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二本刀の背後

 ドドドドドドドド!


 大きい揺れと共に天井が崩れ、私を押し潰さんと迫ってくる。まさかマサカドもろとも生き埋めにしてくるとは思わなかったわ。


「グゴォグゴォ……」


 そのマサカドはご覧の通りに必死にもがいていらっしゃるようで、落ちてきた岩に挟まれている。もちろん助けたりはしないわよ? 寧ろそのまま埋まっててちょうだい。


「さて……」


 ここまでしてくれた清姫にはキッチリとお礼をしとかないと、私の気がすまない。

 ええ、怒ってるわよ? ここまでやられたんだから半殺しじゃすまないわ!


「――シャインレイジング!」


 全身を光のオーラで包み込み、一気に開放しつつ天井を突き抜けた。


 ズドォォォン!


「何!?」


 まさか数秒足らずで出てくるとは思わなかったようで、清姫が驚き振り返った。

 私としては心外よ。あれで勝ったつもりだなんてね。


「チッ、しぶといやつめ……」

「生憎だったわね、あの程度じゃ私を仕留めるのは無理よ」

「だが眷族は無事ではなかったらしいな? それだけでも価値はあったと言うべきだろう」

「フッ……」


 勘違いね。ええ、とんでもない勘違いをしているわコイツ。眷族の姿が見えないのを仕留めたと思っているらしい。


「……何がおかしい?」

「だってそうじゃない。私は眷族を()()()()()()()()()()()だけなんだから、この場にいないのは当たり前よ」

「な!?」


 実は生き埋めになる前に送還させたのよ。いや、寧ろ勾玉を持った清姫がいたせいで、そうせざるを得なかったと言ったほうが正しいわね。あのまま放っておいたら本当に生き埋めだっただろうし。


「そろそろ年貢の納め時ね? 今まで散々振り回してくれた分を返してあげる」

「チッ、この場は退いてやる――」

「バカね、逃がすわけないじゃない――スプラッシュファイヤーボール!」


 ボスッドスッバスッボスッ!


「ぐぉぉぉ! クッ、クソッ!」


 火球は逃がさないための足止めよ。転移石を使わせる隙を与えないためのね!


「これで終わりよ、清姫ぇぇぇ!」

「し、しまっ――」


 ズバン!


「ギャァァァァァァ!」


 薙刀を構える前に袈裟斬りにしてやった。


「ようやく決着がついたわね? アンタの顔も見飽きたところだし清々するわ。私を怒らせた事を冥土で後悔してなさい」

「わ、妾は……二本刀の清姫。それが……こ、このようなところでぇぇぇ!」


 斬り捨てた清姫が、血を吐きながら落下していく。

 でもまだ終わりじゃないわ。二度と復活しないようにトドメを刺してやる。


「火葬はサービスよ――フレイムボム!」


 シュ――ボォォォォォォン!


「ぐわぁぁぁ……」


 鎧もろとも焼き尽くしてやったわ。これで脅威の一つは潰したわね。


「――って、ヤッバイ! 勾玉ごと燃やしちゃったじゃない!」


 確か手強い魔物を封印していたとか言ってたし、壊したらマズイかも。

 どうか無事でありますように!


「勾玉勾玉……あ、よかったぁ! 三種の神器と言われるだけあって無事に――え?」


 スィ~~~


 あの爆発でも消し飛ばなかった勾玉が、独りでに動いている!?

 慌てて追いかけようとした矢先、勾玉が向かう先に怪しげな人物が浮遊しているのが目に止まった。


「すまぬな。八岐勾玉(やまたのまがたま)は返してもらうぞぃ」


 琵琶を片手に持つ爺さんの手に、勾玉がスッポリと収まった。よく分からないけれど、この爺さんには三種の神器を吸い寄せる能力があるのかもしれない。


「……誰? 清姫の仲間だって言うなら見逃すわけにはいかないんだけど?」

「仲間……か。まぁ、お主からすればダンノーラの()皇帝は敵に等しいかのぅ?」


 どうして()なのか少し引っ掛かるけれど、私からすれば敵よね。


「だったら見逃せないわ。その勾玉を放置するわけにはいかないし、おとなしく返してくれれば命だけは助けてあげるけど?」

「ふむ……可愛らしい外見とは裏腹におっかない言葉を口走るのぅ。しかし儂とて引けぬ事情があるのだよ」

「引けぬ事情ねぇ……」


 名前:前白河雅仁(さきしらかわまさひと) 性別:男

 年齢:63歳   身分:法王

 種族:人間

 備考:ダンノーラ帝国の元皇帝で、現在は法王としての地位を与えられている。しかし決して身分が高いわけではなく、王とは名ばかりの外交官である。


 嘘は言ってないようだし、話だけでも聞いてみよう。


「幾つか質問するから正直に答えて。但し、逃げようとしたら命は保証しないわ。いい?」

「よいじゃろう。知っている事なら包み隠さず答えよう」


 敵意は感じない――と言っても騙す可能性はあるし、油断しないように気をつけよう。


「なら最初の質問。どうして三種の神器を集めてるの?」

「集めてるというのは少々誤りがある。儂はただ有るべき場所――琉宮の地に収めたいだけなのじゃ」


 三種の神器は琉宮という島から持ち出されたってイトさんも言ってたっけ? なら一応辻褄は合うのかな?


「じゃあ次の質問。二本刀とはどういう関係?」

「二本刀か……。かつては儂を支える配下であったが、今は現皇帝の忠実な(しもべ)となった若き二人じゃ。ま、早い話が見限られてしまったのじゃよ、情けない話じゃがな」


 見限られた? 何か深い事情が有りそうだけど、仲間ってわけじゃなさそうね。詳しくは後で聞こう。もっと肝心な事を聞きたいし。


「どうして今ごろ現れたの? 見方によっちゃ、清姫が倒れたところを横からかっ拐おうとしてるだけにしか見えないんだけど?」

「……痛いところを突くのぅ。ま、はっきり言ってしまえばその通りじゃな」


 ちょっとビックリ。あっさりと自白したわ。


「まともに戦えば儂に勝ち目はないからの。持ち出される前に説得できればよかっただろうが、それができれば苦労はせんわぃ」

「じゃあ二本刀より弱いんだ?」

「中々にして容赦ないのぅお主……。否定できんのが悔しいわぃ」


 ――の割には悔しそうには見えないけどね。


「しかしお主のお陰で助かった。儂一人では二本刀には敵わんし、是非とも時雨叢雲(しぐれむらくも)を取り戻すのに協力してほしい」


 協力ねぇ……。都合よく利用されるのは(しゃく)だし、交換条件としてダンノーラの侵攻を抑えるのに協力してもらうのもありかな?


「ちょっと話が逸れたけど、私としては勾玉が悪用されなきゃ問題ないわ。二度と持ち出されないように封印するんなら返してあげてもいいけど」

「勿論じゃよ。恐るべきあの魔物を復活させるわけにはいかんし、厳重な封印を施すつもりじゃ」


 ならいいか。じゃあさっさと頼姫を――


『アイリ、聴こえる?』


 ――っと、ペサデロからの念話だ。


『何かあったのペサデロ?』

『うん、頼姫のせいでリュックが大変なことになってる。だから急いで来てほしい』

『リュックが!?』


 頼姫が何か仕込んだに違いない。ホントつくづく面倒な連中ね!


『分かった、すぐ行くから待ってて!』

 

 法王の爺さんとのんびり話してる暇はないわ。さっさと頼姫も倒さなきゃ。


「爺さん、頼姫のせいで面倒な事になってるらしいから、この場は見逃してあげる。でももし悪用しようとすれば――」

「いや、儂も頼姫の元へ連れてってくれぬかのぅ?」

「――へ? 私についてくるの?」

「奴が持つ時雨叢雲(しぐれむらくも)をどうにかしたいのじゃろう? 儂が持つ八咫烏鏡(やたがらすのかがみ)ならば、奴が怯んだ隙に吸い寄せられるだろう」


 そう言って懐から取り出して見せたのは、太陽に反射してキラリと光る手鏡だった。

 透かさず鑑定すると、三種の神器である最後の一つだと判明。さっきはこれを使って勾玉を吸い寄せたのね。


「分かったわ、一緒に頼姫をブチのめしに行きましょ」


 待ってなさい頼姫。必ず倒してリュックを助けてみせるわ!


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