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未定  作者: ヨユル
28/29

第22話(仮 ルート2

いらっしゃいませ

村の子供たちの遊びとも訓練とも言える日常に感心する。

1日住んでみての村の第一印象が「歪な村」である。

足跡が村人の数に比べて極端に少ないのだ。

足跡について聞いたら極端に増えた。

まるで古い足跡を隠すように新しい足跡が地面を覆い尽くす。

子供の遊びは単純な駆けっこである。

但し、勝ち負けは無い。

後ろ向きに走る人の足跡に自分の足跡を列を乱さないように可能な限り正確に重ねて走る。蛇行して徐々に速くなるとみんな楽しそうに足跡を重ねる。子供たちは足の大きさで絡む人を選んでいる。一通り走り終わった子供たちは自分の足跡を観察しながら、正確性を弄り合っている。普通はしない遊びである。

訓練としては足跡を一つに装って相手に敵は一人だと誤認させ奇襲の成功率を上げたり、逃げに徹する際、発見される可能性を最小限に留めることが可能になる。特に数を誤魔化せるのは大きな反撃の武器になる。これだけの事をしなければこの村で生活が送れないということの証明でもある。


一般的な子供たちの遊びであるかくれんぼも異次元である。

足跡を誤魔化したり敢えて踏み外す事で他人を装おったり、水を撒いて泥を作って鬼を罠に嵌めようとしたり、草むらに時差で解ける紐を括り付け鬼を撹乱したり誘導したり。

子供の観察だけで1日が過ぎるほどである。

例えば愚直に追い掛ける様な魔物に対してかなり有能な手段だと言える。時として聴覚の情報は視覚の情報をより上回る。その聴覚を誤魔化せるのは情報戦においてかなり優位であるからだ。

そして彼らの服装は、青臭い。雑草の色に染められた布で体を覆う。痒そうな蕁麻疹が出て、必死に掻かない様に気を遣っている子どももいる。掻かない理由は血が出るからだという。

身体中雑草塗れ、中には毒草もあるだろう。


「逃げたかと思った…」

完全装備を取り外しながら彼女がそう言う。

「すごい村だね」 

途端に貼り付けたような笑顔が消えた。

「他の村は知らないけどこの村では当たり前のことよ、別に凄くもないわ、褒めないでくれない?子供たちが浮かれて慢心したら貴方のせいよ」

「…それはごめん」

子どもたちを遠くで見守っていてよかったと強く思った。

関わっていたら褒め倒していたかもしれない。

「まぁ、良心を使った罠のはめ方とその対処法は教えたから今外で遊べている子たちは慢心しないでしょうけど…」

「遊べている子たち?」

「優等生ってことよ、それよりこの村どう思う?攻めるなら何処狙う?」

「…え?そんなこと考えてなかったけど、そうだなぁかくれんぼでもしてる子ども拐って魔物に襲わせて満身創痍にさせてから1日監禁して、警戒心の高まった村の付近に記憶を消した子どもを隠す様に置いて見つけてもらって、討伐隊が森の調査に出てる間に最も手薄になっている村の出入り口付近へ魔物を誘導するかな」

「それで?」

「…火矢でも打ち込んで混乱しているうちに討伐隊と鬼ごっこでもしながら複数班を装うかな」

「裏切りを疑わせて外敵からの攻撃に日夜警戒させ、消耗を狙うか…なるほど」

そもそもこの村の周辺は見渡しが良すぎる。攻めるなら堂々とした方が相手を不安がらせるには向いている。

囲うには広く、相手が一点突破を強行したらまず抑えられない。

相手は森での戦闘を主軸においている。普通なら勝ち目はない。

逃げられたら、厄介だ。下手でも隠れられたら罠を疑わなければならない。ただ隠れるだけというのはあり得ないだろう。

素直に話し過ぎた。これじゃぁ襲うつもりで下見してましたなんて言っている様なものだ。

「やっぱり君は危ないね」

「…敵対の意志はないです」

「そうでなければ私は全力で君を排除しなければならないよ」

「…本当に勘弁してください」

マトモに魔法が使えない。囲まれたら生きて帰れない。

相手の集団に勝てるはずが無い。

地の利がないので逃げ切るのも辛いだろう。

「…あの」

「これちょうだい!」

銀色の器を左手に持ちながら右手はダイヤやらなんやらの宝石を握っている。

「えぇ、どうぞ」

「やった…!これ上げる!」

そう言って投げ渡されたのは布切れである。

「…男子には人気なんだけど要らない?」

「…要らないかな」

「ふーん…まぁいいけど、じぁこれ上げる」

そう言って投げてきたのは一枚のコインの片割れである。

「なにこれ?お金?」

「私の信用の証かな…この村で信用を得る一番簡単な方法かな」

「なるほど…銀の器と一握りの財宝で信用が得られるのか」

「まって、そんな安くないわよ!私の信用は!」

てっきりその対価だと思っていた俺にしてみれば予想外である。

「…そろそろ唾つけとかないと盗まれそうだったし」

挑発的な魔力の垂れ流しで皆んなに警戒されていたが、それが彼の普通だと感付き始めた女性陣が密かに彼(財産)を狙い合い、牽制し合っていた。その熾烈過ぎる争いを他所に子どもを見つめ続ける彼に好印象を与える為に彼女は色々しているのである。

その一つにコインを渡すことも含まれている。


「…まだ名前思い出せないの?」

「そう言う君の名前は?」

「…まだ思いついてないのよ」

「適当な名前でいいよ」

「そうね…アカイでいいかしら」

「分かった」

2日目も過ぎようとしていた。


お疲れ様でした。

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