表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
第5章:進軍、ダンノーラ帝国!
84/110

ダンノーラ初上陸

「――という訳でね? いまだ出兵がままならない状況なのよ」

「えぇぇ……」


 ルミルミの言葉に失望を隠せない。

 いや、ルミルミに対してじゃないわよ? 失望しているのは出兵に反対している貴族に対してよ。


「そんなに多いんですか?」

「そうなのよ。フローレン派とドーラ派の双方から反対の声が上がっててね、撃退できるのならそれでいいじゃないかって……」


 う~ん、マズったかなぁ? 良かれと思ってやった事が裏目になったわね。

 確かに大船団を被害なく撃退したって言えば、無理に構わなくてもいいと言えなくもないって感じ?


「別にアイリが気にする必要はないわよ? 何だかんだ理由をつけて、自分のとこの兵を出したくないだけだろうし」

「でもこのままじゃ何も進まないですよね?」

「そうなのよねぇ……。わたくし一人じゃ無理だからアイリの手を借りなきゃならないし、それでもアイリなら簡単に攻め滅ぼしちゃいそうだから恐ろしいんだけれど、そうすると今度はわたくしが他の貴族に恐れられたり妬まれたりするだろうし、そう考えると後々面倒だからいっそ放置しちゃおうかとも思うんだけれど、そもそも宣戦布告されてるんだからキチンと対処しなきゃだし――」


 よほど不満が溜まってたのか、マシンガンのように出てくる出てくる。

 もうこうなったら私だけでやっちゃおうかな? 本当は他国の戦争に深入りするのは避けたかったんだけど、一応は巻き込まれた側だし仕方ないよね?


『少々よろしいですか、お姉様』

『今度は何? またカゲツの昔の女がやって来たとか言わないでよね?』

『違います。というか、カゲツは女癖が悪いわけではありませんので、あまり責めないでやってください』

『冗談よ』


 リュックとイトさん、ついでにアヤメにも昨日の出来事は伏せてあるわ。

 事情を知ったら心中複雑になるだろうし、知らぬが仏ってやつよ。


『それで、何かあったの?』

『はい。実はアイリーンにいる冒険者の中に、ダンノーラに行ってみたいと熱望している者がおりまして、お姉様の判断を仰ぎたいと思ったのです』


 ふ~ん、ダンノーラにねぇ?

 アイカが言うくらいだから、その冒険者に他意はなって事かな。


『動機は何?』

『なんでも元の世界の祖国によく似てると噂されてるらしく、ぜひ自分の目で見てみたいと思ったのだとか』


 転移者か転生者ね、そいつ……。


『私に聞くって事は、問題ないヤツなんでしょ?』

『無いと言えば無いのですが、特に連れて行く理由もありませんし。それにその男、アイリーンの近くで腹を空かせて倒れておりまして、通りかかった商人が保護した男なのですよ』

『……なんで空腹だったの?』

『保護した時には無一文でした』


 分かりやすい理由だわ……。

 お金が無いから自力じゃ行けない。だから熱望してると。

 面倒だから却下――と思ったんだけど、よく考えたら使えるかもしれない。


『分かったわ、そいつも連れて行きましょ。今日にでも出発するから伝えといて』

『了解です』



★★★★★



「ハッハッハッ、こいつぁすげぇ! まさか本当に空を飛べるとはな!」


 ホーク(人化は解いた状態)の背に乗った無精髭(ぶしょうひげ)の男侍が上機嫌で叫んでいる。

 この浮浪者みたいなのがダンノーラ行きを希望してた男で、アイリーンでただ飯食らって冒険者になった男でもあるのよ。


「いい天気ね~、他の眷族ちゃんも嬉しそう~」


 お姉ちゃんが横で飛行しているアンジェラ(こちらも人化を解いた状態)を微笑ましく眺めていた。

 その背中にはモフモフを筆頭に、ギン、クロ、ザード、セレンの五人が乗っていて、更に前方ではドローンに跨がったアイカもいる。ドローンの使い方を間違ってるような気もしないではないけれど……まぁいいか。

 それからゴーレム姉妹だけど、今回はヨシテルの護衛も兼ねてお留守番よ。

 その代わり――って訳じゃないけど、お姉ちゃんを連れて来たわ。召喚した奴を突き止めるためにね。


「風を切るって言葉があるが、まさにその通りだな。この頬を撫でる感じが心地いいぜ!」

「オッサンオッサン、はしゃぎ過ぎて落っこちるんやないで? わざわざ拾いにいくんは面倒やさかいな」

「わぁってるよ。こう見えてもバランス感覚にぁあ自信があんだ。簡単にぁあ落ち――」


 ガクン!


「うおっ!?」

「なんや、やっぱ危ういやんけ」

「――ってお前、今わざと揺らしたろ!?」

「ピュィーピュィー♪」

「誤魔化してもバレてるからな?」


 ゴツゴツン!


「「っでぇぇぇ!」」

「はいはい、オッサンはおとなしくしてて。ホークも悪ふざけしない。お姉ちゃんと私が乗ってるのを忘れちゃダメよ?」

「ぼ、暴力反対やでぇ……」

「嬢ちゃん、見かけによらず手が早いな……」

「アンタらがおとなしくしてればいいのよ!」


 ったくもぅ、コイツら似た者同士ね。


「ところでだな、せっかく武蔵(たけぞう)って名乗ったんだしオッサン呼ばわりは勘弁してくれねぇか?」

「そう呼んで欲しかったらおとなしくしてなさいよ」

「へいへい」


 このお調子者の武蔵は元プラーガ帝国で中隊長を勤めてた男で、プラーガ帝国の後継者争いでは正規軍として戦ったのよ。

 けれど正規軍は敗北し、私が密かに支援した反乱軍が勝利したことで帰る場所を失い、そのまま放浪の旅に出たらしい。

 そしてたどり着いた場所がアイリーンのすぐ近くってわけ。

 ちなみに反乱軍を支援したのも理由があるんだけれど、詳しくは――今は必要ないわね。


「あのぉ~、どうして武蔵(たけぞう)さんは武蔵(むさし)って名乗らないんですか?」

「!?」


 あ~お姉ちゃんが言っちゃった。せっかく言わないでおいたのに……。

 ――ってな訳で、このオッサンの正体は宮本武蔵(みやもとむさし)よ。


「……まさかとは思うが、お前さん達も転生者なのか?」

「私は転生者で、お姉ちゃんが転移者よ。どちらも日本から転移した事には変わらないし、オッサンの事も知っているわ」

「マジか……。世界は広いって言うが、案外狭いんだな……」


 偶然だろうけどね。

 でもお姉ちゃんと再会できた事を考慮すれば、やっぱり狭いって事になるのかな?


『お姉様、陸地が見えてきました。ダンノーラ帝国の西部で間違いありません』


 空の旅もそろそろ終わりそうね。

 アイカには先行してマッピングをお願いしてたから、最短距離で来れたのが大きいかも。


「アイリはんアイリはん、どうも港が騒がしいようやが、どないするん? ワイらも乱入して暴れるんかいな?」

「お、いいねいいねぇ! せっかくアイリーンで鍛練したことだし、ここらで腕試しといこうじゃねぇか!」

「アンタらねぇ……」


 それじゃあ賊と変わらないじゃないの。

 ダンノーラに来た理由はガルドーラ侵略を唱えた新皇帝をボコるためなんだから、無闇に犠牲者を増やす必要はないのよ。


「とにかく、余計な手出しはせずに、このまま内陸まで乗り込んで――」 

「せやかてアイリはん。港で囲まれてるんはガルドーラの商船やで?」

「それを先に言いなさい!」


 折り返しでダンノーラから出ようとしたら戦争が始まったって感じね。

 二人の思惑通りになるのは(しゃく)だけど、ガルドーラの人達を見捨てるのは良心が痛む。

 救済して出港するまで見届けましょ。


「ホーク、このまま突撃して群がってるダンノーラ兵を排除して」

「よっしゃ、任せとき!」

「オッサンも言い出しっぺなんだから援護して。なるべく不殺でね」

「またオッサンって……。まあいい。ちょっくら行ってくるぜ!」


 ホークが急降下を開始したところでお姉ちゃんと共に宙へ舞う。

 天気も良いし風が気持ちいい――ってやってる場合じゃないわ、アンジェラにも指示を出さないと。


『アンジェラもホークに続いてちょうだい。但し、ガルドーラの人達には被害が出ないようにしてね』

『うむ、任せるがよい』


 高度を下げていくアンジェラを見届け、そのまま一番高い建物へと着地。足元で繰り広げられる戦闘――というより乱闘に近い感じのを観戦する。

 さすがにお姉ちゃんを連れたまま戦うのは危険すぎるからね。


「も~ぅアイリちゃん、スカートを履いたまま空を飛んだりしたらダメじゃな~ぃ」

「大丈夫だって。高度が高過ぎて誰にも見えなかっただろうし」

「そんな事言って~。それなら――はい。せめてこれ履いて~」

「ああ、スパッツね。でもピッチリしてるのは好きじゃないしなぁ……」



「――って、どこから出したのソレ!?」

「どこから~? 普通にここから――ほら」

「え、えええ!?」


 何もない空間から私のお気に入りワンピースが――って、これってまさか!


  名前:アイナ 性別:女

  年齢:17歳 種族:人間

  身分:女子高生(一般人)

 スキル:アイテムボックス←new 念話 相互言語

  備考:アイリの姉


 やっぱりぃぃぃ! 

 このお姉ちゃん、念話に続いてアイテムボックスまで覚えちゃった!


『お、お姉様、大変です! 何者かによりダンジョンコアがハッキングされ、DP(ダンジョンポイント)を勝手に消費されました!』

『こんな時にハッキング!?』


 まさかダンノーラにも天敵が――いや、ちょっと待った少し落ち着こう、冷静に冷静に。

 そのDP消費には物凄ぉぉぉくタイムリーな心当たりがある。


『ねぇアイカ。消費したDPってお姉ちゃんが持ってるスパッツとワンピースを足した数値じゃない?』

『ア、アイナお姉様のですか? ――あ、お姉様の言う通りです。このような偶然ってあるのでしょうか?』

『あるわけないでしょ』


 どんなカラクリか知らないけれど、これで一般人っていうのは無理があるんじゃ……。


『お~い(しゅ)よ、こっちは終わったぞ~』


 やはり過剰戦力なだけあってあっという間だった。

 仕方ない。お姉ちゃんのスキルは一旦置いとくとして、まずはガルドーラの商船をフォローしなきゃ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ