【第1話】
……今思ったけどこんなに大々的に降臨したら勇者にバレるよな
この姿で勇者の元へ行っても警戒されたりするかもだし……できるだけ民間人には手を出したくない
……そうだな……変装!!
私は髪を黒茶色にし、麻のローブをまとった旅人に変装した(つもり)
オーラも抑え完璧、決してバレることはないだろう
「…ん? 嬢ちゃん、こんなところで何を?」
気前が良さそうな大男が話しかけてきた
身なりからして商人だろう、今は物資の搬入中か?
確かにこんな大草原の真ん中に居るのはマズイよな……
適当に話をしておこう
「だ、大丈夫です! ちょっと迷ってしまって……」
「そうだったのか、俺も今から物資を届けに王都へ向かう途中なんだが……案内してやろうか?」
「い、いいんですか!?」
「なあに、俺もついさっきいきなり大量の物資の要求が来たんでね……あんた多分旅人か冒険者だろう? この先物価も上がるだろうから、ほら、乗りな!」
私は馬が引く荷台に乗せてもらった
こっそり移動速度上昇でもしておこう
「……あ、俺はシルク。そこそこ儲かっている普通の商人さ。 あんたはなんて言うんだい?」
な、名前か……どうしようか……
本来の名前を言えば、この地で崇められている私の名前と一緒だと気づいて何かとマズイ状況になるだろうから……
「えっと……フェ、フェロスです!」
「フェロス……変わった名前だな」
結構安直な名前になってしまったが……いいだろう
「……てかなんであんな場所にいたんだ?」
「あ、えっと……」
どうにかして説明しなければ!
「ちょっとドラゴンに弾き飛ばされてしまって……気絶しているところを”獲物”として巣に持ち帰られて……途中で落っこちていたんです!」
「よく生きてるな……」
「こう見えて魔法は得意でして……持続型の結界を自身につけていたんです」
「俺は商人だから魔法とか詳しくないが……ま、無事で良かった!」
豪快に笑うその様から、いい人なのは確定的だった
「――そろそろつくぞ。起きろ!」
「へっ!? 眠ってましたか?」
「ああ、俺が黙るなりすぐコテンって」
「ああ、教えてくれてありがとうございます!」
眠ったのは罠である
悪人なら、眠っている間に誘拐でも何でもするだろう
「ほら、アレがこの国の首都にして【光の都 王都クリスタ】 だ」
あの国についてはよく知っている
実際、私を祀る協会や像が生まれたのも私が最初に降り立ったのも、この地である
どうやら街の中は混乱に陥っているようだ
――!!
「……シルクさん。東門から入ってくれますか?」
「東門? いいが……何かあるのか?」
「なんか……嫌な予感がするんです」
「おう、分かっ――」
その瞬間、大きな爆発が目の前の北門……一番大きく、一番使われている門で起きる
悲鳴と共に門が崩れ落ちる
「『|聖なる障壁・破』!!」
「た……助かったの?」
「い、生きてる! 生きてるぞ!」
「女神様のご加護だ!」
実際そうなんだけどね……
私はすぐさま結界魔法を発動させ、瓦礫がら人々を守った
この結界は触れたものを消滅……正確には超極微塵まで粉砕できる
もちろん、人には無害にしておいた
「『再生の願い』!」
またたく間に、門は元へ戻っていく
「お、おい……この未知何年も商人をやって各地を渡り歩いてきたが……こりゃすげぇ……」
「い、嫌な勘が的中しましたね…!」
ちなみに魔法は殆どのものが呪文を言わないと発動できない
それは私も同じだ。しかし、私は超小声も出せる!
「……あ、もう北門からでもいいですよ」
「お、おう……そうか……」
私とシルクさんは北門を通り王都の中へ入った
「通行書と身分を確認できるものを」
「わかりました……はい、商人証明証だ」
「商人のシルク様ですね。こちらは我々が注文した物資ですね……協力感謝します!」
「いやいや……王からの頼み事となれば……ね?」
「そうですよね…… こちらのお嬢さんは?」
「あ、私は別の者です。 身分証と武装免許証ですね」
たった今作ったものだ
身分は平民にしておいた
「ありがとうございます……フェルスさんですね。入都を許可します」
通行許可証をもらいシルクさんに合流する
「案内ありがとうございました!」
「いやいや、俺は当然のことをしたまでだよ! じゃあ、またどこかで!」
そう言ってシルクさんは去っていった
……その清き心に免じて加護を与えよう
私はシルクさんに多少の金運アップと避災の願いを与えた
これで幸せな生活が送れるだろう……
……さて、本題だ
ホントなら今すぐにでも行けるが……改心の余地がある
数日間は街を回ろうか
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数日前
「お、王よ、勇者様よ! 女神様が降臨される!」
「女神ぃ? ああ……あの転生したときの……ん? 女神ぃ!?」
「ええ、女神様です! たった今、数時間ほど前に天から光が降り注いだと報告が……」
俺はコウジ。数年前に異世界転生して、レベル、魔法、ステータス、全てがカンストしている
まさに”強くてニューゲーム”だなw
そして能力【生成】を得た
俺はありとあらゆるものを生成できる。輝く金貨から漆黒の龍の鱗、ましてや”空間”そのものを作ることができた
ありとあらゆる能力を秘めた剣、つけているだけで無敵のペンダント……俺はそれらを装備している。もちろん俺が作ったやつな!実在しなくてもイメージだけで作れるんだ
ここ一帯に住む人はこの力に平服して、俺の配下、そして国民になった
そう、俺は一国の王になったんだよ!……独裁的ではない、ちゃんと民主主義だ。
俺がこんな力を持ってこの世に来たときな、ちょうど怪物に街が襲われてて……女神の言う通り助けてやったら、持ち上げられまくって……たしか魔王の配下だったんだっけ?
「勇者様!勇者様!」って……へっへ、面白いくらいに崇めてくれる
スキルのおかげで太ったりしないし、イケメンだし、女も金も無限に湧いてくるし、身の回りのことは配下がやってくれる。まさに俺の世界が完成してるんだよ!
だがな……俺も血が疼くってんだ。こっそり魔王軍の残党(笑)とかゴミみたいな小国に一人で突っ込んで……一暴れしただけなんだけどなぁ……w
……まあ、他の奴らがちょっと怖いが
だが……女神が降臨した?
一体何のために……
「啓示によりますと……『勇者は力に傲り怠慢に陥る。世の危機を予見し、我降臨せん』だそうで――」
「勇者が怠慢? 俺が? そ、そんな理由で……」
「そろそろ魔王の復活も近そうですし……どうします?」
まじかよ……何するつもりなんだ?
「わかりませんが……武力を蓄えておきましょう。」
「それなら俺の【生成】が……」
「そうですが……貴方様には力を蓄えてほしいのです」
そうだな……流石に”神にも勝る武装”を作るには集中しなくてはダメだな……
「分かった。ありとあらゆる商人に物資を大量に頼め、主に食料だ、武装は俺がなんとかする。」
「御意!」
……さあ、本気を出せそうだなぁ!
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