進撃の姉
「素晴らしい! 実に見事な采配で御座いまするな!」
北の竜造寺と南の嶋津を立て続けに撃破したと知り、宗麟は両手をあげて有頂天に。
ダンノーラの西部はこちらに落ちた事になるし、分からなくもないけれど。
「東部は海で隔てられてますし、しばらくは安心してもよさそうですが……いかが致しましょう? すぐに東部へと渡りますか?」
「そうねぇ……」
アイカに尋ねられ、しばし思考の海に沈むこと数分。
ぐぅ~~~
「「「!?」」」
妙な音に意識が引き戻され、キョロキョロと見渡して音源を探る。
「ゴメンねアイリちゃ~ん。お姉ちゃん、お腹空いちゃった~♪」
ズルッ!
あっさりと音源が発覚した。
「ハッハッハッ! 年頃の女でも空腹には勝てねぇってか?」
「笑うな浮浪者!」
「おま、浮浪者ってまた随分な言われようだな……」
ったく、見た目からして武蔵はデリカシーがないわね。
「お姉ちゃん、もう少ししたらお昼だからそれまで――」
「あ、あそこにウリボアっていうFランクの魔物がいるよ~。誰か狩ってきてくれたら嬉しいな~」
「――って、ウリボア?」
宗麟の居城から外を見下ろすと、雑木林に見え隠れする小型のイノシシが見える。
「500メートルは離れてるのによく見つけたわね」
「それがね~? 何か食べ物はないかな~って眺めてたら、視界に入ったものの情報が頭の中に流れてきたの~」
……情報が流れてきた? まさかとか思うけど、お姉ちゃん!
名前:アイナ 性別:女
年齢:17歳 種族:人間
身分:女子高生(一般人)
スキル:アイテムボックス←new 念話 鑑定スキル 相互言語
備考:アイリの姉
やっぱり増えてるぅぅぅ!
見事なまでに鑑定スキルが居すわってるじゃない。
「アイリちゃん、疲れた顔してどうしたの~?」
「大丈夫よお姉ちゃん。ちょっとだけ天変地異を垣間見ただけだから」
「そ~ぉ?」
もうここまできたら、一般人という表記は外してほしい……。
『お姉様、アイナお姉様のステータスですが、少々おかしくないですか?』
『そんな事、念話で言われなくても分かってるわよ。いまだに一般人なのはおかしいって言いたいんでしょ?』
『いえ、そうではなく、鑑定スキルには【←new】という表記がないのに、どうしてアイテムボックスにはあるのでしょう?』
『…………』
言われてみればと思い、もう一度鑑定スキルで確かめてみる。
スキル:アイテムボックス←new 念話 鑑定スキル 相互言語
そういえば、念話の時も【←new】なんて付いてなかったと思う。
いっそ詳細を見れないかと思い、アイテムボックスを凝視すると……
ピコーン!
『このスキルはアイテムボックスから派生した新しいスキルです。第一発見者である貴女に命名権が与えられます』
■__________
あいうえお アイウエオ
かきくけこ カキクケコ
さしすせそ サシスセソ
たちつてと タチツテト
なにぬねの ナニヌネノ
はひふへほ ハヒフヘホ
まみむめも マミムメモ
や ゆ よ ヤ ユ ヨ
らりるれろ ラリルレロ
ぁぃぅぇぉ ァィゥェォ
ゃゅょわを ャュョワヲ
"°ー~!? んン
えええ……、どうしよこれ……。
『どうなさいました?』
『新しいスキルを発見したから名前つけろって言われたわ。こんなことあり得るの?』
『わたくしは存じませんが、起こった事が全てとしか……』
案の定、アイカも知らないと。
もう本当に規格外なお姉ちゃんよね……。
「ん~? どうしたの~?」
「……なんでもない」
なぜか私のダンジョンとリンクしてて、私の所持するDPを消費して任意のアイテムを取り出せる。
こんなピンポイントなスキルはお姉ちゃんだけにしてほしい――という願望を込めて、【マイシスターボックス】と命名するわ。
マイシスターボックス__
――っと。はい完了。
ピコーン!
『登録が完了しました。以後はマイシスターボックスと表示されます』
さて登録が完了したし、そろそろお昼にしよう。一旦ダンジョンに帰って――
「アイリ殿、実は折り入ってお願いしたい事が御座いまして」
「ん? 何?」
「今ダンノーラ帝国は信長の悪行により混迷を極めておりますれば、これを終息させるにあたりキシリ教を国教としたく存じます」
宗教禁止が仇になったのか、信長は完全に悪のレッテルを貼られてるっぽい。
まぁそれはいいとして……
「そんなの宗麟が自由にやればいいじゃない」
「そのつもりでしたが、やはりここは国のトップに立つ者の許可が必要かと思われまして」
「ちょっと待った!」
国のトップって……私の方を見て言ったわよこのスキンヘッド。
「……なんで私を見て言うの?」
「え? この中ではアイリ殿が――いや失礼、アイリ様の身分が一番高いと伺いましたが」
「ちょっ、誰が言ったのそれ!?」
スッ……
宗麟が視線を動かした先には、お姉ちゃんと武蔵をふくむ眷族全員の姿が! しかも私の顔見てウンウンと頷いてるし!
「どうしますお姉様? 外堀が埋まってしまったようですが」
冗談じゃないわ! この件が片付いたらガルドーラで学園生活を楽しむつもりなのに、こんなところで頓挫してなるものか!
「私よりも相応しい人を紹介するわ!」
「アイリ様より相応しい――ですか?」
「そう!」
今はガルドーラに亡命中だけど、前皇帝の前白河法王ならトップに据えるのに異論は出ないはずよ。
「ちょっと待ってなさい。今すぐ前白河の爺さんを連れて」
「アイリちゃ~ん、ここから呼び出せるよ~、えいっと」
ここからというのが何処を指すのか不明だけど――って、まさか!?
ニョキ!
「むん? 何じゃここは?」
「「「!!!???」」」
あ、あり得ない……。お姉ちゃんのアイテムボックスから法王が出てきたわ。
「むむ? アイリ殿にアイカ殿。それに――宗麟もか!?」
「あ、あ、貴方様は……さささ、前白河様で御座いますか!?」
「うむ。よう分からんが久しいのぅ」
「よくぞご無事で!」
よく分からないながらも、久々の再会に感動している様子。
まぁこれはひとまず置いといて……
『どうなってるのアイカ? アイテムボックスに生き物は入らないって聞いたけど?』
『わたくしにもさっぱりです。しかし従来のアイテムボックスとは異なりますし、そういうものだと思うしか……』
うん、これは深く考えない方がよさそうね。
全てはお姉ちゃんだから――この先何があっても、この一言で終わりよ。
「じゃあアイリちゃ~ん、早くダンジョンに帰りましょ~」
あっさりと他人を召喚したにも拘わらずこの平常心よ。
いったいどこまでお姉ちゃんはマイペースなのか。これってト○ビアになりませんか?
★★★★★
「――って訳なのよ」
「なるほどな。急に居なくなったと思ったらそういう事だったか」
お姉ちゃん達をダンジョンに送り、私は一人でウィザーズ学園の学長室へとやって来た。
知っての通り、学園にいた法王の爺さんを召喚しちゃったから、その説明にね。
「経緯はともかく、前白河を皇帝に戻すのはよい判断だと思うぞい? 元々ダンノーラ帝国とは良好な関係だったのでな、現皇帝を討ち取れば丸く収まるだろう」
「だといいけど……」
信長が黒幕なのか、他に黒幕がいるのかも不明だし、まだまだ油断はできないんだけどね。




