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襲撃再び

 ドーラとの話が終わり晩餐会の終わりまでテキトーに過ごした後、ルミルミの邸へと戻った私は改めてドーラの話をまとめてみる。


『ガルドーラを裏切ったドーラが他の貴族達と手を組んだことで、飛躍的な発展を遂げてきたのよね』

『はい。ダンジョンの仕組みを理解し、魔力的なノウハウを得たドーラだからこそ成し得たのでしょう』

『でも手駒を失ったガルドーラは当然困るわよね』


 ガルドーラにとっては敵に塩を送ってしまった形になった。そうなると代わりとなる人物が必要になってくる。


『そこで目をつけたのがギルガメルだったと。ダンジョンマスターでありながら国を支配しようと目論んでいた彼にとっては、正に渡りに船って感じに』

『ところがお姉様の怒りをかったギルガメルは死に、ガルドーラの企ては暗礁に乗り上げてしまったのですね』

『そこでドーラは、チャンスとばかりに貴族の取り込みに動いた――と』


 派閥の一角であるギルガメル――もといビルガが倒れたのを機にね。

 更に友好関係にあったダンノーラ帝国の助力を得てガルドーラを仕留めたと言ってたわ。

 ところが……


『ダンノーラ帝国の狙いは魔導国家であるガルドーラそのものだった。困ったドーラは私を取り込む事に決め、手先であるルミナステルに命じた』

『残念なことにドローンによる読心スキルでの看破はできませんでしたが、言ってる事に矛盾は見当たりませんね』


 そう、ドーラが自動人形(オートマタ)なのが原因か、内心を探ることは出来なかった。

 だけども表面上は筋が通ってるのよね。


『但し、国家主席と派閥争いをしている事に言及すると、上手くはぐらかされてしまったわ。国家のバランスを保つためだとかいう理由を述べてね』

『気になる点ではありますね。それにお姉様がルミナステルのスキルに掛かっていた場合、そのまま操っていた可能性も捨てきれません』


 ひとまずはドーラの言葉を信じるとして、油断だけはしないように注意しておこう。


『ちなみにルミナステルですが、お姉様への溺愛感情は本物でした』


 うん、知ってた……。



★★★★★



『――様』

「zzz……」

『――姉様』

「zzz……」

『お姉様!』


 んん~、こんな夜中に誰よぉ~。朝じゃないんだから邪魔しないで~。


『お姉様、ルミルミが夜這いに来ましたよ?』

「ヒィィィ!?」


 ガバッ!


「…………」キョロキョロ


 なぁんだ、夢か……。


『起きてくださいお姉様、敵襲です!』

「て、敵!?」

『恐らくはダンノーラの忍びでしょう。バッカスの街で捕えた連中と同じ黒装束です』


 ビックリしたわ。てっきりルミルミが襲ってきたのかと思ったじゃない。


『複数の黒装束が塀を乗り越えてこの邸に侵入しました。警備兵だけではとても手に負えそうにありません』

『連中の狙いは何?』

『誰かを探しているようですが、わざわざルミナステルを狙う意図が分かりません。その事を考えれば……』


 ()の抹殺ね。


『フン、上等じゃない。誰を相手にしているのか骨の(ずい)まで味あわせてやるわ!』

『お願いします。ドローンは学園での迎撃に回してますので』

『――って、学園も襲撃されてるの!?』


 さすがにノンビリはしてられない。すぐに蹴散らしてやる!


 バタン!


「アイリーーーッ!」

「あ、ルミルミ様」

「よかった、無事だったのね!」ヒシッ


 涙もろいのか、私に抱きつき涙を流し始めた。

 このまま放置するのは可哀想だし、賊は残らず仕留めてやろう。


「ルミルミ様、賊の掃討にかかりますので、しばしのご辛抱を」

「え? ええっ!?」


 強引に手を引いて窓から飛び出ると、そのまま屋上へと飛び上がる。

 すると私達の姿を捉えた黒装束が飛び道具を放ってきた。


 タッ、タタタッ!


 透かさず飛び退いた私の足元に、複数のクナイが突き刺さる。

 このくらいなら回避は余裕よ。


「大丈夫ですルミルミ様。私がいる限り、指一本触れさせませんから」

「わ、わたくしはいいのよ。それよりアイリ、無茶はダメよ?」


 自分よりも私を優先って……。まぁその好意は有りがたく受けとるわ。


「もちろん無茶はしません。この程度の雑魚連中に遅れはとりませんから」

「「「……!」」」


 軽く挑発してやると、そこかしこから殺気が漂う。フン、バカね。居場所を教えてるようじゃ忍者失格よ?


「食らいなさい――連続ファイヤーボール!」


 ボムッ! ドゴッ! ボフン!


「「「ぐわぁぁぁっ!」」」


 殺気に向けて追尾型の火球を放った。威力マシマシにしてあるから、まともに食らったらしばらくは立ち上がれないはずよ。


 ザシュ!


「く、くそぉ……」

「それで隙を突いたつもり? 忍者っていうのは――」


 死角から斬りかかった黒装束を袈裟斬(けさぎ)りにし、柱の陰からこちらの様子を(うかが)っていた最後の一人を――


 シュン!


「なっ!?」

「こうやって動くのよ!」


 ズバン!


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」


 座標転移(ハザードワープ)で背後に転移し、同じく斬り下ろした。

 さてと、ファイヤーボールを受けた連中は瀕死の重傷だし、他に生き残りは……


「中々やるなぁ。さすがは噂のダンジョンマスターってか?」

「その声は――」


 目を閉じ気配を探っていると、聞き覚えのある男の声。

 私はこの声の主を探してたのよ!


「ヨイチ!」


 別館の屋上にて腕組みをして(たたず)んでいた憎たらしい男。

 恐らくヴォルビクス侯爵も同じように襲撃したんでしょうね。


「俺を探してたんだろ? 早く捕まえてみな」


 シュタ!


「あ、コラァァァ!」


 ヨイチのやつ、私をからかうかのように逃げやがったわ!


「ルミルミ様、首謀者を捕まえて来ます。邸でお待ちください」

「だ、大丈夫なのアイリ? 無理をしてらっしゃらない?」

「私は大丈夫です。あんな奴にやられたりはしませんから!」

「……分かったわ。絶対に生きて帰ってくるのですよ?」

「もちろん!」


 あいつを捕まえれば堂々と出歩けるようになるし、気が張りつめる貴族生活にピリオドを打つ事ができるわ。

 ルミルミには少し気の毒だから、最後にハグくらいはさせてあげようかな。



「逃がさないわよヨイチ!」

「へへっ、さすがに簡単には引き離せねぇか」


 ルミルミに生還する事を約束した私は、屋根伝いに逃亡をはかるヨイチを即座に追跡する。

 速さに自信があったのか口振りには余裕が感じられるけど、その余裕面もこれまでよ!


「落ちなさい――ファイヤーボール!」

「おっと、危ねぇ!」


 チッ、やっぱり避けられたか……。

 でもその火球は他とは違うのよ!


「ぬぉっ!? 追尾型かよ!」

「その通り!」


 どこまで逃げれるか試してあげるわ。


「クソッ、こいつぁさすがに……」


 執拗にせまる火球を回避し続けた影響で、ヨイチの体力をゴリゴリと削っていく。

 さすがに逃走しながらだと思うようにいかないのか、先程の余裕面は鳴りを潜めてきた。


「こうなりゃ仕方ねぇ、食らいやがれ!」


 シャシャシャシャシャ!


 後がないと悟ったのか、私を牽制するように矢を連発して放ってきた。

 けれど不安定な体勢で無理に放ったためか、回避は容易いわ。


「そろそろ終わりね? 残念賞はアンタの背後よ」

「残念賞だと? いったい何を――」


 ボムッ!


「ぐはっ!」


 追尾していた火球が見事命中し、重力に従ってヒュルヒュルと落下を開始。街外れの茂みへと落ちていった。

 コイツを騎士団に差し出せば晴れて無罪放免ってところね。

 キツく拘束して二度と逃げられ――


『お、お姉様……申し訳……ありません……』

『アイカ!?』


 アイカの様子がおかしい!


『いったい何があったの!?』

『勾玉……です。八岐勾玉(やまたのまがたま)を……持った清姫が……』


 しまった! よく分かんないけれど、アレはアイカにも影響を及ぼすのよ!


「ヘヘッ、どうやら上手くいったみたいだな」


 重傷を負いながらも、地に()いつくばるヨイチが口を開いた。


「どういう事よ?」

「簡単だ。お前を学園から引き離すのが俺の役目だったんだからな。結果大成功ってわけさ。へへへ――」


 ゴスッ!


「フゴっ!?」


 コイツ、やってくれたわね。

 急いで学園に向かわなきゃ!


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