摂取
アイカとザードの二人と合流する事ができた。早く他のみんなとも合流しなきゃ。
「でしたら余計ここでの争いは不要かと」
「アイカが脳筋とか言うからよ。私がおとなげないのもあったけど。それよりどうやって進んだらいいと思う?」
依然としてこのプラネタリウムのような部屋の意味が分からない。
法則性さえ見つけられれば攻略に近付くと思うんだけど。
「試しに斬りつけてみたで御座るが、傷一つ付ける事かなわずで御座る」
「多分ダンジョンの転移システムだからよ」
壊してダンジョンコアまでのルートが断たれるものは一切破壊できない。
反対にパネルの意味を解析できればコアルームまでたどり着ける。
「困りましたね。本体と接続できればWEBで調べる事もできるのですが、現在切断された状態にあるためそれも不可となっております」
「独立駆動とかハイスペックじゃない。その性能で天井の仕掛けを解析できない?」
「それは無理です。ここではスキルも発動しないらしく、鑑定スキルは使えません」
そういえば鑑定スキルの存在を忘れてたわ。
使えないなら意味ないけど。
「けど正解は必ずあるはずよ。せめて謎を解く手がかりでもあれば……」
「でしたらスマホで撮るのはどうでしょう? シンプルな方法ですが、いくつかの部屋を比較する事で何か分かるかもしれません」
それが確実かな?
――で、いくつかサンプルを増やしたところ、糸口となりそうな部分を見つけたわ。
「星座は各部屋の番号のようなもので、星座の数だけ部屋がある――と」
「恐らくそれで間違いないかと」
これはキツネの――じゃなかった、ギンの顔を目印にしてたために判明した事実よ。
後は一度入った部屋を避けるように移動していけば、そのうち正解にたどり着けるじゃないかと思うわ。
「よし、どんどん進みましょ!」
それから繰り返すこと数十回。天井にギンの顔を量産しつつも途中でセレンとの合流に成功し、ついに見たことがない星座を発見するに至った。
「これは……初めて見る形よね?」
「はい。もしかしたら最初の時にあったのかもしれませんが、少なくとも目印をつけ始めてからは初見だと思われます」
なぞると宇宙船のようにも見えるこの星座。
4人でそのパネルに触れると……
ブゥン!
「ふぅ……やっと違うところに――あれ?」
「おもいっきり見覚えがありますね」
コンサートホール並に広いスペースに高さが見通せない天井、中央には巨大な鉄柱があり、それに備え付けられた螺旋階段。
「元の場所に~、戻って来ちゃいました~♪」
「うむ。振り出しに戻るとは、まさにこの事で御座るな」
クッ、貴重な時間を無駄に――
「あれ?」
フラッ……
「お、お姉様!?」
急に立ちくらみを起こし、アイカによって支えられる。
同じことの繰り返しで疲れたのかな?
「大丈夫で御座るか主よ?」
「少し~、休まれては~?」
「……いや、それはダメ」
お姉ちゃんが心配だし、この程度じゃ休んでられない。
「お姉様の言う通りです。これは少し――いや、かなり急いだ方がよろしいかと」
「どういう事?」
「一旦外に出れば分かります。わたくしの考えが正しければ恐らく……」
――というアイカの発言で、一時的に外へと出ることにした。
「おおっ! アイリ君、無事だったかね!?」
外へと出ると、学園長を始めとする教師陣にクロとギン。それにリュック達までもが出迎えてくれた。
危ないから外で待機してもらってたはずなんだけど……まぁ大丈夫かな。
「少々厄介な仕掛けがあって、一旦戻って来ました」
「そうだったか。まぁ無事で何よりだ」
「だけど心配したよ。丸一日帰ってこないって聞いた時はいてもたってもいられなくて……」
丸一日?
「リュック、丸一日ってどういう事? まだ入ってから1時間しか経過してないわよ?」
「「「……え?」」」
リュックだけじゃなく、待機していた全員が目を丸くして私を見る。
その目は「冗談だよね?」と訴えてたけど、私からしてみれば丸一日経過してるって方が冗談にしか聞こえない。
『思った通りですお姉様。あの部屋と外部とでは時間の流れが違うようです』
『まさかそれが原因で念話が通じなかったって事?』
『はい。恐らくですが、部屋単位で時間の流れが違うのでしょう。これがガルドーラの意図するものなのか偶然の産物かは不明ですが、中に入った後は速やかに進むのが理想です』
多分さっきの立ちくらみは時間の流れが変わったのが原因。
あの部屋に入ったら一秒たりとも無駄にはできないわ。下手すると年を跨いじゃうもの。
リュック達には再びダンジョンに挑むと話し、再度あの部屋へと突入した。
あ、一応時間経過の話もしといたわよ? 数日は戻れないかもしれないって伝えたから混乱はしないと思う。
「戻ってきたけど、また地道にやるしかないのよね」
「そうでもありませんよ。先ほど本体と接続しましたので、天体の情報をアップデートしました。やはりお姉様のいた世界とは違う星座を形成しているようで、恐らくはイグリーシアの外に広がる宇宙を模しているものと思われます」
なるほどね。
でもイグリーシアの人達が宇宙について知ってるとも思えない。結局何を表してるかは不明のままじゃ――
「解析完了。お姉様、こちらをご覧ください」
アイカが素早く書き起こした図面を見せてくる。やはり見たこともない星座を形成してるのが分かるわ。
「これらがイグリーシアという星の外に広がってるわけですが、最初の部屋の天井には近くの星座しかありません。思うに遠く離れた星座を選択していけば、いずれ突破できるのではないかと」
「さすがはアイカ! でもどうやって解析したの?」
「ドローンを宇宙に飛ばしました。現在人工衛星のようにイグリーシアの周りをグルグルと回っております」
ドローン様々ね。戻ってきたらピカピカに磨いてあげよう。
「アイカ、後に続くから先導はお願いね」
「了解です」
間違えないよう――且つ迅速にパネルをタッチしていく。途中なぜか床でふて寝をしていたホークと合流し、先へと進む。
かれこれ100回以上はタッチしただろうと思い始めたところで、これまでとは全く違う部屋へとたどり着く。
「これは宇宙船……よね?」
「はい。そして作り物ではありますが、外の景色は宇宙を再現してると思って間違いないでしょう」
天井のパネルはなく、ダンジョン入口の宇宙船のような内装に、宇宙を見渡せる正面には操縦席が取り付けられている。
後ろを振り返ると他にも座席が複数あり、中央にはちょっと立派な座席が一つ。いかにも艦長が座るんだと言わんばかりに存在感をアピールしていた。
「おお、ワイ知っとるで。これ、ガン○ムで見たやつとそっくりや!」
「いかにもアニメで出てきそうだから否定はしないけど、なんだってこんなものが……」
まさかガルドーラの趣味ってわけじゃないだろうし、何らかの意味はあるんだと思う。
『知りたいか? イグリーシアの民よ』
「「「!?」」」
突如響くハスキーボイス。この声はまさしく!
「ガルドーラ!」
『覚えておったか。いかにも、妾はガルドーラじゃ。貴様が来るのを待っておったぞ?』
「フン、その割には随分と侵入を拒んだ仕様じゃない。そんな臆病者がダンマスだなんて笑わせるわ」
『クックックッ、それはすまなかったなぁ。だがそのお陰で戦力を充実させる事ができた。礼を言うぞアイリよ』
戦力を充実させた? ハッ、コイツまさか!
「アンタ……DPを効率よく稼ぐために私達の足止めをしたわね?」
『フハハハハ! ようやく気付いたか? その通り。貴様らを長時間ダンジョンに留める事で多くのDPが手に入った。時間の流れが加速するよう施したのもこのためだ』
都合よく使われたか……。
『特にアイリ、貴様から入手できたDPは、国一つを楽に滅ぼせるほどだ。ついてはその礼がしたい。中央にある豪華な椅子に触れてみろ。さすれば妾の居るコアルームへの道が開けるであろう』
上等よ。お礼はきっちりと貰ってやるわ。
「お礼は百倍返しよ。びた一文残さずむしり取ってやるから覚悟しなさい!」
アイリ「まさかガルドーラの趣味ってわけじゃないだろうし」
ガルドーラ「趣味だぞ? にわかファンだが、ガン○ムシリーズはZZまで把握しておる」
アイリ「嘘ぉぉぉ!?」




