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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
序章:私、ダンジョンマスターなの……
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呪い?

 アーモンドの身柄はその日の内に学園長へと引き渡した。

 詰所に連れてって経緯を話しても信用されない可能性があったしね。

 一応ギルガメルというダンマスに関しては、私の方で調べてみようと思う。

 けれど現状はギルガメルを気にしてる余裕がないほど、私の周りは騒がしくなった。


「おぅ、お前がアイリって女か?」

「そうだけどアンタ誰? 他人に尋ねるなら、まずは自分から名乗ってよね」

「ああん? 俺様を知らねぇだと? テメェらGクラスより遥か雲の上にいるCクラスのゲイル様を知らねぇっていうのか!?」


 普通に廊下を歩いてたらこれよ。

 遥か雲の上なんて知るわけないし、体臭がキツそうなおデブに興味もない。


「……それで、私に何の用?」

「おぅ、それそれ。いっちょ俺と勝負しろや。もし俺様に勝てたら特別に俺の女にしてやるよ」


 バカなのコイツ? 勝っても負けても私にメリットがないじゃない。

 負けるのならまだしも、コイツの女になんて死んでも御免だわ。


「けっこうです。他をあたってちょうだい」

「な!? っておい、待ちやがれ!」


 こういう輩は無視するに限る。

 素早く脇をすり抜け、教室へ向かおうとしたところで……


「そこの貴女、止まりなさい」

「何? 急いでるんだけど……」

「貴女の事情なんか知ったこっちゃありません。全ての時をこの私――サフュアに捧げなさい」


 は? 時間を捧げる? なんだろう、この危ない女は……。


「GクラスにしてCランクの魔物を討伐したという戯言を垂れ流しているのは知っているんですのよ? おとなしく(こうべ)を垂れて懺悔(ざんげ)するのです」

「アンタにはこれっぽっちも関係ない話よ。アホなこと言ってないで、自室で瞑想(めいそう)でもしてなさい」

「瞑想なら今朝済ませて――って、お待ちなさい! 話しはまだ――」


 待てと言われて待つバカはいないわ。


「私はBクラスのサフュアです。覚えておきなさ~~~い!」


 気が向いたら覚えてあげるわ。

 卒業するまでないかもしれないけど。


「やぁ、そこのキュートな子猫ちゃん。キミが今もっとも輝いているアイリちゃんで間違いないかな?」

「人違いです」

「フフ、なぜ分かったかっ――て、ええ!?」


 キザったらしいノッポなんかお呼びじゃないのよ。

 ナンパしたいなら街にでも繰り出せっての。


「ままま待ってくれ! ウィザーズ学園にその人ありと言われたガルドーラの貴公子――Aクラスのナンパールとは僕のことだ! そんな僕に声をかけられるのはとても名誉なことなのだよ?」

「名誉はいらないので失礼しますね」

「フッ、そうだろうそうだろう。僕としては是非キミに――って待ちたまえ!」


 どうせ口説き落とした女の子の数でも趣味にしてるんでしょ。

 個人的にああいうタイブの男は大っ嫌いなのよね。

 絶対に近付きたくない奴だわ。


「ちょい待ちぃや、お前がアイリいうやつやろ? ワイと勝負し――」

「遠慮します」

「お前、あたしと勝負しな!」

「しません」

「YoYo、そこの嬢ちゃんYoo」

「どきなさい!」

「オ、オデのお嫁さんに――」

「○ね!」


 ほんっとぉぉぉにウザいわ!

 次から次へと涌いてきてもぉぉぉう!


「――ってことで、最初の授業は半分寝てるから起こさないでね」

「えぇぇ……」


 困り顔のリュックをよそに、私は机に突っ伏した。

 しばらくは安静にしていたい。病人じゃないれども。


「ヘーロー、エブリバーデー! 今日も楽しい授業が始まるぜ~ぃ!」


 もう担任ですらウザいと感じるようになってきた……。


「あ、そうだ。折り入ってアイリさんにお願いしたいことがあったんだ」

「お願い?」

「うん、実は――」

「へーーーィ、ユゥ!」


 ビシッ!


「痛っ!?」

「授業中のお喋りはノーセンキューだぜッフッフーーーゥ!」


 あらら、リュックったら先生に指でつつかれちゃった。

 というかストロンガー先生って、他人の話を聞いてないようでしっかりと聞いてるのね。



★★★★★



「この邸は……」

「僕の幼馴染みが住んでる邸だよ」


 放課後になり、リュックに案内されるまま首都を歩き回っていると、いかにも貴族が住んでます的な邸にたどり着く。

 首都(ここ)だと貴族街にあたる場所だし、幼馴染みは貴族で確定ね。 

 ……実はリュックの正体は貴族でしたってオチはないわよね?

 それにグラドとトリムも一緒だけど、この2人も……


「おいリュック、お前がちゃんと説明しないからアイリが困惑してるぞ?」

「え!? あ……ご、ごめんねアイリさん。幼馴染みは貴族の女の子だけど、別に畏まらなくても大丈夫だよ? クレアは身分差を気にしないから」

「なら安心ね。気難しい貴族とかは相手するのに疲れるから」


 懸念は払拭されたところで使用人に取り次いでもらい中へと通され、白とピンクの可愛らしい装飾で飾られた扉の前で立ち止まる。

 ネームプレートには水色の花弁が添えられていてクレアと読めることから、ここがクレアの部屋なんでしょうね。


「クレア、入るよ?」

「リュック? 早く入って!」


 随分と歓迎せれた様子のクレアに促され、部屋へと足を踏み入れる。

 すると窓際のベッドでパジャマを着た蒼い髪の女の子が、こちらを見て微笑んでいた。


「いらっしゃいリュック! トリムとグラドも久し振りね」

「うん、元気そうで何よりだよ」

「だなぁ。俺もクレアの顔を見れて満足――じゃなかった、安心したぜ」

「なにニヤけてんのよ、バガグラド」

「ニヤけてねぇ!」


 なんか良いわねこういうの。

 生前の私は友達が居なかったから、正直クレアが羨ましい。


「……そっちの子は?」

「こちらはアイリさん。最近Gクラスに転入してきたクラスメイトだよ」

「アイリよ。リュックはさん付けで呼んでるけれど、アイリって呼び捨ててちょうだい」

「……よろしく」


 急によそよそしくなった。

 リュックと私を交互に見比べて強張った顔をしてるあたり、人見知りが激しいのかも。


「それでアイリさん、クレアがかかっている原因不明の病を治してほしいというのが、僕のお願いなんだ」

「リュ、リュック!?」


 クレアが目を丸くして驚いてる。どうやら事情を話してないみたい。


「アイリさんは凄いんだ! ヴァンパイアに洗脳された生徒達を一瞬で治しちゃったんだよ! だからきっとクレアの病気も――」


 ペシッ!


「痛っ!?」

「落ち着きなさいっての。いくら私でも全てを治せるわけじゃないんだから、まずはどういう病気なのか教えてもらわないと。ね、クレア?」

「…………」

「あ、あの……クレアさん?」


 なぜか物凄く睨まれてますけど!?

 なんかもう、目だけで魔物を殺せるんじゃないかってくらい鋭い眼孔が……。

 どういう事かと首を傾げてると、トリムがそっと耳打ちしてきた。


「クレアはね、リュックの事が好きなのよ。だから彼女の前でリュックに手を上げるのは厳禁よ」


 ……それ、最初に言ってくれません?

 ともあれ原因は分かったので、これからは注意しよう。

 でもって、さっそくクレアを鑑定スキルにかけてみた。


 名前:クレア 性別:女

 年齢:15  種族:人間

 備考:先祖が犯した罪により、子孫であるクレアが短命で生涯を終えてしまう呪いを受けている。更にステータス激減が死ぬまで継続するという恐ろしい効果をもたらし、どう頑張っても17歳で命が尽きる。この呪いは精霊がかけたものであり、その精霊に解除してもらう――もしくは倒すしか逃れる術はない。


 え? いやいや、これをクレアに話せっていうの?

 さすがに話すのは躊躇(ためら)う内容よ。少なくとも現段階ではクレア以外には聞かせられない。


「みんな、悪いけどクレアと二人きりにさせてくれない?」

「何か方法があるんだね? 分かった、僕らは外に出てるから」

「お、おい――」

「ちょっと引っ張んないで――」


 余程クレアを気に掛けてるようで、リュックが率先して二人を伴い部屋の外へと連れ出してくれた。

 さて、どう切り出そうか……ん? なぜかクレアがベッドの隅に身を寄せてる。


「あの~、クレアさん? どうして私から距離を取るの?」

「だ、だって貴女、私を口説き落として手篭めにするつもりでしょ?」

「はぁ!?」


 どうしてそうなる!

 私にそっちの趣味はないわ!


「だ、だってメイドが言ってたもの。第三者が居ない密室に女子が2人。何も起こらない訳がなく――って」

「……クレアのために言うけど、今すぐそのメイドは首にした方がいいわよ。思考がかなり片寄ってるから」


 未成年に余計な事を教えんなっての……。


「……コホン。じゃあ本題に入るわ。ズバリ言うけど、クレアが掛かってるのは病じゃなくて呪いよ」

「……え?」


 その時、時間が停止したかのように、クレアが硬直した。


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