表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/110

修羅場?

3/4 一部訂正

主要人物であるクレアが抜けていたため加筆しました。

ストーリーは変わりません。

 模擬戦の当日がやってきた。

 何かとうるさいチョビ髭看守を麻酔弾(ドローンにお任せ)で眠らせ、昼休みの時間を利用して学園の中庭でエリオットと対峙する。

 周りには試合が始まるのを心待ちにしている生徒も多くいて、その中にはリュック達や何故かレックスも混ざっていた。

 先生に見つかると面倒なんだけど……ま、いいか。


「さ、準備はいい?」

「ちょ、ちょっと待って。まだ緊張が解けてなくて……」


 意中の子がギャラリーの中に居るらしく、チラチラと横目で気にしつつもへっぴり腰でガクガクと震えている。

 これ、試合よりも現状を見られる方がマイナスよね?


「ほらほら、みっともないところを見せられないんだからシャキっとする!」

「う、うん、分かったよ!」


 何とか様になるよう構えた。

 さて、モタモタしてると昼休みが終わっちゃうし、さっそく試合開始よ。


「先手は譲るわ。どこからでも掛かってらっしゃい」

「ありがとう。遠慮なくいくよ!」


 ザッ!


 ん? 何を思ったのか、横に移動し始めたわね? 同時に何かを(つぶや)いてるのは恐らく詠唱……


「特訓の成果を見せてやる――スプラッシュウォーターボール!」


 側面からの水弾か。回避できなくはないけど先手を譲った手前、ここは素直に受け止めなきゃね。


 バスバスバスバス!


「イタタタタタ!」


 特訓の成果が出てるのか、思ったよりも威力が高かった。う~、身体が冷たい!


「そ、そんな! あれだけの水弾を受けても平気だなんて……」

「伊達に武術大会で優勝してるわけじゃないのよ。じゃあ今度はこっちの番ね――ファイヤーボール!」


 ボゥ!


「よっと! へへ、上手く回避――って、うわわわわ!?」

「そうそう、私のファイヤーボールは誘導式だから、どこまでも追い続けるわよ?」

「ひぃぃぃ!」


 野球のボールサイズの火球が執拗にエリオットを追尾する。

 けれど速度は抑えてあるから避けるのは難しくない。問題はどうやって消すか――ね。


「ハァハァ……くそぉ、こうなったら!」


 ダッ!


 回避を続けてたエリオットが私に向かって突っ込んできた。もしかして自棄を起こした?


「真っ正面から掛かってきても無駄よ?」

「ああ、知ってるよ。だから――」


 シュタ!


 あれ? 私を飛び越えてった?


「こうするのさ!」

「こうするって……あ!」


 ボムッ!


「あっつぅぅぅ!」


 追尾していたファイヤーボールが私に直撃――する寸前に手でガードした。

 まさか上手く利用してくるとはね。ちょっと甘く見すぎてたわ。


「今だぁぁぁ!」


 ああ惜しい。無言で斬りかかれば不意を突けたのに、声を出したのは大失敗よ。


 ガキッ!


「防がれた!?」

「声でバレバレよ」

「くっ……まだまだぁぁぁ!」


 ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガキン!


 尚も何度か打ち合い、再び鍔迫(つばぜ)()いになった。

 特訓中の動きから見ても、剣の腕はそこそこなのよね。これなら意中の子も振り向くかもしれない――って、そこは私が気にするところじゃないか。

 じゃあそろそろ……


 キィィィン!


「しまった!?」

「勝負あり――ね」


 エリオットの木刀を弾いてチェックメイト。

 中々見栄えのある勝負になったかな?


「すげぇぞエリオット! あのアイリとここまでやり合うなんて!」

「うんうん、負けるのは仕方ないって」

「エリオット、前よりも強くなってね?」

「キャフフフ♪ さっすがはワチキのお姉様ですぅう!」


 ギャラリーの反応も上々。一人ウザいのがいるけれど、それはさておき。意中の子はどんな反応かな?


「はぁ、やっぱり敵わないかぁ……。でもいい勝負だったよ。協力してくれてありがとう!」

「いいって。それよりもほら、気になる子に話してきたら?」

「あ! そ、そうだね、うん!」


 慌ててギャラリーに駆け寄っていくエリオット。そして意中の子に――え?


「えええっ!?」


 お、思わず声に出しちゃった。何故ならその相手は……


「お、俺の戦いどうでしたか――」




「オリガさん!」

「あ、ワチキ、男はノーセンキューなんで」

「」


 言葉を失い、真っ白に燃え尽きたエリオット。

 これはホントの意味で相手が悪かった。まさか意中の子がオリガだったとは……。


「アイリさん、上手く脱獄したんだね? 無事に戻ってきてくれて何よりだよ!」

「違うから!」


 勘違いしてるリュックが再会の涙をながしつつ手を握る。

 だいたい脱獄してとか人聞きが悪い! こっそり脱け出しただけですぐ戻るから!


「ち、違うのかい?」

「そりゃそうだろ……。どうせアイリの事だから、こっそり脱け出してきたんだろ?」

「まぁね」


 さすがは頭の切れるリュース。よく分かってらっしゃる。


「そうか……。でもすぐに戻ってきて――」

「おい、ちょっといいか?」


 私とリュックを分かつようにレックスが割って入ってきた。やや怒ってるように見えるのは気のせいじゃないわね……。


「何だいキミは?」

「俺はレックス。アイリと()()()冒険者仲間だ。お前は?」

「……リュックだ。アイリさんとはクラスメイトで、()()()()()()しているよ」

「へぇ……」


 うっわ、この2人から凄い殺気が……。


 ツンツン


「ん? トリム?」

「ねぇねぇ、もしかしてこの彼、例の一目惚れしてきた少年とやらじゃない?」


 鋭い……トリムのこういうところは何て鋭いんだろう……。

 まさにその通りで、以前アイカが暴露した私に好意を寄せている少年がレックスなのよ。


「トリムの想像してる通りよ」

「やっぱり!」

「じゃあじゃあ、夕暮れの丘の上で良い雰囲気になっちゃったりとかも!?」


 トリムだけでも大変なのにクレアまで目を輝かせて……。


「クレアが想像してるようなのは無いわ」

「ええ~、勿体ない……」


 そういう問題じゃない!


「でも異性として好かれてるのは間違いないんでしょ。――リュック、その彼がアイリに一目惚れした少年よ~♪」

「「!」」


 トリムったら余計な燃料を投下して!


「奇遇だね。僕も彼女に魅了された一人だよ」

「そいつは確かに奇遇だな。互いに目的は同じってわけだ」


 お互い正面から睨み合い、一歩も引かないという意思表示をしているように感じる。

 うん、実際そうなんでしょうね。嬉しいやら気まずいやらで、私は落ち着かないけれど。


「ちょーっと待ったぁぁぁ!」

「「!?」」


 ああもぅ、面倒な奴が割り込んでいく!


「ワチキのお姉様への愛は海よりも深く、海底火山のように熱いんです。アイリお姉様への愛は誰にも負けません!」

「「…………」」


 あ、2人とも哀れんだ視線をオリガに向けている。


「それに同性のワチキなら同じ更衣室でお姉様のお身体を見放題。どうです、正直羨ましいでしょう? キャフ♪」

「「う……」」


 コラコラーーーッ! そこは敗北を感じるところじゃないでしょーーーっ!

 もうオリガの前では着替えない。絶対に!


「あ、やべぇ! そろそろ昼休み終わりじゃねぇか!」

「マズイわ、フローリア先生って怒らせたら怖いのよ!」

「急げ急げ!」


 一人が気付き、他のギャラリーも続いて引き当ていく。

 リュースはすでに戻ったようで姿は見えず、ボーッとしていたグラドをトリムが小突いて共に走り出し、クレアはグラドに手を引かれて行った。

 その場にはリュックとレックス、それに私がとり残されることに。


「レックス――だったね?」

「ああ」

「いずれキミとは決着をつけたいと思う。僕が卒業した暁には、是非とも勝負を受けてもらいたい」


 その台詞を待っていたかのように、レックスは不適に笑い……


「フッ――いいぜ? 但し、負けた方がアイリから手を引くって条件付きでな」

「もちろんさ」


 最後にリュックが手を差し出すと、レックスもそれに応じて握り返す。

 一時はどうなるかと思ったけど、何とか収まってくれてよかったわ。


 ――って、思ったのも束の間。

 うっかりレックスを連れて地下牢に戻っちゃったからさぁ大変。


「おい! アイリが投獄されてるってどういう事だ!? 責任者を出せ!」

「き、気持ちは分かるけど落ち着いて。騒いだらキミも投獄されちゃうよ……」

「上等だチキショウが! やれるもんならやってみろってんだ!」


 マズったわ。完全に激怒しちゃった。こうなったら中々止まらないのよねぇ……。そんなところはリュックとそっくりね。

 ――って、そんな考察よりリチャードさんに掴み掛かってるのを止めなくちゃ!


「お願いだから落ち着いて。私は大丈夫だから、そんなに――」

「アイリは悪くない! 悪いのはこの国の連中だ!」


 その後も怒りは収まらず、騒ぎに気付いて下りてきたチョビと一悶着あるのは別の話。

 いや、正直語るのも疲れるから省かせてもらう!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ