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いらっしゃい
魔術陣の正体が判明した。
極論を言えば魔術陣と媒介は同じといえる。
要は、意思の受け皿だ。但し、魔術陣と媒介には大きな差がある。1番大きな差とは何か?
例えば師匠こと魔王様は最強の魔法耐性を持っている。魔王様と一緒に媒介に力場の乗った魔力を貯めた場合。当たり前だけど魔王様の魔力が僕の魔力を侵食して媒介内の魔力は魔王様単体の魔力しかない状態となる。ここで分かる事が出てくる。それは、媒介は魔力を漏らさないが生物は不完全で魔力が漏れまくる媒介であるということだ。
「…おはようございます」
ふっ、考えるのは辞めないぜ?!
魔術陣とは要するに媒介に一定の役割を持たせて無理やり他者の力場を弾く事で魔術陣に溜まる誰の物でもない魔力を外部から施された術式によってこれまた無理やり魔法へと作り直し、超現象を起こす装置。故に自然界の魔力とは誰の物でもない魔力となる。さて此処で疑問が出てくる。
どうやって無理やり誰の物でもない魔力を魔法にしたかだが……わからん!今の状態ではな!それと世界の魔力をひとつの魔法に集結出来るのでは?
まぁ、無理だな。媒介となる素材が世界中の魔力量に耐えられる訳がない。耐えられたとしてそれを魔法として変換する時に暴発する。
成功したとして魔法である限り時間経過で意思が薄れると再び自然界の魔力魔力へと戻る。
何が言いたいかと言うと、魔術陣は、誰の物でもない魔力を貯める器で、媒介はその人の魔力を貯める器である。「…満足です」睨まないでください。
媒介であるのだ我が身は。
怖いのでそろそろ修行にもどりますか……。
……表に出す時白紙に戻せばいいだけ。
………………。
「合格だ」
魔王様からの拷問もとい有り難き日々を受け入れるより、たった一言の飾り気のない言葉が飲み込めなかった。やった事と言えば、ただ自然調和しただけだ。魔力を使わず、力場に包まれた肉体に触れた微かな魔力を反発しない程度に侵食させ吸着させただけだ。これならば、いくらでも出来る。魔力遮断の応用であり、確かに考えなくても出来る。
「……次は何をしましょうか?」
「お主らしくないな、もっと喜んだらどうだ?」
……拍子抜けですのでとは言えないよなぁ。
プライドにかけて。
「いえ、流石に疲れただけです」
魔王様はゆっくりと目を閉じて微かに頷いていた。
どうやら世界最強はこの……名前ないのかな?
「あの、なんて名前なんですか?これ」
「?魔力密閉と呼んでいる。忌まわしきスパイマーダーから学んだ力だ」
スパイマーダーって確か、蜘蛛の魔物だっけ?アラクネとは別種で隠密特化型の。
なるほど、魔力密閉か。わかり易ていいな。
「うむ、さて……今度は移動法だな」
忍者を連想すればいい。音の無い移動。悟られない尾行。待ち伏せ時に違和感を与えない。など。
さて、困った。気配遮断は出来ても音の無い移動なんて不可能だ。早く動き過ぎても空気の流れが出来てしまう。出来てしまえば存在を悟られる。
悟られれば意味がない。合格ライン?スパイダー程度でいいってさ。もちろんキラートラップの異名を持つ割と上位種である。え?蜘蛛の魔物で1番低異種なのは何って?ハイドバックです。確か、冒険者の間では油断したらハイドバックに食われるぞという教訓があるらしい。まぁハイドバックはゴブリンを捕食し、条件次第でゴブリンキングすら喰らうのだ。当然の教訓といえばそうだな。但し、奇襲が失敗したらなんて事はない、足が遅く蜘蛛の糸も出せず、攻撃と防御力が高いだけの雑魚。ゴブリン10匹が武装したら勝てる程度だし。
「1分だ」その声と共に意識を手放した。
お疲れ様でした。