文”を受けられないなんてなぁ!」
「ウグッ……やめて……ください」
路地裏の方だろうか、打撃音と罵りの言葉が聞こえる
……行くか
「ブツがないなら……そうだな……10ゴールドで許してやるよw」
「じゅ、10!? そんな大金私には……」
「そっかぁ……じゃあ…… 体で払ってもらうか……俺のところで働くか……へへっ」
「そ、そんな……」
「……何してるんです?」
普通の旅人の姿ですかさず割り込む
そこにはイカツイ男とボロボロの服を来た女性の姿があった
「んだてめぇ? 俺らは用があるんだよ、ほっといてくれ」
「用というのは……無茶な要求をふかっけ、膨大な金を要求し、奴隷にすることですか?」
「なっ!? おめえ何言ってんだ!?」
「図星ですか……さ、行きますよ」
「私に……言ってるんですか?」
「行くって……バレてるんならしょうがない……コイツは俺の商品だ。連れてくってんなら……」
男がナイフを突き出す
構えからして、まだまだ戦闘経験がないようだ
「……構いません。手を出したくばどうぞ」
「…!! 俺をムカつかせやがって! 死ねぇ!!」
男は大きく振りかぶり、ナイフを私に振り下ろす
「『聖なる障壁』……」
男はナイフごと弾かれ、後方へのけぞる
「な、ふ、防がれた!?」
「今すぐトドメを刺してもいいんですが……」
私は圧を出す
「……!!! っち! お、覚えてろよ! 親方が黙っちゃいねぇぜ!」
男は落としたナイフをそのままに、そそくさと逃げていった
”親方”と言っていたので、虎の威を借ていただけなんだろう
「……大丈夫ですか?」
「あ、はい……ありがとう……ございます……」
「とりあえず最寄りの飲食店にでも入りますか」
「私はベール。商人をしているものだけど……そのほとんどの売上は奴らに取られていたの……」
ベールはことの発端を語りだした。彼女の話によれば『奴らは人々の弱みに付け込み、金を巻き上げ、最終的には奴隷にしているクズ集団!』だそうだ
「……にしても、とてもお強いんですね…!」
「まあ、長いこと旅をしてるんでね……」
「……お願いがあります」
「へ?」
「私の商人の仲間たちも奴らに奴隷にされています……どうか助けてください!」
なるほど……民を導くのは女神の本業……
「……わかりました。引き受けましょう。」
「…! ありがとうございます!」
……さて……先程彼は”親方が黙っちゃいない”と言っていたが……おそらく向こうからやってくるだろう
普通に迎え撃てば行けるだろうが……そうだ
「それではベールさん。この宝石をあげます」
「? これは……なんですか?」
「私の魔法が込められた魔宝石です。簡易な防御魔法がかかっています。あなたを守ってくれるでしょう」
っと言うのは嘘だ。実際には、誰かがベールさんに危害を加えた時に、私に知らせが来るようになっている。
「それでは私はこれで」
「え、あ、ちょっと!」
私は二人分の料金を払い、そのまま店を出る
気配を完全に消しているので、追ってくることはないだろう
しばらく進み、私は再び気配を出す
……城壁に囲まれ、石の壁や木の柱で作られた建物がこの国の住宅部を構成している
そろそろ中央部……すなわち首都の中の首都へ向かうのもいいだろう
私は再び気配を消し、移動魔法を発動した
王都クリスタ 中央都市レイ
私を祀るための大聖堂や、冒険者ギルドの本部、商人協会の本部など、様々な団体の中心点であり、最も人が集まる場所だ
人が多いということは……それに伴って犯罪も増える
……ほら、あそこで財布がスラれた。あっちでは麻薬の取引が、向こうでは労基法に違法しまくってるとこがあるね
これも全て、今の王……つまり勇者 飯田浩二 が政治を疎かにしているからだろう……
「そうだな……『裁きの万雷』」
しばらくすると各地で悲鳴が聞こえる
さっき言ってた犯罪者が雷に撃たれたのだろう
……大丈夫、失神させただけだよ
分身体を作り、被害者の元へ送る
「あ、財布落としましたよ」
「労働基準監督署のものですが……」
分身にも変装を施し、状況にあった反応をさせる。神にとっては容易いことだ
……さて、解決かな?
ちなみに麻薬は消滅させておいた。販売元にも呪いをかけてっと
本来ならこういうのは神が干渉すべきじゃないんだけど……
……大聖堂にでも行くか
ここから約1.5キロ向こうにある大聖堂。特徴は天まで伸びる高い塔が立っていること
二本の塔が向かい合って伸びており、間には私が人間界に預けた宝具が何故か浮いている
大きく光り輝く球体の宝具を伝って、私に祈りが届くのだ
もちろん私は歩いたりしないでワープを使う
かなり便利な上、無駄な隙きもない。デメリットは、使えるのが私だけということだ。つまり神の御業
「……ん? 閉鎖されている」
やたら人混みが多いと思ったら、大聖堂の門は柵やロープで守られていた
「大聖堂内で危険物が発見されましたー!」
「数日の間閉鎖しまーす!」
「祈りはご自宅で行ってくださーい!」
「お引取りくださーい!」
王国の騎士と見られる者が規制を行っている
もちろん危険物なんてない。大聖堂の中には数人の人が居るようだ
……行ってもろくなことにならないだろうし、警戒されるのも面倒くさい。やめておこう
いずれにせよ、何か動きがあるのは間違いない。要チェックだな……
次はどこへ行こうか――
――!!!
どうやら例の宝石から連絡が来たようだ。
すぐにワープし、気配を消す
「あれぇ? さっきの女は居ねぇみたいだなぁ?」
「とっとと持ってこうぜ、兄貴ぃ」
「おいおい、貴重な商品なんだから丁寧に扱えよな」
絶賛カツアゲ中らしい
ベールさんが何人もの男に囲まれている
……行きますか
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大聖堂 内部
「勇者様、本当にここでいいんですか?」
「ああ、ここなら全てが上手く行くはずだ……」
大聖堂は人と神の交流ができる唯一の場……市民に悪影響があるとふんで、神も破壊はできないだろう
ならばソレを利用するまで……
「遅くとも3日で完成するさ……”神殺し”の武器がなぁ!」
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サクサク話を進めたいのですが……難しい……
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