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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
第5章:進軍、ダンノーラ帝国!
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三段構えの刺客

『全生徒に告ぐ。ただいま学園内に複数の不審者が侵入したもよう。教員の指示なしに教室から出ないように。繰り返し告ぐ。ただいま学園内に――』


 学園全体に機械音声が響き渡る。

 アイリが長期欠席している間も授業は続けられていたが、突如現れた侵入者により中断せざるを得ない状況へと変わり、教師や生徒に緊張が走る。


「おい、侵入者だってよ?」

「またダンノーラの連中なの? この前は何とか(しの)いだけど……」

「だ、大丈夫なんだな。ききき、きっと今回もアイリたんが――」

「そのアイリちゃんは今居ないんだよ? 私たちだけで何とかしないと……」

「も、もうダメだ、おしまいだ……」


 口々に不安を漏らすGクラスの生徒たち。

 今までアイリが主体となって守ってきたのを知っているので、自分たちだけで太刀打ちできるとは到底思えないのだ。

 しかし不安を募らせる生徒だけではない。

 アイリの友人であるリュックたち五人は、ここは任せろと言いたげに立ち上がるのだった。


「落ち着けお前ら、こんな時こそ俺らの出番だ。伊達にアイリにシゴかれたわけじゃねぇぜ!」

「うん、リュースの言う通りだよ。これでも死線を越えてきたんだ、そう簡単には死んだりしないさ」

「それにアイリからは有難い置き土産を貰ってるのよ。コレさえあれば、敵の居場所もなんのその――ってね!」


 ポチッ


 トリムが自慢気に黒板の隅にあるボタンを押す。

 すると黒板上に学園の全体図が出現し、3つの赤い点が動き回っている事に気付く。


「Fuuuuuu、こいつぁクールだぜ! この赤い点がエネミーってヤツだな」

「はい先生。マジックアイテムとして販売する予定なので、お求めはバッカスのトリック・オア・トリムっていうアイテムショップで!」


 ちゃっかり宣伝するトリムをよそに、全員の視線が黒板へと集中する。

 よく見れば、赤い点の一つがGクラスのすぐ近くまで来ているのだと判明した。


「おぃマズイぞ? 俺らはともかく、EクラスやFクラスの奴らだと太刀打ちできないかもしれねぇ」


 グラドの言う通り、低クラスと位置付けられているEからGの教室は固まった場所にある。

 そこへ侵入者が入り込むと死人が出るかもしれない。


「だったら先手必勝じゃーん? ハッピィいっきまーーーす!」

「ちょ、クレア――先生、Gクラスはお願いします!」

「あ、待ちなさいよグラド!」


 先に飛び出したクレアをグラドが追いかけ、トリムも後に続いていく。

 更にリュックとリュースも飛び出していき、担任のストロンガーはヤレヤレと(かぶり)を振る。


「ま、今の彼らなら大丈夫だろう」


 皆に聴こえないようストロンガーがボソリと(つぶや)いた。



★★★★★



「あ、敵さんみぃーーーっけ!」

Wooow(わーぉ)! こっちも見つけたねーーーっ!」


 通路の奥にいるグラサンをかけた白いタキシードの男をクレアが発見した。

 さながら某担任のような男はシルクハットを外して一礼すると、堂々と名乗りをあげる。


「わたくしぃ、ダンノーラから送り込まれましたガンマンのペリー・ザ・キッドと申しまぁす、どうぞヨロシクゥ!」

「はぁ? ガンマンだって?」

SO(ソウ)ですSO(ソウ)でぇす。百聞(ひゃくぶん)は一見にしかぁずと申しまぁすしぃ、実弾を見せて差し上げまぁす!」


 ターン!


「あっぶね!」


 よく分かっていないリュースに銃弾が迫るも、辛うじて避けることができた。

 外れた弾は壁へとめり込み、穴の深さから殺傷能力の高さを伺える。


「やりやがったなクソ! お返し――!?」


 リュースが剣を構えるもペリーの姿はない。

 リュック達も周囲を警戒する中、通路の陰から再び銃弾が!


 バスッ!


「いったーーーぃ!」

「「「クレア!」」」

「アハーハァ! 急所は外れたけど命中だぜぇ!」


 クレアの肩を撃ちぬくと、再び姿をくらますペリー。

 相手は一人でありながらも中々捉えきれない。


「トリムはクレアの手当てを頼む」

「分かった!」

「僕らは奴を追い詰めよう」

「「おぅ!」」


 負傷したクレアをトリムに任せ、他はペリーの気配を探る。

 ならばと神経を鼻先に集中させたグラドが居場所を突き止めた。


「分かったぜ、二つ目の通路の左側だ!」

「サンキューグラド! ベノムスラァァァッシュ!」


 ザシュゥゥゥ!


「オホーホゥ、服が破けてしまいましたぁ。これは新調が必要ですねぇい!」

「チッ、掠っただけか……」


 リュースの放った斬撃は命中には至らなかったようで、ペリーはというと、通路の先にスタコラサッサと走り去っていく。


「クッソ、待ちやがれ!」

「ま、待つんだリュース!」


 ペリーを追撃すべくリュースが走る。

 リュックは嫌な予感がしたため呼び止めるもそのまま通路を曲がってしまい……


 バスッ!


「ぐふっ!?」

「「リュース!」」


 待ち伏せていたペリーに胸を撃たれてしまった。急いで手当てしなければ命が危うい。


「これ以上はやらせない!」

「ハハーハァ、動きが丸見えでぇす!」


 ターン!


「ぐっ!?」


 斬りかかろうとしたリュックの利き腕が撃たれてしまい、不本意にも剣を手離してしまう。

 剣を振るう動きよりも引き金を引く方が遥かに速かったのだ。


「もう終わりですかぁ? ならばレクイエムを捧げまぁす!」

「クッ……」


 勝ちを確信したペリーがリュックに銃口を向け……




 ブシュ!


GeHaaaHa(ゲハーハァ)?」

「手こずらせやがって、ざまぁみろクソッタレが!」


 背後に回り込んだグラドにより的確に心臓を射抜かれたペリーは、前のめりフラつきヨロヨロと倒れ込む。


「トドメだ!」

「ゴバッ!?」


 ナイフでトドメを刺すと、二度とあの不愉快な台詞が聴こえてくる事はなかった。


「へっ、レクイエムが聴けなくて残念だったな?」


 ペリーの死を確認したところでリュックとリュースの元へと駆け寄る。


「リュース、大丈夫か!?」

「ああ、アイリがくれた非常時用のエリクサーがあったからな、コレがなかった危なかったかもしれねぇ」


 ダンノーラとの戦いが本格的になったところで、アイリから友人たちにエリクサーが配られていたのだ。

 自分が居ない時の襲撃を考慮したためである。

 なので余程の事がない限り、死人が出る可能性は殆どないのだ。


「みんなゴメ~ン。ハッピィってば心配かけちゃったぁ?」


 遠くからクレアとトリムが走ってくる。

 どうやらクレアの治療が終わったらしい。


「この通りクレアは無事よ。そっちは大丈夫だった?」

「見ての通りだよ。僕とリュースは危なかったけれど、グラドのお陰で助かったよ」

「おぅ、グラドもたまには役に立つよな」

「たまにじゃねぇ!」


 少々危うかったが、今回も何とか切り抜ける事ができた。

 が、まだ全てが終わったわけではない。



 ターーーン!


「「「!?」」」


 遠くからの銃声により、再び緊張が走る。

 侵入者は合わせて三人居るのだ。


「急ごう!」


 リュックの掛け声で他五人は黙って頷き、銃声の聴こえた方へと急ぐ。


 ターーーン!


「まただ!」

「近いぞ、急げ!」


 どうやら銃声は中庭から聴こえるらしく、リュックとリュースが先頭になり中庭へと躍り出る。

 するとそこには、予想だにしない光景が広がっていた。


「おんやぁ? まぁたガキの新手かい」


 一見浮浪者に見えるほど、ボロボロな服を着たむさ苦しいオッサンがそこにいた。

 ペリーの持っていた銃よりも大きめのものを肩にかけ、口には葉巻を咥えている。

 だが、問題はそこではなく、中庭のそこかしこで血を流して倒れている者がいる事だ。


「テメェがやったんだな!?」

「おぅよ、そのために来たんだからなぁ。当然だろ? ま、俺を仕留めるにはちょいと役不足だったようだが」


 チラリと脇に視線を移したリュースが声を荒らげる。

 倒れている者の中にはゲイルやエリオットも含まれており、ナンパールやサフュアなどの無事な生徒がオッサンと対峙している状態だ。


「貴方は何者です? なぜこのような非道な行いを!?」

「ああん? さっきも言ったろうが、信長様のご命令だってよ。お前らは黙ってこの俺――雑火孫一(さいかまごいち)様に刈られてりゃいいんだよ」


 シュタ!


 つまらない事を聞くなと言いたげにサフュアの問いに答えると、屋根へと飛び上がり肩に掛かった銃を構えた。


「さぁて、次に刈られたい奴はどいつだ?」


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