17話
いらっしゃい
「冒険者は稼げるのか?」
起きて直ぐに、本題に入る。
頭痛も収まり、女性を尻目に捉えた瞬間、表情や気配、魔力量、好意が一度に流れ込んでくる。
「稼げるわ!」
自信満々の彼女の装備をよく見る。
使い古された何かの革と合金の防具、新調したばかりの直剣と短剣三本と、隠し武器と思わしき棒?
右手には革製のガントレット。
左手には光沢の失った金属板の付いたガントレット。
体臭とは別に仄かに香る土と草花の匂い。
「今から冒険に出るのか?」
「そうよ!」
つまり、これが完全装備……。
彼女が立って頭に付けたのはニット帽を思わせる鉄製の防具。
茶髪の髪がマフラーの様な布を隠している。
「で、着いてきてくれるよね?」
ユクナを1日中探し回りたいが、金は必要になるだろうし。
「わかった」
何をするのかは武器を見れば大体理解出来た。
殺し合いだ。
「貴方、名前は?」
歩き方が隙そのものだと指摘したい気持ちを堪えて質問に答えようとして、立ち止まる。
「名前……スレイブ」
一瞬、答える事に何か違和感を感じ、時たまに思い出したかのように知りもしない単語が頭を過る。
「どうしたの?スレイブ」
「お前の名前は?」
「あ、私は、ラリャ、ラリャって呼んでね」
話している内に冒険者ギルドに着いた。
「あ、ラリャさん、そちらの方が……」
中に入ると、人溜りとでも言えるような光景が広がっていた。
酒の匂いが充満し、されど酔っているのは数名程度。
警戒の眼差しや好奇の目、憐れむような視線がラリャに突き刺さるのが分かった。その中でイキナリ寄ってきた人に無意識的に殺意を飛ばして牽制を掛けるも、意志が強いのか、はたまた気が付いていないのか、無視を決め込んでラリャに話しかける女性が1人いた。
「はい!昨日言っていたのはこの人です!」
「やっぱり!ラリャさんとチームを組む……えっとお名前は?」
「え、あ、スレイブって名乗ってます」
気配が地味にぶれ続ける女性に困惑しつつ、聞かれた事に戸惑いながらも答える。敵意は一切感じられない。
「スレイブさん、実力が見たいので、少し模擬戦をお願いしたいのですが……」女性の申し出を受ける事にした。
金を稼ぐ1番の近道に感じられたからだ。
「おい、あんちゃん……お前弱い振りしてるだろ」
模擬戦相手の突然の告発。
「……いえ、これが本気です」
相手の攻撃を的確に弾き、わざとらしい隙を付いてカウンターを避ける。の繰り返しをかれこれ2分続けている。
「まぁ、実力を引き出すにはもう少し必要か…」
攻撃速度が緩急を繰り返し、隙が消えて行く。
油断を誘う様な弱い筋を重点的に狙ってきている。
実際に気が緩んだ瞬間、瞬きのタイミングで突きを入れてくる。
それすらも罠とした下からの切り上げ。
弾くと重心を崩され、相手は踏み込みを強くする。
崩された勢いで距離を取らなければ手痛い一撃を貰う事は容易に想像出来る。視線、気配、踏み込み、重心、魔力、全てを囮にした模擬戦相手の投げナイフ。
それを避けてしまったのが始まりだった。
魔力の使用が許可されたのである。
無意識的に強化された状態で相手を置き去りにした一撃を与えるべく踏み込んだ瞬間である。見えない攻撃が躊躇無く降り注いだ。「おぉ、やっぱり凄いね」
凝固に亀裂が走る。
見えない攻撃の速度が上がり、亀裂が広がっていく。
「えっ…」
見えない攻撃の軌道を風魔法で逸らし、相手に仕向ける。
相手の胸に小さな痣が浮かび上がった。
「勝者、スレイブ!」
相手の油断が招いた勝敗。
模擬戦のルールは先に一撃を与えたら勝ち。
カウンター目的で食らった場合はその人の自己申告のみで勝敗が決するとある。
中級冒険者を負かし、中級冒険者の平均的な実力より、上と判断され模擬戦及び、冒険者証明証の発行が終了した。
シルバーの登録カードを渡され、魔法契約を果たす。
ギルドではユクナと呼ばれる存在は把握していないと言われ、ラリャの受けたラルバ王国へ向かう商業馬車の護衛を手伝う事になった。彼女曰く、「その人が人なら、森の中より参道を歩くに決まってるわ!」と言われ、違和感を覚えつつも取り敢えずユクナの痕跡探しの次いでにラリャについて行くことにした。
久しぶりの投稿ですが、展開を悩んでいた訳ではなく…単純に書き忘れていただけです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(本編です)




