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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
第5章:進軍、ダンノーラ帝国!
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最後の忍び四天王

 ドパァーーーン!


 激しい爆発音と共に土埃が舞い上がり、皆揃って顔を覆う。

 ただし、クリステールだけは何ともないようで、余裕の笑みで様子を(うかが)っていた。


「どうデース? これがグレネードの威力デース!」

「威力って……ただバカでかい音が鳴っただけじゃねぇか」

「本当にそう思いマースか? そこで倒れているボーイを見るがいいデース!」

「ああ! ナンパールが!?」


 土埃が収まったところでリュースの視界に飛び込んできたのは、左半身を失ったナンパールであった。


「そんな……ナンパールが」

「お、おい、さすがにやべぇぞ?」

「分かってらぁ! ――クレア、ナンパールを頼む!」

「まっかせて~」

「サフュアは障壁を展開しろ!」

「わわわ、分かりました!」


 狼狽(うろた)えるゲイルとエリオットをよそに、リュースがテキパキと指示をだす。

 頭の切り替えが速いリュースならではの動きだ。


「いくぜリュック!」

「もちろんだ。グラドとトリムは後方支援を頼むよ!」

「「任せろ(て)!」」


 リュースに触発されたのかリュックの眼にも闘志が宿り、二人がかりの秘技を繰り出す。


「これ以上はやらせない――」

「食らいやがれ! 威力倍増の――」

「「ダブルベノムスラァァァッシュ!」」


 二つの斬撃が重なり、クリステールめがけて飛んでいく。

 まともに受ければ立ち上がる事すら難しいほどの威力がある。


「ハハン、甘いデース。当たらなければ、どうという事はありまセーン!」


 伊達に忍び四天王を襲名しているわけではなく、下忍とは比較にならない身のこなしで軽々と避けられてしまう。


「クソッ、動きが速ぇ! 何とか動きを封じれりゃいいんだが……」


 リュースが悔しげ周囲を見渡す。

 彼とリュック以外は学園長とサフュアが展開している障壁で護られているが、グレネードを乱発されると破られる可能性がある。


「なら私がいく。隙ができたら加勢して」


 ならばとペサデロが単独で挑む。

 この中で一番素早く動けるのは彼女しかいない。


 ガキン!


「チッ……」

「ハハン、わーたくしが飛び道具だけしか使わないとでも思ったんデースかぁ? これでもくノ一なのデースから、接近戦も得意デース!」


 一気に仕留めるべく走らせたナイフは、あっさりと防がれてしまう。

 しかし、ナイフを受け止めた状態の今クリステールの動きは止まり、まさに千載一遇(せんさいいちぐう)の好機とも言えた。


「今よみんな! ホーリーキャノン!」

「トリムに続いてハッピィィィスプラーーーシュ!」

「食らえなの――ロックフォール!」

「フッ、利き腕の借りは返す――ウィンドカッター!」

「ついでに弓矢もサービスしとくぜ!」


 クリステール目掛けて魔法と弓矢が殺到する。これらを受ければ忍び四天王といえど無事では済まない。

 ――が、その刹那、クリステールが口の端を吊り上げ――

 

「ハハン、忍法――鞍替(くらが)えデース!」

「ハッ!?」


 ドドドドドシュゥゥゥ!


「あぐぅぅぅっ!」

「「「ペサデロ!」」」


 クリステールの忍術により、ペサデロと場所が入れ替わってしまったのだ。

 これにより援護射撃はすべてペサデロへと命中した。


「仕上げデース。()端微塵(ぱみじん)に吹き飛びなサーイ!」


 フラつきながらも何とか距離をとろうとするペサデロに、グレネードが投げつけられる。

 このまま爆発に巻き込まれれば、さすがに助からないだろう。


 ドパァーーーン!


「「ペサデローーーッ!」」


 リュックとリュースが同時に叫ぶ。

 勝ち誇った顔のクリステールを気にする余裕すらなく、土埃の舞うところへと手を伸ばす。

 やがてそれが収まると、見るも無惨なペサデロの姿が……



「ア、アレ? いない?」


 リュックが目を白黒させて驚く。

 予想した光景がそこにはなく、血痕すら見当たらない。

 いったいどこに……と、思ったその時。


「ふぅ、間一髪だったな」

「ア、アヤメさん? それに姉さんも!」


 背後には見慣れた二人が立っており、負傷したペサデロもアヤメに抱えられていた。


「遅くなってゴメンね? 来る途中で怪我をした生徒の治療を行ってたから」

「後は()()に任せてもらおう」


 二人の他にも多くのSクラスの生徒が駆けつけており、形勢は逆転したと言えるだろう。


「ノーゥ、雑魚が集ると面倒デース。一気に蹴散らし――」

「させないですよ!」


 プシュゥゥゥ!


「ギャァァァァァァッ! め、目がぁぁぁぁぁぁ!」

「キャフフフ♪ どうです、オリガ特製ミカン汁の威力は? 以前アイリお姉様に食らった時は死ぬかと思いましたからね。しばらくはまともに目を開けれないですよ」


 再度グレネードを使おうとしたクリステールがもがき苦しむ。

 このミカン汁作戦はオリガがアイリの着替えを覗こうとした時に食らったものだが、今回のは唐辛子を混ぜ込んでいて更に悪質になっている。


「そんなわけで――エレクトバインド!」


 ビリビリビリビリ!


「んっくくぅ! か、身体が!」


 視界が(ふさ)がれていては回避もままならず、あっさりと拘束魔法にかかった。


「今です、皆様!」

「「「バーチカルショット!」」」

「「「ロックフォール!」」」

「「「フレイムキャノン!」」」


 イトの掛け声によりSクラスの面々が一斉攻撃に出た。


「ノ"ーーーーーーゥ!」


 ズドドドドォォォォォォ!


 威力強めの攻撃魔法である。さすがのクリステールも無事なはずがなく、煙が収まった後には全身を穴だらけにして絶命した姿を晒していた。


「ふぅ……助かったわぃ。諸君らが居なければどうなっていた事か」

「いえ、学園の生徒として当然の事をしたまでですわ。――そうよねリュック?」

「僕らも姉さん達に助けられた側だけどね」

「自覚があるならいい。いずれはイト様を護れるよう強くなれ」

「「「アヤメがデレた!?」」」

「う、うるさい!」


 徳姫に送り込まれた刺客はすべて撃破した。

 ペサデロより報告を聞いたアイリはホッと胸を撫で下ろし、信長の居城へと足を踏み入れようとしていた。








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