16話
いらっしゃい。
目が覚めたら激痛で濡れ、歪んだ視野に映った本来無いはずの天井。激痛が痛みに変わる頃に顎の先から落ちた涙が右手の甲を濡らす。パチンッと意識が覚醒したようにベットから飛び出す。
「ここは…何で裸?」
確かな経験と僅かに残る体液。
「寝てる間にゲロった…悪夢だ」
顔と髪の毛が胃液でベトベトであった。
森の中で作り上げた魔力溜りの制御が切れている。
何日、いや森から離れたのか。
「あ、起きたのね」
瞬時に何回殺されていたのかを考え、溜息を付きながら敵意が無い事を察する。
「お前は誰だ」
見れば魔族から助けた女性だった。
殺されてなかったのか。それとも、あの魔族にとっては興味の無い相手だったのか。俺の殺したアイツは楽しんでいたんだが、やっぱりあそこまで強いと弱者には本当に興味が無いのか。
…あれ、殺し損ねたんだっけ。
曖昧な記憶を手繰り寄せても、殺した確証が得られなかった。
「ねぇ、聞いてる?ねぇ!」
そういえばコイツ何でこの家に…あぁ、助けてくれたのね。
「助かったありがとう、それじゃ世話になったな、俺の持ってたやつ全部やる、それじゃ足りないか?」
一刻も早くユクナに会いたい。
……何でユクナに逢いたいんだっけ?
困ったな。俺は何で…?
「ユクナ、って人に逢いに行くの?」
条件反射で振り向いた、初めて会った時もそうだったけ。
「お前には関係ない」
「だったら…なら!あのシーツあらってくれない?嘔吐されたままだと臭いんだけど…」
「悪かった、水は有るか?」
…手際が良いな。
バケツに汲み終わった水が入ってるとは。
「外でやってよ」
言われた通りに外に出ると人通りは少ないものの人が絶え間なく流れている。その目の前で顔を洗いつつシーツを洗い風魔法で乾かす。ついでに魔力で補強する。気休め程度だが、長持ちすると思う。傷みやすくなっただけかもしれんが、。
「……」
家の掃除を成り行きで手伝うとその報酬として服を一式貰った。
気が付かなかったが、俺はそれまで裸だった。
余りにも反応が無かった為、忘れていた。
「私と一緒に冒険者やらない?」
それが本題で会ったかのように語る。
聞けばパーティが全滅したらしい。
オーク狩りをして全滅させた帰りに魔族に見つかって私以外は全滅(廃人になったり、狂ってマトモな判断力を失ったり、戦えない体になったり)してソロ冒険者になって二日たったという。
要するに俺は二日寝ていた事になる。
「俺は人探しが有る、人里には用がない」
「ユクナって人でしょ?」
「そうだ、俺が居なくても一人で上手くやって行ける奴だが、何故か逢いたくてな」
記憶が曖昧だ、何処か遠い国で暮らしてた気もするし、白い空間で、神に祈りを捧げてた気もする。
生死を彷徨ってたからそんな夢を見ていたんだろうか。
「私と一緒に冒険者をしつつユクナって人を探すのはどう?冒険者に成れば情報も手に入るよ!」
目撃情報など出るだろうか、でも俺も生きていくには金が必要だよな…。「分かったから眠らせてくれ…」
酷い頭痛に耐えかねて気絶する。
男は、過去を思い出せないでいた。
この回は15話の続きです。
(本編です)




