【第19話】
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「おい、おーい」
気を失って倒れている海斗を強引に引っ叩く。なかなか起きないので、痺れを切らした私は近くにあった棒で海斗の首元を思いっきりぶっ叩いてみた。
「いだっ!? な、何が起こってーーーっ!お前は!」
「はいはいそうです、あんたの仇の“元”女神よ」
目を開けたと思えば、海斗は飛び上がって私と距離を取る。私を睨みつけるその顔は、やはり以前の海斗と変わりなかった。私の言葉を聞いて、海斗は一度力を抜いて警戒をといた。
「“元”……?そうか、君は力を失ったんだね?」
「ええ、流石にやりすぎたわ。でも、それはあんたも同じでしょ」
海斗はハッと短いため息を吐くと、馴染みのある舐めたような口調で続けた。
「やっぱりかぁ。さっきから前あった様な込み上げる力を微塵も感じない。ま、これでお互い一般人というわけかな?」
海斗は立ち上がりあたりを見渡す。何もない平原の遥かに、小さな村の様なものが見えたようだ。
「あては君しかいないんだ。とりあえずあの村まで行こうじゃないか♪見た感じそこそこ大きいみたいだし……なんだよその顔は」
「なにって……なんでそんな馴れ馴れしくしてるの?敵同士だよ?私たち」
「まあそうなんだけどさ……そもそも話しかけてきたのはそっちだろう?なんでわざわざ起こしたのさ。そこらで魔物に喰われるのを待ってればいいのに」
さっきから妙な対話が続いているが、確かに彼を起こしたのは私だ。私は小さくため息とついたのち、海斗に言った。
「ここはあんたが魔王砲をぶっ放す前の時間。誰もあんたの本性を知らないし、誰も支配されてない。あんたや他の勇者の能力が失われたことで今まで魔王を抑えていた力も弱まりつつあるの」
「へぇ、でもそれじゃあ僕への質問の回答になってなくない?」
「最後まで聞いて……私が力を失ってまでここにきたのは、『最後の勇者』として魔王を殺すため。それに、力を失ったといえ勇者たちの能力は他の人を遥かに凌駕しているはず。また驕ったりしない様にしなきゃね」
私の使命はこの通り盛りだくさんある訳なんだけど……私が説明すると海斗はまたため息をついて呆れた様子でこちらを向いた。
「さっきも言ったけどね、少なくとも僕の力は完全に失われてるんだ。身体能力も平均的な人間とさほど変わらない。他の勇者も同じだろう、今頃民の反感を買って謀反でも起こされて死んでるよ」
天界の予想とは違い勇者の力は完全に失われたようだ。ならばやるべきことは一つ減った訳だ
「……さっき私が力を失ったって言ったよね?だからこの世界に散らばる私の分身も消滅しちゃったと思う。それか天界に帰ったか。だからもし魔王が復活しても勝てる見込みは……」
「限りなく少ない……とね。あの旗を見るんだ、あれはクリスタ王国の軍旗のようだよ。それも僕が王位を得る前のね。どうやらだいぶ前に戻されたようだねぇ♪」
確かに目の前には巨大な、それもまだ新しい旗が掲げられていた。つまりこの辺りはクリスタの統治下ということである。大体クリスタから周囲10kmほどは統治下だったはずだ。
「……まてよ、クリスタが近くにあるなら彼女にあえるじゃん!海斗、あの村に着いたらソッコーでクリスタに向かうよ!」
「まてまて、同行するのはいいけどさ?僕の質問にまだ答えてないよねぇ?改めて聞くけど、なんで僕を起こしたのさ?」
こいつ……めんどくさいな、普通に。私は一刻も早く彼女に会わなきゃなのに……こんだけ引き伸ばしてるんだからほっといてくれよ…… 私は一度大きく俯いてから海斗の方をみて言った。
「……さっき私の分身が消えたか天界に帰ったって言ったよね?いずれにせよおそらく彼女らの余波は残ってるはず。彼女らがいた場所に訪れれば私の力も少なからず回復するかも……それもダメージを負わないちょっとした加護程度だけどね。それであんたを起こした理由は……」
いまだに海斗の問いに答えられていない。一瞬考えた後、私は口を開いた。
「……特にない」
「……は?こんだけ長々と説明しておいて?もっと利用するためとかなんとかないのかい?」
「強いていうなら!……その女神たちの場所をしってるかなーって……それに1人より2人の方がいいでしょ?」
我ながら酷い言い訳である。実のとこ海斗を起こした理由はほぼ無いに等しい。なんかその辺にすっころがてってたから起こしたにすぎない。
「それに……」
「なに?まだあるの?」
私はさらに付け加える。カイトは眉を顰めて地団駄を踏み始めた。相当鬱陶しいらしい。
「……それにあなたの実力は認めてる。きっと心強い味方になってくれるかも……なんて」
「……ふーん、なるほどね」
海斗がそっぽを向いた。彼が少し考え込んだ後、彼はぶつぶつと何かを言い始めた。
「さすがにカイトの名前を使い続けるのは厳しいしね。君は偽名があっていいねぇ。そうだな……カイト……五十嵐海斗……イガラシカイト……うーん……なにがいいかな……」
「……ん?ちょっとまって、もしや自分に名付けようとしてる?」
「……そうだけど?流石にカイトなんて名前をこの風貌で使ったら色々目立つだろう?勇者への反乱が始まれば僕にも被害が及ぶかもしれないし。あと君もやったんだしなんの問題もないでしょ?」
「はぁ……好きにずれば?なんて名乗ろうと自由だし」
そこから数分後、黙り込んだ海斗がようやく口を開いた。
「……カイラでいいか」
「……はぁ?そんなのでいいわけ?」
「好きにしていいんだろ?どうせ仮だし。テキトーでいいんだよ。今日から僕はカイラだ。よろしく♪」
こいつこんなキャラだっけ?能力と一緒に大事な何か取られてない?困惑しつつ質問を続ける。
「苗字は?」
「余った文字を合わせてイシトガ。カイラ・イシトガだよ」
「……やっぱ能力と一緒に頭のネジ取られた?」
「やっぱってなんだよ。いいじゃないか。さ、とっとと出発するよ?」
「あ、ああ……」
いろんな意味で豹変した海斗改めカイラは、そのまま村の見える方へ駆けていった。おそらく私の力を奪ったことで思考に影響が……?そんなわけないか……そういえば私って苗字あったっけ?そんなことを考えつつ、カイラの後を追うのだった。
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いやぁ……新章ですよ。はい。ここからどうするか……今回はできるだけバテないように頑張るます!
ちなみにコレは第二章じゃなくて第1章です。前のは序章です。
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