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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
第5章:進軍、ダンノーラ帝国!
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ダンノーラ大船団

「ハァハァ……中々やるじゃねぇか。それでこそAクラスのナンパールだぜ」

「そう言うキミも以前よりは強くなっているよゲイル君」

「ハッ、そいつはありがてぇ評価だが、少しは周りを気にした方がいいぜ?」

「ん? ギャラリーの事かい? もちろん気にしているとも。この僕に見とれる女性は何人たりとも――」

「隙あり!」


 ゴン!


「ブッ!?」


 背後から現れたリュックが(さや)で殴ると、後頭部を押さえたナンパールが悶絶(もんぜつ)する。女の子ばかり気にしてるからそうなるのよ。


「おおっと、優勝候補の一角ナンパールが敗れたぁぁぁ! このままリュックの勝利が決まるのかぁ!?」


 マイクを手にしたリュースがノリノリで実況している。

 現在リュックとゲイルしか立っていないのは、他の参加者であるグラドとエリオットが早々とKOされたからよ。


「だがこのままじゃ終われねぇ、これでも食らいやが――」

「たぁぁぁ!」


 ゴツン!


「ブハッ!」

「決まったぁぁぁ! 第一回バッカス闘技場設立記念杯はリュックの勝利だぁぁぁ!」

「「「おおおっ!」」」


 ゲイルの奮闘も(むな)しく、結果はリュックの圧勝で幕を閉じた。

 いつの間にか観客席では娯楽に飢えた民衆が熱視線を送ってて、空間が割れるんじゃないかくらいの歓声が上がる。

 有っても無くてもいいって考えてたけど、こうして見ると造ってよかったのかも。


「まさか闘技場まで造ってるなんてね……」


 呆れ顔のルミルミがステージを見下ろしつつポツリと(つぶや)く。

 港湾を見て言葉を失ったルミルミが、帰りに見たのがこの闘技場なのよ。

 大和と武蔵を見た後だから、さほど驚かなかったのが残念だけどね。


「闘技以外の使い道もございますし、有って損はないかと。それにいざとなれば緊急避難所としての役割も果たせますし、5000人くらいなら収容可能です――ポチッと♪」


 グイーーーーーーン!


 得意気なアイカがスマホをタップすると、天井がシェルターで覆われていく。


「こ、今度は何!?」

「大丈夫ですよルミルミ様~。ただの雨天対策ですから~」

「そ、そうなの……」

「いや違うから!」


 強烈なボケをかますお姉ちゃんは置いといて、これは上空からの襲撃を想定した対策なのよ。核攻撃だって防げるし魔法だってシャットアウトよ。


「いかがです? このシェルターなら――」

「酸性雨にも負けませんね~」

「だから違いますって!」


 あのアイカが疲れた表情でツッコミを入れてる。

 我がお姉ちゃんは相変わらずね……。


「ちなみにですが、この闘技場ごと打ち上げが可能となっておりますので、有事の際は――」

「宇宙旅行もできるのね~」

「「違う!」」


 なぜに有事に宇宙旅行なのか……。それに宇宙進出も考えてないし。


「……コホン。とにかく、この街が非常識な何かに成りつつあるのが分かりました。これなら何時攻められても安心できるわね」


 何か悟ったような顔のルミルミ。侯爵なんだから多少の非常識は慣れてほしいわ。


『お姉様、どうやら先ほどのルミルミの発言がフラグになったようです』

『それって……』

『はい。巡回中のドローンが、ダンノーラの大船団を捉えました。間もなく大和の射程に入ります』


 つまり撃てと?


『まぁ待ちなさい。一方的に沈めるのもありだけど、まずは対話をしてみようじゃないの。返答しだいでは撃っても構わないから』

『それもそうですね。どうせ大和にキズを負わせる事すら不可能でしょうし、天と地の差を見せつけるのもよいでしょう』


 そうそう。大和は無人で動かせるから、万一撃沈しても問題はない。

 ……いや、大量のDP(ダンジョンポイント)を使用してるから、百倍にして返してやるわ。


『こらこら二人共~、あまり無益な殺生はダメよ~?』

『そうは申されましてもですね、ダンノーラ帝国はすでに宣戦布告をしてきて――』

『そうよお姉ちゃん。戦争なんだから、殺しちゃダメーーーなんてのは――』



『『お姉ちゃん(アイナお姉様)が念話を使ってる!?』』


 聞き間違いじゃないわよね!? 確かにお姉ちゃんの声が脳内に!


『あ、あのぉ……失礼ですが、アイナお姉様はどのようにして念話を?』

『どのように~? う~ん……上手く言えないけど~、二人と話したいな~って思ったら、自然と出来ちゃった~♪』

『『……え?』』


 もしかして自力で習得した? いや、できるかどうか知らないけれど……


『ねぇアイカ、こんな事ってあり得るの?』

『いえ、わたくしも聞いた覚えはありませんし、仮に出来たとしてもたった数日で習得出来るなんて前代未聞(ぜんだいみもん)です』


 鑑定スキルでもごく普通の人間としか表示されないし、いったいどうなってるんだか……


『それより二人共~、帝国の船団をどうにかしないとダメなんじゃないの~?』

『『あっ!』』


 そうよ、想定外なお姉ちゃんより、そっちを優先しなきゃ!



 ――ってな訳で座標転移(ハザードワープ)でルミルミの邸へと戻り、船団が迫ってる事を伝えた。


「ダンノーラの船団が来るですって!?」

「はい。すでに大和の射程に入っておりますが、いかが致しましょう?」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。本当に攻めてきてるの? 宣戦布告から1日も経っていないのよ!?」


 ダンノーラからの宣戦布告は、フローレン国家主席の計らいによって私たちも耳にする事ができた。

 それによると、前白河(さきしらかわ)法王がガルドーラによって監禁されているって事になってて、その報復のために宣戦布告をしてきたんだとか。

 当然これが建前なのは一目瞭然なんだけどね。


「宣戦布告と同時に攻め込むつもりなのだと思われます。ほぼ奇襲に近い形ですので、ダンノーラ側が優勢――というのが向こうの筋書きなのでしょう」

「やってくれるわねダンノーラの連中……。でもアイリ達が居てくれて助かったわ。もしも私だけなら呆気なく陥落してたでしょうし」


 領主になってから日が浅いもんね。

 けど大丈夫。私がいる限り連中の好きにはさせない。


「此度はアイリに任せるわ。派手に打ち負かして連中に吠え面をかかせてやりなさい」

「分かりました」


 さて、ルミルミからも任されたし、超弩級のインパクトを与えてやろうじゃない。



★★★★★



 一方こちらはダンノーラ側で、アイリによる手厚い歓迎が待っているとは知らず、気性の荒い男達が甲板で談笑していた。


「もうすぐガルドーラが見えてくるぜぇ」

「おうよ。新たな戦いの舞台が俺達を待っている――ってな」

「だが連中も気の毒だぜ。海の支配者である俺達を敵に回したんだからな」

「おうそれそれ。しかも今回は奇襲に近いタイミングときたもんだ。俺らに気付いた時にはすでに手遅れよ。――ですよねお頭?」

「ああ。まさか連中もこれほど早くに攻め込まれるとは思っておるまい」


 お頭と呼ばれた男――ムラカミという水軍の総大将が、真っ直ぐにガルドーラ方面を見据えつつ答える。

 鎧兜の隙間から覗く鋭い眼光は、負けることなど毛ほども思っていないであろう自信に満ち溢れていた。

 そんなムラカミの居る船に一隻の小舟が近付いてくる。索敵を行っていた者が戻ってきたのだ。


「お頭ぁ、ガルドーラの沖合いに、妙なデカブツが見えますぜ?」

「デカブツだと? それだけだと何とも判断できん。もっと具体的に言え」

「そ、それが、あっしとしても初めて目にするブツでございやして……」

「(チッ、使えんやつめ……)」


 要領を得ない話に内心で舌打ちするが、だったら直接目にして確認するまでであり、改めて他の船団にも通達を行わせる。


「クキとマツラにも伝えろ。妙なデカブツが見えるが油断はするな――とな」

「了解ですぜ!」


 すると伝令を向かわせて間もなく、聞き覚えのない少女――アイカの声が辺りに響く。


「アーアー、テステス。ダンノーラの皆様、これより先はガルドーラの領地です。戦闘の意思がないのでしたら直ちに止まりなさい」

「「「!?」」」


 声はすれど姿は見えず、多くの男達はキョロキョロと辺りを見渡す。

 だが特殊明細(ステルス)を発動しているドローンを見つける術はなく、そんな彼らを嘲笑うかのようにアイカは続ける。


「そちらからは見えませんので探しても無駄です。それよりどうするのですか? 停止しないなら本当に撃沈しますが」

「ハッ、バカバカしい。船団も無しにどうやって撃沈するというのだ。そのような虚仮威(こけおど)しに屈するほど、我々は愚かではない」

「おや、虚仮威しと申されますか。先ほど見えた小舟が目撃したはずですが……まぁいいでしょう。そこまで言うのなら、撃沈しても構いませんね?」

「フン、やれるものならやってみ――」

「では大和砲――発射!」



 ドッッッゴォォォォォォンンン!


「ぐおぉぉ!? ななな、何が起こった!?」

「わ、分からねぇです! 遠くから何かが飛んできたようにも見えやしたが、正確には不明でさぁ!」


 ムラカミを中心に男達は慌てふためく。

 彼らの射程外から撃ち込まれたため、対処できるはずもない。

 いや、そもそも射程内だったとしても、あの大和を撃沈するのは困難だろう。


「お、落ち着け。衝撃は凄まじいが、威力は大した事は――」


 ない――と言いかけたが、一人の部下がある事実に気付く。


「おおお、お頭ぁぁぁ! マママママ、マツラ船団がぁ!」

「落ち着けと言っている! マツラがどうしたっ――んな!?」


 あろうことか、遠くで別の船団が炎上しているではないか。

 つまり先ほどの衝撃はマツラ船団を襲ったものなのである。

 しかし、彼らの悲劇は終わらない。


 ドッッッゴォォォォォォンンン!


「ぐおぉぉ! ま、またか!?」


 激しく揺れる船舶から落ちないよう甲板へとへばりつき、揺れがやや収まったところで周囲を確認する。

 すると……


「ままま、まさかクキ船舶までも!?」


 そう、右翼展開していたクキ船舶までもが炎上を始めたのだ。

 あまりにも一方的な展開に、さすがの彼らも戦意が最底辺まで急落し、ついにムラカミは決断する。


「ま、待ってくれ! 降参する、降参するからそれ以上は――」


 やや間を置いたアイカの返答は……


「ダメでーーーす。最初の警告を無視した時点で、あなた達の身の安全は保証しませーーーん」

「そんな!?」

「――という訳で、また来世で頑張ってください」


 ドッッッゴォォォォォォンンン!


 また一つ、海の藻屑が増えるのであった。


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