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誘われしダンジョンマスター・華麗なる学園生活  作者: 北のシロクマ
序章:私、ダンジョンマスターなの……
4/110

アイリ、本性を表す

「ねぇ、やっぱりアイリさんって普通じゃないよね?」


 ギクッ!


「……リュック、いきなり何を?」


 翌日になり、教室から外の風景を眺めていると、唐突なリュックの一言により嫌な汗が流れる。

 聞けば魔物のハリボテや魔力測定器に不具合があったことは過去にないらしく、やはり私が異常だと思われてるみたい。

 とりあえずここは……


「そ、そんな……リュックは私の事を指先一つでハリボテをダウンさせれるバケモノだって言いたいのね……」

「あああ、あの、そそそそそんなに泣かないで!」

「あ、リュックがアイリを泣かしやがった!」

「ちちちち違うってば!」


 咄嗟(とっさ)に泣き崩れて誤魔化してみた。

 涙は女の武器とも言うし。

 そして何故かグラドも騙されてる……。


「嘘泣きよリュック。簡単に騙されちゃダメじゃない」

「え……嘘泣きなの?」

「マジかよ! 女優かと思ったぜ」


 クッ、トリムのせいで作戦は失敗したわ。

 それからグラド、いくらなんでも騙され過ぎよ……。


「……コホン。――で、どうして普通じゃないって?」

「やっぱり昨日の結果は異常すぎるって、他のクラスでも話題に――」

「ストォォォォォォップ!」


 なんだか心臓がバクバクしてきた。

 予想してたとは言え、噂が広まるのが速すぎじゃない!? 


「Gクラスはともかく、どうして1日で他のクラスで話題になるわけ?」

「そりゃ……ねぇ?」


 リュックが同意を求めて視線を動かすと、グラドとトリムもウンウンと頷きだした。


「アイリは転入してから日が浅いから知らないんだろうけど、俺らGクラスはハッキリと言や落ちこぼれクラスなのさ」


 それはなんとなく理解してる。

 人によっては落第クラスとかぬかす奴もいるらしい。


「あたし達はゴブリン一匹まともに倒せない連中っていう評価の中、何食わぬ顔して倒してしまう生徒が現れたらどう思う?」

「……華麗にスルーされる――とか?」

「そんなわけないじゃない。実力を隠してるって思われるのが普通よ?」


 まぁ、うん。

 そうなるのは自然よね、うんうん。


「気を付けた方がいいよ? 上位クラスの連中から因縁つけられる可能性があるから」

「リュックの言う通りよ。中には金品を奪う奴とかもいるって聴くし、従わなければ集団で暴力を振るわれるんだから」


 うっわ、メンドくさ!

 まるで新人冒険者が先輩冒険者から受ける洗礼と同じね。

 もっとも冒険者の場合は殺し合いに発展する可能性があるから、こっちの方がまだマシなんだろうけど。


「お~い、みんな大変だぁ!」


 クラスメイトの男子が息を切らしながら駆け込んできた。

 名前は確か……


「ヴィランだっけ? そんなに慌ててどうしたの?」

「そ、それが、ルタと一緒に歩いてたらすれ違いざまにFクラスの奴と肩が触れたんだ。そしたら服が汚れたって言い出して土下座させられて……」


 さっそく面倒なことが……。

 私とは無関係だけど、放置するのも可哀想よね。


「もしかしてクラス全員で土下座しろとか言われた?」

「いや、ぶつかったせいで骨折したとかで、治療費を要求してきたんだ。僕は隙をみて逃げてきたけど、ルタは捕まったままで……」


 もうやってる事がチンピラそのものじゃない……。

 これは少し()()が必要かしら?


「頼むよみんな、僕1人じゃ勝てっこないし、向こうは5人もいるんだ」

「ふ~ん? 5人ね……」


 因縁をつけてきたのは一つ上のFクラス。

 日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らしてるって感じでしょうね。


「ヴィラン、そいつらのいるところに案内して」

「――っておい、まさか上位クラスに喧嘩売るつもりか!?」

「こういっちゃなんだけど、アイリさんが行ったら危険だよ?」

「そうよ、アンタ可愛いんだからイヤらしい事要求されるわ」


 親しくなった3人が心配してくれてる!

 これが学園生活の嬉しいところよ。

 欲を言えば、可愛いって台詞は異性から言ってほしかったけれど。

 さて、この感動は胸の内にしまっておいて、今はやるべき事をやりましょ。


「私なら大丈夫。リュックに言わせれば普通じゃないんだし、今から()()()()()()ところを見せてやろうじゃないの」



★★★★★



 アイリが動き出す少し前。

 めったに人が寄り付かない学生寮の裏手に、ルタは連れて来られていた。


「お願いだ、それは自分の母さんの形見なんだ、だから返してくれ!」

「は? 知らねぇよそんな事。治療費を払えないんなら代わりが必要だろうがよ、なぁ?」

「そうそう。お前のせいでリュースが怪我したんだから責任はとらないとな」

「コイツを売れば治療費の足しには成るだろ」


 ルタを連行した5人組の中心人物である少年――リュースが、銀色のペンダントを片手に仲間の少年達に顔を向ける。

 するとリュースに同調してニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるが、勿論肩が触れた程度でリュースが怪我をするはじもなく、やっていることは悪質なカツアゲだ。


「そんな! どこも怪我なんてしてないじゃないか!」

「おいおい、言いがかりは止せよな。リュースはこんなに痛がってるぜ?」

「おお痛ぇ! マジで痛ぇ! 誰かさんのせいで全治一ヶ月だなこりゃ」

「ほら見ろ、ちゃんと怪我してんじゃねぇか。コレが原因で死んだらどうすんだ?」

「クッ……」


 どうあっても形見を返すつもりはないらしい。

 それどころか……


「コレっぽっちじゃ足りねぇ。分かったら残りの金を持ってこいよ」

「ふ、ふざけるな! 自分がいったい何をしたっていうんだ!?」

「何をって、俺を怪我させたろうが。口で言って分かんねぇんなら力で訴えるしかねぇよなぁ?」


 バキッ!


「ぐぁっ!」


 リュースによって殴り飛ばされるルタ。

 しかし、すぐに他の少年達により無理矢理立たされると……


「おらおら、テメェら底辺が誰に喧嘩売ったか教えてやんよ!」


 ドスッ!


「ぐふっ!」

「ハハッ! ゴブリン一匹倒せない雑魚なんか怖くねぇ。ほら、お前らも楽しめよ」

「おぅ!」


 その後も殴る蹴るの暴行が続けられ、顔面をアザだらけにしたルタが地に這いつくばる。


「た、頼む……そ、その形見だけは――」

「ま~だ言ってるよコイツ。そんなに返してほしいなら実力を示しな。この学園が実力主義なのは知ってんだろ?」


 当然ルタも知っている。

 しかし腕っ節では上位クラスのリュースに敵うはずもなく、しかも相手は5人組だ。

 ルタ1人では逆立ちしても勝てないだろう。



「だったら私が相手してやるわ」

「ん? なんだお前は?」

「ルタのクラスメイトのアイリよ」

「って事は、お前もGクラスか。――あ、もしかしてコイツの恋人とかか?」

「ちょっ!」


 コイツ、何勝手な事を!

 ルタもほんのりと顔を赤らめてるんじゃないわよ!


「そんなにコイツが大事ならよ、今ここでストリップショーをやってみろよ」

「はっ?」


 この野郎、格下だと思って調子に乗ってるわね!?


「お、いいねいいね!」

「さんせ~い!」

「ほらほら、早く脱げよ!」

「…………」


 他の取り巻きも同調して――って、ルタまで期待した目で見てんじゃないわよ!

 今度何かあっても助けないわよ!?


「そこまで言うからにはアンタら……覚悟はできてんでしょうね……」

「は? 覚悟――って、いいいいいつの間に背後に!?」

「アンタがよそ見してるからよ」


 ――というのは嘘で、やったのは素早く回り込んだだけだったりね。

 コイツら相手なら本気を出すまでもなく後ろを取れるのよ。

 何せ私はSランクの魔物に匹敵するくらい強いし。


 ギギギギ……


「ギャーーーーーーッ! うううう、腕がぁぁぁぁぁぁ!」

「何よアンタ、全然骨折なんかしてないじゃない」

「た、頼む離してくれ! 本当に腕が!」

「せっかくだから、本物の骨折を味わわせてあげるわ」


 ゴギッ!


「んんんぎゃぁぁぁぁぁぁ!」


 片腕をへし折ってやったわ。もちろん物理的にね。

 何か言われてもエリクサー使ってやれば問題ないし。

 あ、これでもダンジョン運営は順調で、エリクサーをタダでくれてやるくらいの余裕はあるのよ?


「おいお前ら、見てないで助けろ!」

「あ、ああ」

「女だからって手加減しねぇぞ!」


 フッ、そうこなくっちゃね!


「このぉ――」

「正面からとは舐められたものね」


 ガッ!


「うわっ!?」

「おおおい――へぶっ!?」


 正面から来た奴の足を引っかけて転倒させると、その後ろから来た奴も足を取られて転倒に巻き込ませた。

 後先考えない動きをしてるからよ。


「調子に乗るなよ!」


 ガシッ!


「――え?」

「そんな動きで私を捉えられるとでも?」


 ダン!


「ゴフッ!」

 

 横から殴りかかってきた奴の腕を掴んで、そのまま背負い投げ。

 キレイに仰向けに倒したし、柔道なら一本勝ちね。


「もらったぁぁぁ!」

「ったく、背後に回り込むくらいなら声に出すんじゃないわよ!」


 ゴスッ!


「ガフッ」


 最後は肘鉄で決めてやったわ。


「さて……」

「「「ヒィ!?」」」


 ズザザザザッ!


「あら?」


 4人は腰を抜かしたまま這うように逃げてったわ。

 あんな動きはGクラスのみんなには出来ないでしょうね。

 あ、そうそう、ルタを助けなきゃね。


「大丈夫?」

「う、うん、なんとか無事だよ。それより母さんの形見を返してもらわないと」

「形見?」

「リュースが持ってるペンダントだよ」


 コイツ……他人の形見を奪うとか、見下げ果てた奴ね。


「さっさと返しなさい!」

「わわわ分かった!」


 リュースはペンダントを放り投げると、腕を(かば)いながら逃げてった。

 一応は無事解決ね。


「アイリさん、ありがとう! キミって強いんだね? Gクラスにいるのが不思議でならないよ」

「……まぁそう思うわよね」


 半分諦めてたけれど、正体がバレるのも時間の問題ね。


「おーい、アイリさーーん!」

「Gクラスのみんなを集めたわよーーっ!」

「みんなでかかれば怖くないぜ!」


 あらら、もう終わったのに余計な心配をかけちゃったわ。

 よく見たら30人くらい居るし、もしかしなくてもクラス全員いそうね。

 いや、そんなことより正体を秘匿するのも限界だし、そろそろ明かしてもいいかもしれない。


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