19話
いらっしゃいませ
ラリャの用意した装備を渡され軽装備とはいえ手間取りながらも着替え終わる。
「…さ、行くわよ!」
フル装備のラリャに手を引かれて足取りを合わせる。
「俺は何をすればいいんだ?」
「あー、護衛かな?」
まだ活気づいてないナサルバの商店街を横切ると、開けた広場の先にある城門の前で、明朝から待機している馬車が見えてきた。
「あの人と馬車を守れば依頼達成よ」
「分かった」
気の良さそうなおじさんが馬車から出てくると、足元から頭まで一瞥し、突然、高圧的な態度に激変した。
「ったく、てめぇらにゃマトモに払う金は一銭もねぇが、道中、投げ出されでもしたら困るから最後まで雇う事は約束する。が、減給される事に納得してるんだろうな?」
「あの時はほんとに事情が有りまして、すみませんでした。道中の安全は保証するので、これ以上の減給は勘弁してください」
「期待はしてねぇが、中級だろ?命掛けろよ」
「……」
「おめぇは一言も喋らんのか」
「申し訳ない」
「はっ、もう出発の準備は終わってるんだろうな」
「はい」
「よし、行くぞ」
門が開き、馬車に乗り込むと、そこは外見よりも広い。魔法で空間を拡張する作りになっていた。
「これは凄いな」歪みの無い魔力の巡りを肌で感じる。「魔術陣で広がってるって噂らしいよ」
「へぇー」
「警戒は怠るんじゃねぇぞ」
「はい、スレイブ今のところ敵とかいない?」
「居ないかな、まぁ警戒は続けるから」
「お願いね」
外を見れば魔物数体が冒険者に追われている気配が幾つかある。
森が右側に広がっているので、いつこの馬車が魔物に襲われるか分からない。
「暇だ」
森の中で命の奪い合いが行われている一方、只、馬車に乗って揺れているだけで何も起きないのは退屈してしまう。
「何も無いのはいい事だよ」
「普通に稼ぐよりも儲かるんだろ?」
「そうだね、儲かるわ!」
「おい、そーゆー事を雇い主の前で言うんじゃねぇよ、何か起きる事を前提に雇ってるんだぞこっちはよ」
「確かに、一理ある」
「敵?」
静かに戦闘準備を終えたラリャが問い掛けてくる。
「魔物を狩ってきて、昼飯を食べたいなと」
「スレイブはここに残ってて、私が行ってくるから」
「…分かった」
「綺麗な素材くらいなら買い取ってやるよ」
「それは是非お願いするわ」
「…ラリャまって、」
馬車から降りたラリャの肩を掴んで、前に出る。
「やっぱり俺が行く」
「…休憩地点がすぐこの先にある、それまで待てねぇか?」
「待てる?」
ラニャにそう聞かれては頷くしかない。
それに、護衛対象から離れる訳にもいかない。
「なら、待て」
確かに、少し行った所に数十人が屯してるいる。
何か揉めているのか荒々しい殺気が立ち込めている。
なにかトラブルとかに巻き込まれないか不安だ。
「この先に幾つか気配があるから」
「そう、気を付けるわ」
お疲れ様でした。
(本編です)




