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結界の向こう側

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眷族のメリーとペサデロに触れてなかったので修正しました。

ストーリーに変化はありません。

「おお、戻ったかねアイリ君」

「はい」

「その様子だと、成果は得られなかったと見てよいかな?」


 顔に出てたか……。

 ここでドーラの件を広めると混乱が激しくなるし、今はまだ伏せておこう。


「すみません。詳しくは言えないんですけど、強行突破する以外で現状打破は見込めそうにないです」

「そうか……」


 私の返答に教師陣からため息が漏れる。悪かったわね、ぬか喜びさせて。

 代わりと言っちゃなんだけど、()()()()()()()で強行突破を試みるわ。


「みんな、お願い!」


 シュン! シュシュシュシュン!


 次々と床に浮かぶのは、白い光を放つ魔法陣。もちろん呼び出したのは私の眷族達よ。

 但しリヴァイとレイク、それにメリーはダンジョンに残してるわ。必要最低限の防衛は必要だしね。メリーはメイドさんの仕事があるからだけど。


『レイクは物理的に無理ですけどね』

『いちいち念話で突っ込まないの』


 物理的に無理な上に人化できないから先生方を怖がらせないようにって意味も込めて、レイクは残すことにしたのよ。

 それでも殆どの眷族は召喚できた。

 あ、ペサデロは学生として生活してるから、リュック達と一緒に外で待機してるわ。


「おお、アイリ君の眷属かね?」

「半分は合ってますけど、正しくは()()です――って、そんな事よりみんな、この結界を破壊して」

「「「おおっ!」」」


 アンジェラを筆頭に、まるで暴動でも起こしたかのような激しい攻撃が加えられる。

 モフモフやザードは至近距離での攻撃を。ホークやセレンは得意の攻撃魔法で削っていく。


「姉御、コイツぁちと手こずりそうですぜ」

「せやな。結界はワイらにとっちゃ天敵やさかい、すんなりとは行かへんちゃうか?」


 予想以上に強固らしい。


「うむ。妾が本気になれば可能かもしれんが――どうする? 学園ごと吹き飛んで――」

「止めて。割とマジで」


 それじゃあ本末転倒よ。


(あるじ)よ、いかが致す?」

「そうねぇ……」


 さっきは反対したけど、やっぱりアンジェラにやってもらおうかな? 生徒と近隣住民を極力遠くへ避難させてから、結界に向けてドカーンと。


「アイリちゃ~ん、お姉ちゃんがやってみる~?」

「……ンゲ!」


 勢い余ってお姉ちゃんまで召喚しちゃったらしい。


「ア、アイリ君、こちらの女性は……」

「オネエチャンという名前なんです。詮索は無用でお願いします」

「それはいったいどういう――」

「お願いします」

「いや、しかし――」

「お・ね・が・い・し・ま・す」

「う、うむ……」


 説明すると長くなるので強引に学園長を言いくるめると、そっとお姉ちゃんに耳打ちする。


「それで、いったいどうするつもりなの?」

「あの光ってるのが収まればいいんでしょ~? だから直接言い聞かせてあげようかな~って」


 まさかとか思うけど、結界を説得しようとしてらっしゃる?

 そんな風に驚いてるとお姉ちゃんの手が結界に触れ、子供をあやすように語りかけた。


「ね~むれ~♪ ね~むれ~♪ は~は~のぉむ~ね~に~♪」


 ズルーーーーーーッ!


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん。それ、説得じゃなくて子守――」

「もぉ~アイリちゃ~ん? 邪魔しちゃダメでしょ~、メッ!」

「あ、はい……」


 ――って、そうじゃない!

 またお姉ちゃんは子守唄はじめたし、もぅどうしたら……。


「あ、お姉様、結界が!」

「……え?」


 アイカの叫びで顔を上げると、ミシミシという(きし)み音とともに結界に亀裂が!

 それから間もなく、亀裂が全体へと行き渡り、ついに――



 パリィィィィィィン!



 音を立てて砕けると、サラサラと砂に変わって辺りに散乱した。


「はい、こんなん出ました~」

「「「…………」」」


 アッサリと――非情なまでにアッサリと結界を壊したお姉ちゃんが、満足そうに腰に手を当てる。

 教師陣も眷族も黙り込み、どう反応したらよいかと戸惑っている様子。


「あら~? 嬉しくないの~?」

「い、いや、そう言うわけじゃなくてね」


 え~っと……一応は喜んでいいのよね?

 もうお姉ちゃんのステータスは怖くて覗きたくないからスルーするとして、これで中を確認できるわ。


「学園長、下級の魔物を使って内部を捜索させます」

「こちらからもお願いする。我々だけでは手に終えない可能性が高いからの」


 学園長の了解も得られたし、さっそく()()を召喚しよう。

 ……何を召喚するのかって? アレよアレアレ、アレと言ったらアレしかないわ。名前すら口に出したくない()()()よ。


 シュシュシュシュシュイン!


「「「う……」」」

「ヒィィィィィィィ!?」


 あ、フローリア先生が壁際まで後退した。


「お姉様、いきなりクロコゲ虫を召喚するのは刺激が強すぎるかと」

「だって、言ったら反対されたかもしれないじゃない」


 補足すると、このクロコゲ虫というのは見た目と動きが生理的に受け付けない人が多く、頭がもげようが動き続ける事ができるほどの生命力から魔物と認定されている。

 極々まれに噛みつくらしいけど、一般人すら殺せないほど非力さよ。

 見た目の色が焦げ茶色という理由からその名が付いたクロコゲ虫。地球の人間がコレを見たら、皆が揃って名指しする。



 ゴキブリであると!


『お姉様、いったい誰に向かって力説されてるので?』

『ゴキブリが全人類の敵だって事を言いたかっただけよ』


 さて、そんな事は置いといて……


「じゃあ中の捜索お願いね」


 私の命令により100匹のクロコゲ虫がゾロゾロと入っていく。

 もしこれが私の寝室なら速攻で燃やしてるところよ。

 そんな忌み嫌うクロコゲ虫を召喚した理由は、ズバリ死んでも良心が痛まないから。


「アイリ君、中の様子はどうかね?」

「あ……」


 嫌な事を思い出した。中を覗くには魔物視点に切り替える必要があるのよ。

 つまり、これから私はクロコゲ虫の視点で見る必要が……うぅ~考えたら鳥肌が!


『お気を確かに。何もお姉様自身がクロコゲ虫になるわけではありません』

『私の心を読むなっての! そして言われなくても分かってるっての!』


 あ~もぅ自棄糞よ!

 意を決してクロコゲ虫へと視点を切り替える。

 直後飛び込む中の光景は……


「これは……ダンジョン?」

「「「ダンジョン!?」」」


 なんと、ディメンションルームの中はダンジョンと化していた。


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