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【第21話】

 音の鳴った先、そこには無惨に散らばった木片と、崩落した家屋があるだけだった。


「っ、遅かったか……」


「何そんな全滅したみたいな反応してるの?まだ近くにいるはずだよ、とっとと探そう」


「そうね……私は右行く!」


 カイラの返事を聞く前に、私は全速力で駆け出した……が、今や私はただの小娘、全然進まないしすぐ息切れしてしまった。肩を上下しながらカラカラの呼吸をする私に、ゆっくりカイラが歩いて近づいてくる。


「バカじゃないの?こういうのはちょっとずつ手がかりを探していくもんなんだよ。たとえば……」


 カイラが嘲笑いながらも冷静に現場を調査し始める。そして彼は木片の散らばった地面を指差した。


「木片はここを中心に八方に飛散している、そしてこっちに引きずったような土の痕、さらに潰されたトマトがこっちに引伸びている。だから()()()()()()()()()は……こっちだ」


 カイラがポカンとしている私に逐一説明したあと、スッと指を村長の家の方へ向けた。


「おそらく僕らに残った魔力に引き寄せられたんだろう……音がしてからここにくるまでの時間、そして被害から想定できる魔物の大きさを考えると大体……はぁ、ほんとに君神だよね?無能すぎる」


「な、無能って!私だって魔物一匹屠るぐらい……前は簡単だった!」


「はぁ……とにかく、早くしないと色々被害(面倒)が増える。とっといこうじゃないか」


「ぐぬぬぬ……わかった、いくよ!」


 突然の罵倒で心を折られたところで、私たちは急いで村長の家の方へ向かった。なかなか体に応えたが、できる限りの力で走り切った。進むにつれ、周りの損壊がひどくなっているのがわかる。寂れた建物は、今やただのスクラップに等しいかもしれない。


 走り続け村長の家に着く前に、私たちは巨大なトカゲのようなモノに遭遇した。おそらくこれが犯人と見ていいだろう。鋭い爪、尖った歯、大きな目、派手な体表、そして小さめのベッドくらいの体長、まさに“デカくて強そうなトカゲ”であった。


「お、お二方!まだいらっしゃったのですか!?」


 そこには茶色に古びれた剣を構える村長の姿が、どうやら足止めしてくれていたらしい。村長の汗と服についた土の量から、結構の間戦っていたようだ。かなり歳いってる見た目だったのだが……恐るべし爺さん魂。


「こいつか……見た感じ中級のランドリザードってとこかな?とっととやるよ」


「こんなことならこんな適当にトカゲを拡大してトゲトゲさせたやつ造らなきゃ良かった……わかった、いくよ!」


「お二方も手伝ってくださいますか!私は村人の避難を優先させますゆえ、ここはお二方にお任せいたします……忝い……」


 村長は自身の責務のため離脱、ぶっちゃけ彼を巻き込みかけないのでいない方が助かるかもしれない。私とカイラとトカゲの1v2、いける!

 私とカイラはトカゲと二等辺三角形を描くように陣取り、それぞれさっき買ったばかりの武器を構える。私は簡素な魔力樹(そこら辺の木に魔力ぶち込んだだけ)の杖を、カイラは軽い金属の片刃の剣を取り出す。前まではお互い武器なしで戦えていたが、流石に今はキツい。トカゲはグルルルと威嚇をしたあと、目を見開いて警戒を強めている。


「いくよ、カイラ!」


「はいはい」


 合図とともに一斉に攻撃を始める、私が光魔法で遠距離から攻撃し、カイラが斬撃で致命傷を与える……これが私の脳内プランだ。


「よし、『魔導光線』!」


「『疾風切り』……ってーー」

 

 数秒かけて溜められた光の魔力が、弾けるように一直線に放出される。黄色とも青とも取れる白い光は、細い螺旋を描きながらトカゲの方へ進んで行った。カイラが剣を後ろに構え、前傾姿勢をとる、さながら居合い斬りのような形だ、鞘はないけど。少量の風の魔力を剣に含ませ、自身も風によって推進力を得る。

 お互いの攻撃が始まり、トカゲは一瞬身構えたように見えた。私の『光線』でトカゲを追い詰め、カイラが切り伏せる……そうなるはずだった。私の攻撃は見事に横に踏み出してきたカイラに直撃し、仰け反ったカイラはそのままトカゲの尻尾振りに吹っ飛ばされてしまった。


「ーー馬鹿!アホ!何やってんだよ!」


「こっちのセリフだわ!普通前行くでしょ!」


「ランドリザードは目と足潰すのが基本だよ!神なのにわかんねぇのか!ーーって!」


「あっぶーー」


 言い争っている間にトカゲが一気に距離を詰めてきた。迫り来る攻撃を前に寸前で横に身を翻すが、その力強い腕と爪が私の腹部を直撃する。ローブが文字通り皮一枚で耐え切ってくれたが、それでも私の受けたダメージは大きかった。カイラも剣で防ぎつついなしたが、パキンと刃が折れてしまったようだ。


「クッソこの安物が!気を抜くなよ、死ぬぞ!」


「うぐっ……デカいぶん痛いね……!『光刃連斬』!」


 頭に血が上ったまま魔法を唱える。私の持つ杖が周囲に複数の光を形成し、それが三日月状の刃となる。一気に発射された刃は空気を裂きながら突き進み、私の前方にある種の弾幕を形成した。トカゲは迫り来る斬撃を前に大幅な回避を余儀なくされた。その巨体からは信じられないほど跳躍し、宙で身を翻す。しかし避けなければならないのはトカゲだけではない。もちろん前方にいるカイラにも攻撃は向かう。

 カイラも後ろに蹴りさがり、私の斬撃を避けようとする。しかし先ほどの斬撃で脚力を使ったことや、身体能力が落ちていたことも相まって攻撃範囲から完全に外れることができなかったようだ。向かってくる刃を折れた剣でいなしながら、カイラはなんとか攻撃を乗り切ってくれた。


「あぶないなっ!やたら無闇に広範囲攻撃するんじゃない!僕まで死にかけただろう!」


「ご、ごめん、血が上ってた。ってかこの身体、魔力が少なすぎる……」


「全く、本当に無能な()女神だな!」


「うぐぐ……」


 ぐうの音も出ない。うぐぐの音は出たが。カイラは再び戦闘の構えをとり、ちょうどその方向にトカゲが着地した。ズンと大きな音をたて、のそりとこちらを向く。私も杖を構え直し、今後の戦略を練る。私とカイラの連携は壊滅的、一体どうすれば……


「悩んでるところ悪いんだけどさ」


 カイラが沈黙を破った。その声は威圧感を感じつつも「共通の敵を倒す」という意志を感じられた。こういうのも心外だが勇者ムーブしてる気もしなくもない。


「君魔力ないんでしょ?それに僕らの連携ははっきり言ってゴミ、アイツをやれたとしても僕が死にかねない。だから君は僕に全力でバフを与えて、短時間でもいい、まさかできないなんて言わないよね?」


「バフね……はいはい、やってやりますよ!『閃聖加護』!」


 光魔法にはバフ系が多い。教会のシスターとかがやたら光魔法先行してたりするのはそれのせいだ。え?私が光の神だからだろって?まあそれもあるだろうが…… 『閃聖加護』は一定の指定した相手に短時間だが強力な肉体強化と魔力増加を与えるバフ魔法、今の私のような低魔力の人でも低コストで簡単に大きなバフを与えることができる。バフ魔法の初歩的な奴だぞ!

 バフを受けたカイラのスピードは何倍にも上がり、それに伴って威力も増加した。一瞬で次の構えに移ったカイラは大きく踏み込み姿勢を低くする。おれた刃を横に構え、トカゲに急接近する。


「ランドリザードは目と足潰すのが基本……『辻薙ぎ』」


 横に構えた剣で、トカゲの横を通過すると同時に薙ぐ。辻斬りを超えた『辻薙ぎ』、たとえ欠けた刃でもトカゲの身体を引き裂いた。あいつ本当に力失ってるのか?気づけばカイラとトカゲは大きく距離を空けており、トカゲは足を失った椅子のように倒れ込んだ。片側だけだが、目と同時に足を切り伏せトカゲの動きを大幅に制限することに成功したようだ。


「……君もうバフだけでいいんじゃない?」


「少しは感謝しなさい!結構疲れるんだから……っ!」


 多大なダメージを与えたからと言って油断してはならない。すっかりこちらを向いていたカイラに、最後の力を使ってトカゲがその裂けかけの大口を振りかざしてきた。カイラは完全に油断し切ってまだ気づいていない、つまり私がやるしかない。


「しゃがんで!『魔道光線』ッ!」


「っ!あぶーー」


 カイラがしゃがんだ瞬間、私は溜めた魔力を放つ。光の線はトカゲの脳天を突き抜け、トカゲはカイラの横にドサリと倒れ込んだ。緊張から解放された私も、ゆっくりとしゃがみ込む。のそりと立ち上がったカイラが私の前に立った。


「……結構大胆なことするんだね。ちょっとでも僕が遅れてたら……少なくとも僕は今頃ハゲてたかもね」


「こんな時に……冗談言ってるんじゃないよ……全く……」


 最後無理やり魔法を使ったからか、貧血のようにフラフラとする。どうやら休まないといけないようだ。カイラは呆れたようにため息をつき、私の手を引っ張る。


「こんなところで寝ないでくれる?全く……ま、助けてくれた恩は返すよ」


 私は薄れゆく意識の中、カイラに無理やり引きずられる感覚で眠りに落ちた。

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戦闘シーンでした。結構頑張ったつもりです()

1章のプロットはできてるのでこのまま続けていきたい…!


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