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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
第5章:進軍、ダンノーラ帝国!
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一件落着?

「――以上です」

「はい、ご苦労様。これでしばらくは平和に過ごせそうね」


 私の報告に対し満足げに頷くルミルミことルミナステル侯爵。

 黒幕だった千石(せんごく)を倒しダンノーラ帝国の侵攻を止めた事は、ルミルミから国家主席へと伝えられる予定よ。


「それにしても前皇帝がご存命でよかったわね? 特に問題となる事もなく、内戦にはなってないんでしょう?」

「はい。元々あのお爺さんは人望があったらしく、殆どの大名が従ってるらしいです」


 唯一心配だったのが信長で、コイツに関しては百姓へと強制的に身分を落としてやった。

 多分どっかの片田舎で畑でも耕してるんじゃないかな。

 あんなのでもイトさんの父親だし、殺すのは止めといたわ。


「連れてった武蔵という男は現地に置いてきたの?」

「はい。ダンノーラで生涯を終えたいという本人の希望もありましたので。それに腕も立つので、前白河のお爺さんの護衛を任せてます」


 小次郎も教官として復帰するみたいだし、もしかしたら武蔵VS小次郎の対決が御前試合で見れるかもね。

 ちなみにだけど、サードが燕返しを極めたいと小次郎に頭を下げてたわ。ザードのことだから、極めるまで戻ってこないかも。


八岐大蛇(やまたのおろち)はどうなの? また復活するなんて事にはならない?」

「あ……」


 そっちは全然ノータッチだった。

 なぜならアンジェラと八岐大蛇がジャレあってて、とても仲睦(なかむつ)まじく――


 ――ゴメン、嘘ついた。

 一方的な虐待が行われていたのを普通に眺めてたわ。

 あの後どうなったんだっけ?


「それでしたら心配無用です。現れるたびにアンジェラがもてなすと言ったら、「もう絶対に召喚されてやらん! フテ寝するから二度と起こすな!」と言って、おとなしく逃げ帰っていきました」

「そ、そうなの。まぁ素直に引き下がってくれたならいいんだけど……」


 一部始終を覚えてたアイカの説明に、ルミルミが顔を引き吊らせる。

 まさか八岐大蛇が可哀想とか思ってる? でもアンジェラにジャーマンスープレックスを食らってたから哀れみの視線を向けると、「同情するなら首をくれ!」とか泣きながら訴えてきたわ。


 ――あれ? よく考えたら本当に可哀想かもしれない。


「何にせよ一件落着ね。今日くらいはここでゆっくり休んでくといいわ」

「いえ、実はですね、すぐにでもダンジョンに戻らなきゃならない事情がありまして……」

「あら、それは残念。せっかく添い寝してあげようと思ったのに……」


 あげようじゃなくって、自分がしたいだけでょうに……。

 でもそれとは別に、ダンジョンに戻らなきゃならないのは事実なのよ。

 それというのも……



★★★★★



「こんなとこで何やってんのよ!」

「? 仕方ないではないか。気が付いたらここに居ったのだからな」


 アイリーンの眷族が集まる談話室にて木刀をブンブンと振り回すのは、赤ん坊だったはずのヨシテルよ。あれが私と同じくらいの歳にまで急成長した姿にね。


「気付いたらここに居たと……うん、それなら仕方ないわ。恐らく千石がヨシテルの力を解放したのが原因だろうし」


 うん、急成長したのはどうしようもない。ないけど、私がもっとも言いたいのは――


「なんだって()なのよ! 他人(ひと)()で堂々とスッポンポンでいる事に疑問を感じなさい!」

「そんなにおかしいか?」フルン!

「だから隠せっての!」


 木刀持って仁王立ちしているヨシテルから視線を逸らし、護衛していたゴーレム姉妹を睨みつける。いったいどういう事なのか説明しろ的な意味を込めて。


「ルーは驚いた。ヨシテルの全身が突然光りだして、今の姿になった」

「ミリーも同じく。まるで北斗○拳みたいに服が破れて現在にいたる。我々に落ち度はない」

「大ありよ! さっさと着るものを持って来なさい!」

「マスターの部屋から?」

「フリフリのワンピース?」

「んな訳あるか! クロとかホークの部屋からテキトーに取ってきなさい! さもないと永遠におやつ抜きよ!」

「「イェス、マム!」」


 おやつに目がないゴーレム姉妹が部屋を飛び出していく。

 ――っとにもう。お姉ちゃんも居たはずだけど、どこに行ったのやら……。


「おお、そういえばお主の姉が「夕飯の買い出しに行かなきゃ~」とかいって、出ていったぞ?」フルン!

「だからこっち見んな!」


 ――ったくもぅ。少しは裸でいる事に抵抗感を持ちなさいっての。


『ところでお姉様、このヨシテルはどうするのですか?』

『どうって?』

『いえ、もう(かくま)う必要もありませんし、いつまでここに置いとくのかと』


 そうだった。裸のくせにあまりにも堂々としてるから忘れてたわ。

 すぐにでも返してあげたいところだけど、急成長した姿だしどうしたものか……。


「マスター持ってきた」

「ホークお気に入りの、ソフ○バンクホークスのユニホーム」


 うん、ヨシテルの処遇は後回しにしよう。

 まずは服を着せる!


「ヨシテルに着せてあげて」

「「イェス、マム!」」

「ん? なんじゃ、コレを着ろというのか? トレーニング中だったから汗をかいて――」

「いいからさっさと着る」

「お前が着ないとおやつの命が危ない」


 ちょっと――いや、かな~り大きくてダブダブだけど我慢してもらおう。

 さて、落ち着いたところで……


()()()()ねヨシテル。()()()からそんなに時間は経ってないみたいだけど」

「なんじゃ、覚えておったのか。てっきり忘れられてるかと思ったぞ」


 そう、コイツとは一度顔を合わせてるのよ。

 いろいろ複雑な事情があってね。詳しくは省略するけど、敵ではないから大丈夫。


「こうして再会したのも何かの縁じゃ。これからもよろしく頼むぞ」

「――ってアンタ、堂々と居座るつもり!?」

「仕方あるまい。ダンノーラでは不治の病で赤ん坊のままという事になっておったしな。今さら戻ったところでコイツは誰だと言われるのがオチじゃろう。ちなみに死んだと思っとるのは信長だけじゃ」


 結局私が引き取る流れっぽい……。

 後で前白河のお爺さんにはコッソリ伝えておこう。



★★★★★



 はい、もうやけくそ! 晩御飯で眷族が集まったところでパパッと紹介。


「――というわけで、今日からここで生活する事になった輝義(てるよし)君よ」

「テルヨシじゃと!?」

「アンタの名前よ。ヨシテルって名乗ると面倒じゃない。ねぇアイカ?」

「はい。ヨシテル様はしばし世間の目から遠ざけられておりましたので、第三者に対して余計な憶測を生む可能性がございます。ですので別人に成り済ます事でその危険を取り払おうと思いまして」

「むぅ……」


 名前を変えられて納得いかないのか、胡座(あぐら)をかいて腕組みをしだした。

 そもそも自分から頼んできたんだから、このくらいは了承してほしいわね。


「「はぁ……」」


 テルヨシとは別に、ザードとホークの二人は何やら落ち込んでる様子。


「ホーク君~、浮かない顔してどうしたの~? 食欲ないの~?」

「アイナはぁぁぁん、ワイを慰めてくれるんか? なんて優しい女神なんやぁぁぁ!」


 お姉ちゃんの視線はどう見てもホークの皿へと注がれてるけどね。


「聞いてぇなアイナはん。ワイの貴重なユニホームが汗臭くてベトベトやったんや! きっと誰かが勝手に拝借して自主トレしとったに違いな――」

「うるさいですぞホーク」


 ゴスッ!


「ホゲッ!?」


 騒ぎすぎたホークがリヴァイの一撃で沈む。

 ついでにユニホームの記憶も消えてくれると有りがたい。

 ちなみにだけど、今のテルヨシはリヴァイが用意した少年服を着ているわ。


「相変わらず学習しないッスねホークは。で、ザードはどうしたッスか?」

「うむ、実は佐々木小次郎という人物に燕返(つばめがえ)しという剣技を伝授していただいたのだが……」


 念願叶ったのに浮かない顔のザード。

 実は燕返しとは戦闘に用いる剣技じゃなく、日常で活躍していたテクニックなのだとか。


「お陰でホレ――この通り」


 ヒョイ――スパッ!


 テーブルにあった布巾を剣の峰で持ち上げ、クルリと返し4つに斬って見せた。


「コレぞ燕返し。小次郎殿が若き頃、織物を指定の形へと切る仕事をされていたらしい。毎度の如く手で掴むのが面倒になり、剣だけで仕事をこなすようになったのだとか」


 なるほど。戦闘には使えないと分かってガッカリしてたのね。

 ま、いいじゃない、平和的で。



★★★★★



 元信長の居城の近くにある雑木林。

 その中でうめき声をあげながら地面を()いずる者がいた。


「う……ぐ……くそぉ、アイリめ……」


 その正体は千石であり、下半身を失った状態にもかかわらず生を繋ぎ止めていた。

 これは勇者としての高いステータスの影響であり、並の人間ならすでに果てている事だろう。

 もっとも夜間であるために辺りが真っ暗なのも影響し、目にした者がいたらアンデッドと間違うだろうが。


「き……切り札として……取っておいた薬。これに……気付かなかったのが……お前の敗因」


 何やら懐から薬瓶を取り出すと、血で染まった顔を歪める。

 その薬こそが現状を(くつがえ)すのだと信じ蓋を開けた。


「負の怨念を……力に変える……。ククク、これでアイリは終――」

「ほぅ……。その薬、妾が役立ててくれよう」

「だ、誰――」


 グシャ!


「グギャァァァ……ァ……ァ」


 突如現れた何者かにより、あっけなく踏み潰される千石。

 彼女が死んだのを確認した謎の人物は、口の端を吊り上げて薬瓶を拾い上げると……


「クックックッ、安心するがよい。貴様の怨念も妾が引き継いでやろう――フハハハハハハハハハ!」


 ヨシテルとの出会いに関しては、前作の159話をご覧ください。

 燕返しに関しましても作者の作り話なので、真に受けないように願います。


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